なぜ A^{T}A は逆行列を持つのか(4) Linear Algebra | Chandler@Berlin

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ベルリン在住

補足: null space と column space

今回は null space を使った証明があったので,一応 null space に関しても述べておく.null space をご存知の方は飛ばしてもかまいません.

A の null space とは0 でないベクトルx のうち, Ax = 0 となるx の集合である.
$Chandler@Berlin-eq10
null space を持つ square matrix の例として次の Aを考える.
Chandler@Berlin-eq11
これは x \neq 0 の時,
Chandler@Berlin-eq12
が解の一つである.したがって,この xA の null space である.スカラ倍した ax, a\neq 0 も解であり,null spaceである.この例を見ると,square な matrix の場合には matrix が singular なことがわかる.sigular でないとnull space には 0 しかない,なぜなら,singular でなければ逆行列が存在し,
Chandler@Berlin-eq13
となり x = 0 が確定する.この場合には null space がないとも言う.

null space を持つ Rectangular matrix の場合として,次の例を考える.
Chandler@Berlin-eq14
この解は先の例と同じであり,
Chandler@Berlin-eq12
である.

ところで,以上は定義の話である.ここで終わりにしても良いのだが,もう少しnull space の意味に関して説明してみたい.逆行列に関しての話をしたいので,ここでは square matrix について述べる.なぜなら,rectangule matrix では,連立方程式として考えると式の数が変数に対して多すぎるか少なすぎるかのどちらかであるので,逆行列がないからである.

null space は行列が singular かどうか,つまりカラムが独立しているかどうかに関連している.なぜなら,A を column vector で書いて,xと乗算すると,
Chandler@Berlin-eq15
となる.つまり,Axとは,係数 x_i とした column vector a_iの linear combination である.これが 0 になるかどうかが,null space の意味の一つである.

また, column に注目すると Ax = bbは column のlinear combination でしかありえない.column の linear combination が作る空間を column space という.n 次元空間に n の独立した (column) vector があればどんな n 次元上の点も表現できる,つまり解があるので,この場合には逆行列がある.逆行列がある場合,column の linear combination が 0になることは, x= 0 のみしかない.これは null space がない(= 0 のみがある)ことを示している.

これが null space, column space と逆行列の存在についての関係である.いかがだろうか.



Acknowledgements

この説明を聞いて下さった Marc D. に感謝します.