利用者や患者は大便入り風呂で入浴される現実

 

以前私はとある場所で働いていたことがありました。そこにはたくさんの寝たきりの方や自力でお風呂に入れない要介護の患者さんが何人も過ごしていました。

 

そんな方々が使うのが、寝たまま入れる大きな「機械風呂(循環式の浴槽)」です。

 

要介護のお世話をしていた人ならわかると思いますが、こうした要介護の人々は非常に多く便失禁します。1日1回や2回で終わるわけではなく1日何十回など便失禁することもあります。また中には便が体にたまらないように便を緩くするお薬を処方されていることもあり、そうした方々は垂れ流しの状態になってしまい、頻繁に職員が体をきれいにしてあげてもまたすぐ便まみれになっていたりします。

 

そんな方々が何十人といる中で限られた時間の中で機械風呂を使用して入浴させるとどうなるでしょうか?

 

当然機械風呂は色々な利用者、患者さんの便で汚れていってしまいます。

 

普通なら一人の利用者の便でお風呂が汚れてしまったら一旦お湯を抜いて消毒して、さらにお湯を張って次の利用者を入浴させるのがいいのですが、実際時間が限られているためそんなことはできません。

 

 

  マニュアルではどうなっているのか?

 

実は法律(厚生労働省の衛生管理マニュアル)では、浴室内で便が汚染された場合は「直ちに入浴を中止し、お湯を全量抜いて、浴槽を洗浄。消毒すること」が義務付けられています。ルールを破れば行政処分の対象になります。

 

実際このルールをしっかり守っていくとどうなるでしょう?

 

古いタイプの循環式機械風呂は、一度お湯を抜いて洗い、また溜めるまで30分以上の時間がかかります。しかし実際現場は時間が限られており、このルールを守っていくと時間内に大勢の要介護者の入浴を終わらすことは不可能に近いです。

 

職員も時間内に終わらせなければいけないというプレッシャーがあるので時間が非常にかかる浴槽の洗浄・消毒などは行わず結果的に便や血などで汚染された浴槽を使い回してなんとか時間内に利用者の入浴を終わらせています。

 

 

  行政の監督はどうなっているのか?

 

法律違反がこれだけ常態化しているのでしょう?なぜこのような施設や病院は営業停止にならないのでしょう。

 

それは行政の監督(実施指導)が来る日だけしっかりとすれば隠蔽が可能だからです。

 

行政の監査は基本的に「数年に一度」しか来ません。事前にこの日に行きますという通知もあるため、その日だけはお風呂をピカピカにしてしまえば数年に一度のしかも事前に日程がわかっている監査はごまかせます。

 

 

  最新の設備を使えばなんとかなるかもしれないが…

 

もちろん全ての施設や病院がこういうわけではありません。

最新の設備(ボタン1つで1〜2分で新しいお湯に換わる機械風呂(新湯式)や、お湯を溜めないミストシャワーの装置)を導入し、ルールを守っている所もあります。

 

しかし日本の病院の6〜7割は赤字で、特養や有料老人ホームも3~4割は赤字の中全ての施設がこうした最新設備のお風呂を導入できるわけではありません。

またこうした機械風呂は非常に高価で数百万円〜1千万円以上かかるものもあり、維持費もかかるためそうした高価な設備を導入したコストは利用者の基本料金や税金にも跳ね返ることになります。

 

 

機械風呂を導入する際の「初期費用」

 

本体価格:500~1000万円

 

古い設備の撤去・廃棄代:30~50万円

 

床の防水・配管の改修工事50〜200万円

 

合計:約600〜1000万円

 

機械風呂の耐用年数は約10年前後のため施設や病院は10年ごとにこの大金を払い続ける必要があります。

 

 

年間のランニングコスト

 

毎日何十人もお風呂に入れる場合維持費も莫大です。

 

水道・ボイラー(ガス・電気)代:年間約100~200万円

 

(機械風呂は一回に約300~400リットルのお湯を使います。1日30人分毎回入れ替えると12000リットル。これをボイラーで沸かすためガス代、電気代がかなりかかります)

 

定期メンテナンス・法定点検:年間約20~50万円

 

(レジオネラ菌対策の配管洗浄やリフトが途中で止まらないための機械点検が法律で義務付けられています)

 

合計:年間約120~250万円

 

これだけのお金が水道光熱費とメンテ代に消えていきます。

 

 

かかったお金は利用者に反映されるか?

 

①「加算」という形で基本料金が高くなる。

 

国は入浴介助加算を作っているため、最新設備と人員を揃えて申請すると利用者が毎月支払う「基本料金」に数千円〜数万円が上乗せされます。利用者は自動的に高い利用料を支払うようになります。

 

②ブラック化

 

経営が苦しい施設や病院が無理して機械風呂を購入した場合、お湯を毎回換える水道光熱費を節約するため、「便が入ってしまった風呂でもお湯をかえずに使い回す」ということがおきてしまいます。

 

さらに元を取るために人件費を削ることもあるため、現場の負担がさらに増え利用者に手厚いケアをすることは困難になっていきます。

 

 

  風呂入浴や入浴介助にはリスクがある

 

以前ニュースでも話題になりましたが、そうした入浴介助で利用者が死亡したり、怪我をするなどの事故も起きています。

 

ニュースコメントでは「職員が手で確認すればいい」などというコメントもありましたが、普通に職員も人間であり高温のお湯に手をつければ火傷してしまいます。利用者を守るためなら職員は怪我をしてもいいということなのでしょうか?私は違うと思います。

 

また先ほど話したように多くの機械浴槽は非常に不衛生です。みなさんも中に便が浮遊しているお湯だったとしても手を突っ込みたくはないですよね?職員だって同じですし、火傷をするリスクを負うのも嫌なはずです。そもそも温度を確認しなければいけない状態なら温度計を使えばいいだけで働いている人にリスクのある危険な行動をさせることは一切ないはずです。

 

 

事故が起きないための対策

 

ではこうした事故が起こらないようにすればどうしたらいいでしょう。

 

高温防止機能(サーモスタット)の義務付け

 

42度以上のお湯は物理的に出ないように機械側でロックをかけるシステムを導入すること。

 

(風呂場だけ42度以下のロックをかけることも可能、洗濯室や調理室には熱湯を送ることも可能)

 

デジタル温度計の常時監視

 

浴槽やシャワーの温度がリアルタイムで一目でわかるモニターを設置し、以上があればアラームがなるようにする。

 

点検コスト

 

経営者が定例のメンテナンスにお金を出しミキシング弁(温度調節の部品)の劣化を放置しない

 

 

  日本は風呂入浴介助をやめるべき

 

日本の風呂入浴介助現場は既に限界を迎えていると思います。私がこの現場を見たのは今から数年前のことですが、今も風呂介助の現場では痛ましい死亡事件や事故が起こっています。

また聞いた話では人手不足に拍車がかかり日雇いの人に複数人の要介護者の入浴をワンオペさせるということもあるようです。

その病院や施設のこともしらない、はじめてその場にきたような人が果たして安全に利用者を入浴介助できるでしょうか?

そもそも要介護者の症状は人によって様々で中には全く歩けなかったりすぐに転倒したりするような方もいます。機械風呂の扱いもはじめてくるような人が完璧に覚えられるようなものではないと思います。

 

日本の風呂入浴介助は既に現場の負担になっており、これをやめるだけでもそこで働いている職員の負担は激減し、人手不足解消にも一歩役立つでしょう。

 

利用者は歩ける人はシャワー浴だけしてもらい、寝たきりの人は体を拭くだけでもかなりきれいにはなると思います。

 

みなさんは寝たきりや要介護状態になったら、他人の汚物が浮いた風呂に入浴したいですか?私は嫌です。

またこうした不衛生な風呂に入浴して病気になった人もいました。

 

施設や病院が限界でお風呂を利用者ごとに取り替える、消毒するなどのルールを守れないほどの状態になっているならもうやめるべきではありませんか?

 

私はやめてほしいです。

 

偽装フリーランス問題、忘れられた政党助成金にパーティー券購入による企業優遇の政治政策、そして介護現場風呂入浴問題これらの問題が解決されること、改善されることを切に願います。