行列式(determinant) についていくつか語りたいこと | Chandler@Berlin

Chandler@Berlin

ベルリン在住

Abstract

行列式(Determinant)は行列について様々な情報を持つ一つの数である.行列には多数の数が含まれているので,一目見ただけでは,それがどのような性質を持つ行列かわからないが,行列式がわかれば,どんな性質を持っている行列なのかがある程度わかる.たとえば,行列式は逆行列があるかなど,を一つの数で示すことができる.そのために行列式は線形代数で有用な概念であり,それがどんなものかを考える意味がある.


行列式(Determinant)の概要


行列式(Determinant)は行列について様々な情報を持つ一つの数,スカラ量,である.行列には多数の数が含まれているので,一目見ただけでは,それがどのような性質を持つ行列かは通常わからないが,行列式がわかれば,どんな性質を持っている行列なのかがある程度わかる.

たとえば日常生活で,ある人を紹介したい時,その人の特徴を全て挙げて説明すればその人に対して詳細な情報がわかるかもしれない: この人は何時に起床する,この人はどの電車で会社に行く,など.しかし,特に関心のある情報をかいつまんで説明する方がわかりやすいであろう.たとえば,職業は何であるとか,性格が優しいとか,お金持ちであるとか,である.これらの特徴は,その人全てを示すことはできないが,その人に関して知ろうと思った時に助けになることが多い.また,その特徴は単純かつ重要な特徴を示すものであればより有用である.

行列式は,人に対する特徴同様,重要な特徴を示すことができる.これが,一つの数字(スカラ値)であるという単純さもすばらしい.

一方で,行列式というスカラ値一つで行列を語るのはある意味無味乾燥ではある.それぞれの行列にも特徴があり,人には行列に関する好みもある.伍子胥,坂本竜馬,前田慶次郎,シーザーなどの人物を歴史小説でじっくり読むか,歴史の教科書で簡潔に知るか,という違いのようなものである.歴史小説は私の心を熱くするが,全ての人物を読むわけにはいかない.

「人物 A はどんな人だったんだ?」という問いに対して,「彼は最後は王様になったんだ.」のような簡潔で重要と思われる情報があるとその人物の概要を知るつかみとなるだろう.そういう概要を知るに重要な情報を matrix A について知りたければ,行列式(determinant)は良い指標である.

行列は多才であって,様々なことができる.次回はちょっと小難しい言葉(線形性)を使って行列について説明しよう.

(これは行列式に関する続きものです.)