言語の複雑性
今回,言語感の差異が話題になった時,二つの面白い意見を思い出した.一つは言語の複雑性という考えであり,もう一つは言語による本の厚さの違いという考えである.
私の同僚であった,また先生でもある Alexander は,自然言語の持つ複雑性はどの言語でもあまり差がないのではという仮説を持っていた.彼の言う言語の複雑性とは,ある言語の持つ全体的な複雑性である.文法的な複雑性や,語彙,表記など全体を考えれば,ある言語はある部分が複雑であり,一方で簡単な部分もある.したがって全体として人間の話す自然言語は言語によらず同程度の難しさがあるのではないかという仮説である.
私の学んだ言語に関して言えば,印象として Alexander に賛成できる.それぞれの言語には難しい部分と簡単な部分があり,自然言語全体として一定しているのではないかという印象を私は持っている.これは人間の脳の処理能力に依存すると思う.そしてどの言語を話す親を持つ子供でも他の言語の習得が可能であることから,言語自身の複雑さは極端には言語によらないのではと私は予想する.