【久々日生】ひとりで行く「INTO THE WOODS」【2022観劇初め】 | Perfect Combustion - The Adventure Never Ends! -

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大人になってもバカでありたいのですが、うまくいかず単に「痛い人」になってしまうのです。どうやったら素敵なバカ「Fantasic Silly」になれるのでしょうか。そんなことを毎日考え続けるブログです。

 

 
 
新型コロナウイルス感染症の流行により、興行界隈でも再び中止や休演の波が襲っています。
 
そのようなご時世でありながらも、公演関係者のご尽力のおかげでINTO THE WOODSは結局日生劇場から梅田芸術劇場まですべての公演が上演されました。
 
運良く東京前楽が取れたので「森」に迷い込んできました。
 
個人的に、日生劇場は2017年くらいの「屋根の上のバイオリン弾き」以来なのでだいぶ久々で、今回は初の最上階後列となりました。
オミクロン株の猛威もあり完売とはならなかった模様で両隣2席ずつ空席でした。
 
あらすじはどこかで拾えるかと思いますが、ざっくりいうと、
 
とあるパン屋さん夫妻は子宝に恵まれず悩んでいたが、実は一家が呪われていたことが原因だった。
なんとか呪いを解くために、呪いをかけた張本人の魔女に指示されたモノを集めるべく「森」へ足を踏み入れると、そこには様々な童話の世界が広がっていたーーー
 
という、クロスオーバー作品とでもいいましょうか。
誰もが知る物語のIFが描かれています。
 
今回の感想をまとめると、
・セットの妙
・良いところも悪いところもあったキャスティング
・なんでこんなに曲が難しいのか事件
 
まず、セットから。
 
 
大道具はいくつかありましたが、中心は「枠」。
 
ジャングルジムのようにいくつかの枠が重なり、そこをメインキャストやパフォーマーが通り過ぎていきます。
 
一見するとかなりシンプルなセットですが、クロスオーバー作品であるが故、我々が見るまでに知るこの物語の表紙絵の「額縁」であり(公演ポスターも額縁)、お客さんが様々な世界観を覗ける「窓」でもあり、キャストがその世界に足を踏み入れるための「入口」でもあり、何もかもを終わらせるための「出口」でもありました。
 
ひと目見てそれと分かる、それぞれの物語の象徴的な場面にまつわる大道具と組み合わせて、複数の物語を並べるにはやや手狭な板の上を効果的に見せていたと思います。
 
 
次にキャスティング。
 
 
SNSで出回ったレビューを見た限りでは「賛否両論」といった感じでした。
これがストレートプレイだったらきっと語り継がれるレベルのキャスティングになっていたと思います。
舞台や映像で濃いキャリアを積んできた方々ばかりが集まり、意外な組み合わせも相まってかなりワクワクする配役だったはずです。
実際、歌ではないシーンは見応えあっていい感じでした。
 
ただ、ミュージカルとして観た場合、このキャスティングでやるならばもう一回り小さい箱でやったほうがいいかなと言う印象です。
これは後述のナンバー難しすぎ事件とも重なるのですが、ミュージカル畑をそれなりに歩いてきた方でも歌いこなすのは難しいと思うので、音合わせに寄りすぎて大きい箱だと鳴りきらなくて歌が昇華できないのではと感じました。
もちろん、さすが上手いなと思わせるだけの説得力のある歌を歌われる方もいたので全部が全部というわけではないのですが、トータルで観ると難しさのほうが残ったという感じです。
 
ミュージカル界隈はWキャストとかにして複数回来てもらうリピーター向けのプログラムを先に組みますが、今回はシングルキャストなのでこういう感じのレビューが増えていくとチケットの積み増しが減る可能性があります。
興行面でいえば、ミュージカル界隈の完売率と満員御礼と損益分岐点はかなりセーフティに設定しているとも聞いたことがあるので製作チームもそこまで気にならなかったかもしれません。
日生劇場だと席種が2種類発生しますが、帝劇公演含め大抵の場合差額が4000円程度あるのでランクの低い席が積極的に埋まります。
観劇日は休日でA席を取ったのですが、両隣2席ずつ空いていてすぐ後ろも空席という不本意だけどパーフェクトソーシャルディスタンシングでした。
それならばご近所のシアタークリエで全席12000円くらいの感じにするか、プレイハウスで10000円くらいの感じにするかだと思います。

 
今回の公演は稽古期間だけでこれらのナンバーを日生劇場仕様で仕上げられることを目的としたキャスティングではなかったと思いますで、(歌はとにかく)それ以外にAPを振った結果であったと思うことにします。
 
 
最後に、ナンバーの鬼難易度問題について。


本作の音楽担当であるStephen Sondheim氏の曲、どの作品でもすんなり歌えない説は有名ですが、
この作品に関しては、脚本のJames Lapineとのタッグを組んでからの2作目で、Lapine氏と組む前直近の作品が興行的に不本意な結果に終わり失意の底にいたであろうSondheim氏が再起をかけて制作に当たっていた、とWikipediaに書いてありました。
とにかく、置きに行くような安牌は作ることができず何かやらないと業界的に死んでしまう可能性があったのだと思われます。

その結果が(本編でもたくさんのキャラが森の中で迷ってましたが)調性さんが指名手配される、跳躍が多くて着地点が藻の生えた岩場、あれ、変拍子もかましてましたっけか、というくらいに一筋縄ではいかないナンバーだらけ。
これをコロナ禍でも興行として成功に導くために製作さんはキャスティングに悩まれたのではないかと思います。


総括として、イケてない部分とイケてる部分がめちゃくちゃはっきり出すぎて評価が難しい、と書かせていただきます。
(本作も再演でしたが)しばらく再演はなさそうですかね〜


追伸

書き上げるのに2ヶ月かかった!