(1) 最大 determinant 問題 | Chandler@Berlin

Chandler@Berlin

ベルリン在住

概要


特定の要素のみを使った matrix の determinat の最大値を求める問題が,Gilbert Strang の Introduction to Linear Algebra という本で紹介されている.これは計算機の問題として面白かったので紹介したい.


はじめに

「一日生きることが一歩生きることであれ.」という湯川秀樹の言葉が私の小学校にはあった.私の場合,この言葉のように少しでも毎日継続できることのみがものになってきたような気がする.たとえ5分でも毎日やるのは結構違う.最近,さる活動に参加しているために,日曜研究に使っている時間が減っているが,その活動も日曜研究も両方ともなんとか続けていきたい.

先日,最大 determinant 問題という問題を知ったが,これを解くまとまった時間がなかった.しかし,電車での通勤時間とエレベータの待ち時間などを使って今回の問題を解くことができた.(私の会社のエレベータは待ち時間が長く,私は通常本を読むことにしている.)細切れの時間を有効に使うことができるかどうかが継続することのポイントなのかもしれない.

最大 determinant 問題がなぜ数学者の興味を引いたのか,私はこの問題に取り組むまで知らなかった.確か Gilbert Strang の授業では,「determinant はかつて理論的に重要であった」,と過去形で述べられていた.しかし,なぜ一時期重要であり,現在はそうでもないのかという話まではなかったように記憶している.線形作用素として行列を考えた時,determinant が重要なのはそれが 0 であるかないかということである.なぜなら determinant が 0 かどうかは,そのシステムに解があるかどうかと関わっているからである.最大値はこれに比較したらさほど重要ではないように感じる.

determinant は行列を作用素として考えた際の性質としては拡大率である.この最大値がどうして重要なのだろうか.たとえば,最大値が 1 より小さいというのは何らかの収束性に関係して面白いかもしれないが,それはmatrixの積の場合に興味があることである.つまり M^k v のような場合であるが,しかしこの場合には固有値の方がずっと興味深い.なぜなら固有値がわかれば,M^k v=λ^k vの形になるからである.


幾何学的には最大 determinant は制限された座標値の中でどれだけの最大体積が得られるかになる.(これは Marc にも指摘された.) この意味は今後示されるアルゴリズムの中で一度利用してみることになる.とはいえ,この最大値にどんな興味があるのかはまだわかっていなかった.

次回はなぜ最大 determinant 問題が興味を持たれたかについてちょっと調べてみたので,それに関する私の考えを述べよう.