キルゴア・トラウトの小説: 理性的なクソ | Chandler@Berlin

Chandler@Berlin

ベルリン在住

確か,キルゴア・トラウトの小説に「理性的なクソ」というものがある.

Se-Cluger 星人達は時間旅行こそできないが,理性的な人達で,よく考えてから行動する.また完璧主義である.

彼ら個々人としてはより快適な住まいや,自分の幸福とは何かなどについて考えることが多かった.全ては話合いで解決され,それも論理的なものであったために解答はほとんどの者に明かであった.どうしても解決されない場合には,他の星に移住するということもできた.解決のために殺し合いをするというのは論理的ではないということは皆に一致した意見であったからだ.彼らは種族として完全な理性を追い求め,自己改造をする技術まで身につけた.

ある時,ついに彼らは完全な理性を得るに至った.その星のエネルギは無駄に利用されることもなく,さまざまな病気も解決された.未来は計画され,子孫達に負担を残すようなことも避けられるようになった.しかし,生命である以上,その種族はやがて滅びることが明らかになった.それははるか未来のことと予想されたが,どうせ滅びるのであれば,種族として生きることは無駄であるとの論理的な結論に達し,種族は自殺した.

Tralfamadore 星の動物園にはこの種族が保存されていたが,母星の種族が滅んだことを知ってやはり自殺してしまった.Tralfamadore 星の人達は時間旅行できるのでこれを知っていたが彼らはいつもどおり何もしなかった.もちろん,彼らが Se-Cluger 星人に会いたければ,過去に戻ればいいだけの話であるのだが.

賢いということや理性的ということなんぞ知ったことか.