約十日前の出来事なのだが、
この旅において最悪の惨事が起きた。

ナポリからフェリーでシチリアに着き、
その翌日に自転車が盗まれた。

マルタ往きのフェリーチケットを買いに行こうと、
ゲストハウスの駐輪所に向かったら、
あるはずの自転車が無かった。

あまりにも唐突でリアルな現状を目の前に、
意外にも無感情な空白の時間が過ぎる。

盗まれたのは間違いない。

と、瞬時に理解は出来るのだが、
それをどうしたら良いのか分からない。

想定はしていただけに、しっかり施錠し、
建物の敷地内に目立たない様に停めていた。

周辺の人に尋ねるが知る訳も無く、
呆然と周囲を1時間以上歩き回り、
気持ちが落ち着いた頃に宿へ戻る。

オーナーにその事を告げると、
今まで一度も無かった事らしく、
彼も相当に落ち込んでいた。

出て来る見込みは無いだろうが、
警察へ一応届けを出しに行ったのだが、
いい加減なイタリア人の気質だけに、
盗品程度を探す気は全くない。


中国からイタリアまでの約二万キロを走り、
ほぼ毎日の様に眺めていた自転車が、
ある日を境に目の前から奪い去られた。


怒りや悲しみを通り越して、
妙な罪悪感が先行し自己嫌悪に陥る。


同部屋のカナダ人は僕以上に落ち込んで、
今にも泣き出しそうだった。

そんな彼を何故か僕がなだめているうちに、
徐々に気持ちが切り替わり、心が整理された。

マルタへ向かいチュニジアへ渡る予定だったが、
その予定はあくまでも自転車で行こうと思っていた道。

自転車無しではその道を進みたくは無い。


シェンゲン協定のリミットも迫りヨーロッパを出るにあたり、
この旅で予定ルートには入れていなかった場所で、
且つ物価の安い地域を選び、東南アジアへと飛ぶ事にした。

自転車が出て来る見込みは限りなく少なくても、
次にヨーロッパに入れるまでの3ヶ月間は待とうと思う。

今頃どこで誰に乗られてるのか?
売り飛ばされているのかは不明だが、
大事に乗っていてもらえる事を祈る。

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結局シチリアに2泊しただけで再びローマへ戻った。

イタリアは犯罪大国であり、スリや置き引きの被害は後を絶たない。
街中にはゴミやタバコの吸い殻、犬の糞が散乱し、
先進国の中では群を抜いてモラルが低い国民性だ。

メディアでは美しいイタリアの姿しか目にする事は無いだろうが、
それを凌駕する程の負の部分がイタリアには蔓延している。


更に悪い事は続くもので、ローマからバンコクへ旅立つ日に、
ローマの駅で窃盗集団に狙われ鞄を盗まれた。

出発間際の列車の中で、巧妙な手口を使われ、
ものの10秒足らずの間にやられてしまった。

鞄を隣の席の視界に入る位置に置いた状態で座っていた所、
窓の外から変な男が窓をノックし、何かを話しかけてきた。

「何言ってるか分からない。」と、あしらい前を向くと、
すでに鞄はなくなり男もどこかへ去っている。

他の客も見て見ぬ振りで、おそらく全員グルである。

鞄の中にはカメラやデータ保存用のパソコン、現金約200ユーロ。
その他、ブログとは別に付けていたノートとメモ帳などが入っていた。

仕事用のパソコンや他の貴重品はスーツケースに入れてあり、
それらは無事だったのだが、そのまま列車を飛び降りて、
スーツケースを引きずり鉄道警察に駆け込んだ。

ここでも警察の対応は最悪で全く親身になる事も無い。

「防犯カメラをチェックしてくれ!」と言っても
「カメラはない。」と訳の分からない事を言う。

相手にする気も無い様なやる気の無さを感じ、
あまりにもその対応と姿勢に腹が立ち、
警察署内で暴れまくり、椅子を全て蹴りたおし、
置いてある書類をばらまいて怒鳴り散らした。


流石に警察官も慌てて、別室で話をする事になった。

この手口は組織ぐるみで行われるので、
狙われたらどうしようもないと言う。

荷物が出て来る事も無いだろう。

しばらく話をし、旅の事も自転車の事も話すと、
「本当に申し訳ない。」と、警察官が謝ったので、
「悲しいけどイタリアは最低な国だよ。」
と言い残してその場を去り空港へ向かった。


もうここまで来ると、何故かテンションがあがる。


旅を続けると色々なものが削ぎ落ちて、
身軽になって行くものだ。


今回は全てが強引で、一気に無くなったモノが大きすぎるのだが、
それは新たな何かが始まるきっかけなのかもしれない。

そんな事を自分に言い聞かせ気持ちを全て切り替える。

仕事用のパソコンは無事なので、仕事は続けられるし、
クレジットカードやパスポートも手元にある。

旅の路程を記したノートと、バックアップしていない動画、
半年分の写真、集めていた各国の紙幣は本当に悔しいが、
それらはかけがえの無い経験値として僕の記憶に蓄積し、
モノに残らずとも鮮明に焼き付いている。


これからの予定はほぼ未定だ。


しかし、人生において後ろ向きに悩む時間程無益なモノは無い。


状況に応じて瞬時に考え判断し、実行する。


冬のヨーロッパから、東南アジアに降り立ち、
むせ返る暑さと時差ボケに狂いそうな中、
自転車の無い3ヶ月ばかりの旅が始まるのだった。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Lost man

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↑必ずシチリアには戻ります。
その時までに自転車が見つかってるのか?
3ヶ月後にシチリアへ戻るまでは待つつもりです。