下まぶたは、加齢によるまぶたの皮膚・および皮下組織の「弛み」の程度により様々な変化の様相を呈します。
眼球は、眼窩(頭蓋骨で眼球が収納されているくぼみ)内でLockwood靭帯(suspensory ligament)というハンモックに収まっている構造になっています。
このハンモック構造が、加齢により支えが弱まり下に下がってくることで眼球が全体的に下垂してきます。眼球が下垂することにより眼球を包むように存在する眼窩脂肪が押し潰されるように眼窩内からはみ出してきます。これが「下まぶたのふくらみ(目袋):eyelid bag」が目立ってくるメカニズムです。
しかし「下まぶたのふくらみ(目袋):eyelid bag」が目立つようになってくる要因は、単に眼窩脂肪が眼窩からはみ出してくる量だけに依存するものではありません。下瞼をふくむ「midcheek」と呼ばれるエリアは靭帯の存在による「不動部分」と表情形成、咀嚼運動などで必要となる「可動部分」の存在により、加齢による周辺組織の変化は複雑多岐に渡ります。 (前回ブログの「mid cheek」の加齢による変化とその原因を参照してください) 逸脱脂肪の量が少なくても、「Lid-cheek segment」と「Malar segment」の境界となる「Palpebromalar groove」や「Lid-cheek segment」と「Nasolabial segment」との境界である「Nasojugal groove」が視覚的に明らかになってくると、下瞼のふくらみは目立ちはじめます。さらに、「Lid-cheek segment」における皮膚のたるみ、弛み(loss of skin elasticity)の程度、「Malar segment」における「Malar mound」の視覚化なども大きく影響してきます。また東洋人は下睫毛の際のふくらみである「涙堂」(Orbicularis prominence)が発達していることが多く、笑った際に下まぶたのふくらみとの境界を中心に二段の膨らみが生じてしまうことも、「下まぶたのふくらみ(目袋):eyelid bag」の存在を強調させる要因となります。つまり、「 下まぶたのふくらみ」に対する治療法は外科的には眼窩より逸脱した眼窩脂肪を切除するだけでは改善しません。「eyelid bag」周辺で視覚的に明らかになってきた「 Palpebromalar groove」や「Nasojugal groove」の溝を埋めるなどの治療も必要になってくることもあるのです。この「溝を埋め」てこのエリアを全体的になめらかにする(blending)には、眼窩脂肪を利用(orbital fat repositioning)したり、bFGF(線維芽細胞成長因子)が利用可能です。
以上のように、「下まぶたのふくらみ(目袋):eyelid bag」の原因論は非常に複雑です。保湿・リンパマッサージ・低周波治療による表情筋運動などの民間療法では、短時間改善したとしてもその持続性(sustainability)は全く期待できません。ご理解いただけたでしょうか。