企業が労働者に求める「身元保証人」制度とは
あなたは例えば一般企業に就職する際、あるいは近くのお店などでパートとして働く際に企業から「保証人」を求められたことはありませんか?
実は日本では多くの企業で働く人に対して「保証人」を求めることが一般的です。
「保証人」は一人だけ用意すればよい企業もありますが、複数人の保証人を求められる企業も多くあります。
「保証人」は家族がなることが一般的ですが、血縁関係のない友人や知り合いなどでも保証人になることができます。
企業が「保証人」を求めるのは実際に働いている人が問題を起こしたときその賠償請求を保証人にも請求できるからです。
例えば 働いている人が交通事故を起こして会社の車が傷ついてしまったりだとか
例えば 会社のお金を盗んだりだとか
例えば 会社のものを壊してしまったりだとか
企業が働いている労働者にそういった賠償金を請求した事例は実際にも起こっており、働いている人が払えなかった場合は「保証人」に請求した例も数多くあります。
とはいえ、自分はその会社で働いているわけではないし、お金をもらっているわけでもないのにお金だけ請求されるなんて普通の人はやりたくないですよね?そうした理由から最近は保証人になりたくないという人も増えています。
なぜ日本だけ働く上で「保証人」が求められるのか?
このような企業が働く人に対して「保証人」を求める制度は世界的に見ても極めて珍しく、海外では基本ありません。
その代わり「その人が信頼できるか、過去に問題を起こしていないかチェックする仕組み」はあります。
リファレンス・チェック(推薦状・照会)
前職の上司や同僚から「この人はこういう働き方をして、信頼できる人物である」というお墨付きをもらうことです。
バックグラウンド・チェック(背景調査)
専門の調査会社を使って学歴や職歴の詐称がないか、犯罪歴や破産歴がないか調べます。
専門職賠償責任保険(プロフェッショナル・ライアビリティ)
ミスは起きるものだから保険で賄う仕組みです。
フィデューシャリー(信託)やボンド(身元保証保険)
現金や貴金属を扱う職種では「フェデリティ・ボンド」という保険の仕組みが使われます。
従業員が盗難・横領をした場合損害を保険でカバーできます。
保証会社もあるにはあるが…
保証人が用意できない場合はどうするべきでしょう?一応日本にも身元保証人を代行してくれる「保証会社」があるにはあります。
しかし、一般的に料金が数万円はかかることが多く、複数人分頼むと高額になってしまうため諦めてしまう方も多くいます。
お金がないからこそ働いてお金を稼ごうとしているのに、働く前から数万円保証会社に払わないといけないというのは本末転倒でもあります。
保証人にはなりたくない
2020年の改正で「上限額」を求めるルールはできたもののそれでも「他人の失敗を自分の貯金で埋める」という構造は変わりません。
自分のミスなら諦めもつくかもしれません。ですが他人の不祥事で自分の資産が減るというのは理不尽に感じる人がほとんどですし、怖いと感じるでしょう。
それまで真面目に生きてきて少しだけど貯金もできてたのに保証人になってしまったばかりに他人のミスで自分のお金が数十万円、あるいは数百万円とられるのはショックですし、嫌だと感じる人が多いのではないのでしょうか?
そういった理由から現在は保証人にはなりたくない、拒否するといった人も増えてきています。
企業の「管理責任」外部投げっぱなし
本来、従業員のリスク管理は企業が自社のガバナンスで行うべきものです。
何か問題があれば保証人に請求すればいい、という甘えが企業側に生まれると、社内のコンプライアンス教育や不正を防ぐシステム作りが疎かになる恐れがあります。
保証人を用意できない人々もいる
現代、既に日本は世界でも類を見ない高齢化社会です。
身寄りがいない人
保証人になってくれる知り合いがいない人
などは増えてきています。おそらく今後も増える一方でしょう。
仮に面接を受けて合格したとしても、スキルがあってその会社で働きたいと思っている人であっても「保証人」がいないからという理由で採用見送りになったり、働くことを諦めざるを得ないのが今の日本の現状です。
ニュースや新聞などでも人手不足だといわれていますが、
正直国がこの企業が求める「保証人制度」これを廃止する法改正をするだけで、日本の人手不足はかなり改善するのではないかと私は思っています。
この「保証人制度」さえなくなれば企業も人手不足が多少は改善され、今まで保証人がいないから…と就労を諦めていた人もたくさん働けるようになります。
保証人がいることの企業のデメリット
保証人がいることで企業のデメリットもあります。
採用競争力の低下(機会損失)
優秀な人材が「保証人を用意できない」という理由だけで、他社に流れてしまうリスクです。
保証人が必要だと知ると入社辞退をしてしまう人もいます。
管理コスト
保証人書類の回収・管理には、見えないコストがかかっています。
印鑑証明の有効期限の確認、実印の照合、保証人の支払い能力の判断など、人事担当者の工数が割かれます。
身元保証人制度では、期間を定めない場合は、原則3年(最長5年)で保証が切れます。更新手続きを忘れると管理した意味がなくなります。
また実際に損害が出て保証人に請求しても裁判になると保証人に全額回収できることは非常に稀で、入社時に保証人として認められたケースでも数年後に病気で支払い能力を失ってしまうこともありえます。
人手不足の原因は「保証人」
日本の人手不足倒産は年々深刻になっていますが、原因を追求するとなるとまず第一にあげられるのはこの「保証人制度」が原因ではないかと思っています。
高齢化が深刻になる中、働けるという人はどんどん採用すべきなのに、仮に採用してもこの「保証人制度」という壁があるせいで働きたくても働けない人が増えてしまっています。
どうすればいいか?
一番いいのはフランスなど諸外国のように、個人の身元保証を求める慣習を法律で制限することです。
そしてマイナンバーカードを活用し、「この人は誰であるか」という身元保証は国が担保し、企業が「家族」や「個人」にその役割を押し付けないようにすることが大切です。