辺りは白く煙り、集落を包んではうっすらと視界を惑わす。

眠ったような町の静けさの中、
反りあがった斜面をゆっくりと上る。

丘を見上げる先に浮かぶ巨大な要塞は、
遥か高見から現実離れした姿を悠然と覗かせた。

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「天空の城」とも呼ばれる『クラック・デ・シュバリエ』は
800年以上経った今でも、他を寄せ付けない圧倒的な
存在感と重厚感を放ち続けている。

1144年に移り住んだ聖ヨハネ騎士団が要塞化した城は、
急な丘の頂上に建つ立地条件や、当時の建築技術の粋を集め、
細部まで徹底して作られた完璧なまでの要塞であった為、
「難攻不落」とされ、エルサレムを落としたサラディーンは、
1188年にこの城を攻めたのだが一日で諦めたと言う。

長期篭城に備えた備蓄庫や生活設備も充実した城は、
巨大でありながらも細部まで見事なまでの石組みで作られた。
その姿は他の追随を許さぬ程の雄大さと美しさを併せ持ち、
そこに建ち続けているだけで自らをより高見へと押し上げる。

所々石が崩れて姿を変えようとも、それもまた叙情があり赴き深く、
周囲に広がる自然や、麓に霞む集落と重なる事で生まれる風景の
美しさは、城を訪れた者をその場から離さないだろう。

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シリアを走り続け『ホムス』を出て西へ順調に進んでいたのだが、
突然現れた急な丘の斜面は、自転車を押して進む事すら間々ならず、
曲がりながら長く伸びる道路をジグザグに移動しながら上った。
5kmの坂を上るのに2時間以上かかり、やっとたどり着いた際に、
あまりの衝撃と感動で疲れを忘れ、城を見上げたまま立ち尽くし、
この場所にそれほどの想いも知識も無い僕ではあったのだが、
「ここで旅が終わってもよい。」と、心を折られる程の力を感じた。

標高は650mと、さほど高くは無いのだが、麓に漂う白い霧が
出鱈目に距離感を惑わせ、城が遥か天空に浮かぶ錯覚を得る。

夕日を浴びて浮かび上がるように建つ城の姿は、
まさに「天空の城」と呼ぶにふさわしい。

訪れる前までは数時間程度の滞在を予定していたものの、
丘の上には城のすぐ近くにホテルが一軒だけあり、僕はその宿の
『クラック・デ・シュバリエ』が窓から目の前に見える部屋に2泊した。

「孤高」、「至高」、「至宝」

どの言葉すらもこの城の前では必要がない。

何も知らずともここを訪れたのなら、
感動を超える程の衝撃を受けた
別の自分に出会えるかもしれない。

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宿泊したキャンピングホテル。一泊500SP
ガイドブックにはホムスを起点に周囲を観光...
とありますが、ここに泊まることをお薦めします。
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↑城の中でゲイに迫られ逃げる。と言う珍事がありました。要注意。
現在レバノン国境に程近い『タルトゥース』と言う町にいます。
地中海沿岸の町はかなり暖かく、長袖のTシャツ一枚で十分です。
風邪もほぼ治り体調も良いので、このままレバノンを目指します。
地中海に沈む夕日を見届けた後、明日の荷造りをはじめるのだった。
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