では,前回設計したフィルタに実際に信号を入れてみよう.コンスタントな入力の場合を表 1 に示す.コンスタントな入力はつまらない例だが,まずは簡単なもので小手試しといこう.
Table 1 Constant input

表1 の赤の部分をどうやって計算したのか一応示しておこう.y_n で n=1の時なので,

これは最初の3つの信号をフィルタに通した場合である.入力が全部 1 なので,出力も全て同じになっている.さて,ここで transfer function を計算してみると,

まさか Jojo貴様! と驚く.(古すぎたか? それに英語版を書く時には Jojo の奇妙な冒険を知っている人がいるのかどうか.) Transfer function は入力と出力の比に等しくなった!
ところでちょっとしたことだが表でy_nが n=0,8 でも値があるのは cos の値が計算できるからで,実際に信号を測定する場合には,n=-1の値がないだろうから (n=0から測定を始めるとすると,その前のデータがないので),y_0 は存在しないとしても良い.
コンスタントの入力では出力もコンスタントなのでちょっと退屈という人には次
の表2と3を示そう.
Table 2 cos π/3 input

Table 3 cos 2π/3 input

表2の赤の部分も先の場合と同様に計算すると,

この transfer function は

transfer function は入力がどれだけ transfer されるかであったが,1 というのはそのまま出力されるという意味である.表2を見ると,確かに入力と出力が一致している! この周波数はそのまま出力されるというわけだ.すばらしい.
表3の場合は,

この transfer function は

もう説明する必要はあまりないだろう.この周波数は設計どおりこのフィルタを通過しない.
まとめ
ここで使っているそれぞれの数学はそんなに複雑ではなく, Euler の式を受け入れることができれば,あとは高校生の数学である. Euler の式も e^x,sin(x), cos(x) 関数を無限級数展開して,比較することで関係があることは感じることができるのではないだろうか.
eigenvalue である transfer function とサンプリングした結果を linear combination するフィルタの結果が理想的な状況とはいえこれだけ一致するのは心地いい.