
深い霧なのか雲の中なのか分らないまま、
ただただ真っ白に霞む景色の中を漂う。
冷たく張った朝の空気は出発の決心を鈍らし、
それを無理矢理に押しのけてペダルを踏む。

牧場の景色はどの国にいおいても長閑で広大だ。
ヨーロッパの都市は、首都であっても規模が大きすぎず、
セントラルに機能が集中する為、一度郊外に出たとたんに、
あっという間に緑が広がる風景へと場面が変わる。
地方都市であればあるほど、そのあり方は顕著であり、
教会を中心とした広場を中心に町が広がり人々が住み、
町と町の間には農村風景の中に走る道路と線路があるだけだ。
町を生活の拠点とし、私生活と自然との区別を明確にする事で、
その価値もより明確化され、必要以上に自然を壊す事もなく、
今も多くの緑が残り、昔から変わらない街並みや風景が守られる。
日本を始めとするアジア諸国が急速に発展し、
その姿や文化もまた急速に変化してゆく一方で、
ヨーロッパの時計は、焦る事無く自然のリズムで、
ゆっくりとその針を動かして来たのだろう。
「ヨーロッパの人々は、自然に対する配慮や意識が高い。」
と、よく言われるが、何世代にも渡って受け継がれる、彼らの
ライフスタイルを考えれば、至極当然の事なのかも知れない。
しばらくヨーロッパの農村風景の中を走っていると、
そんな事を考えさせられるのであった。




リンツの中央広場
標高500m~800mの辺りを何度も上下する道を、
チェコ南部からオーストリア中北部『リンツ』まで下り、
更に進路を南西にとり、ひたすら農村風景の中を走る。
予定ルートの週間天気予報を一通りチェックすると、
しばらくは天気が安定しそうなので一気に前へと進み、
オーストリアとドイツ国境の町でもあり、
モーツァルト生誕の町、『ザルツブルグ』へと着いた。
モーツァルトが25歳まで住んだ町には、
今も音楽が至る所に溢れており、
町には楽器を担いだ人々が多く歩き、
細い路地では誰かがギターを弾き語り、
広場では誰かがクラッシクを演奏する。
そんな町をフラフラと歩いていると、
いつも妙な感慨深さと優越感を感じる。

くもりガラス越しの光の様に淡い太陽の下、
数週間ぶりに雲の隙間からは青空が覗く。
アルプス山脈に程近いものの『ザルツブルグ』は暖かい。
しかしこの暖かさもそう長くは続かないだろう。
町の南には青い山脈が険しくも雄大にそびえている。
ここで2日間滞在し、また再び西へと進むのだった。




↑ザルツブルグの宿では二人の日本人と出会いました。
日本人と日本語で話するのが久しぶりでした。今は何処へ?
私は現在ドイツへ入国しています。