
久しく忘れかけていた喧騒が乾いた砂埃と共に巻き上がる。
日の光を浴び白く光る砂の家が無数に広がり町が作られた。
地面と同色の町は静かで巨大な古代遺跡のようでありながら、
一度足を踏み入れると、慌しい程入り組んだカオスが存在する。
トルコを抜け乾いた砂が作る風景の中『アレッポ』へ辿り着いた。
トルコはどこへ行っても様々な物が溢れ旅行者も多く、
生活はし易いものの少々間延びした感じが否めなかった。
視覚的な刺激は十分に楽しめたのだが、旅行客慣れしたトルコ人の
人懐っこさと言うよりも馴れ馴れしさには正直疲れを感じていた。
(長期旅行者の多くは「早くトルコを出たい。」と言う。)
イスタンブールで知り合った相棒と『アンタクヤ』で別れ、
一路シリアへと続く幹線道路をひた走る。
気温は10度ほどあり、日中は暖かく寒さを感じることは無かった。
まずはトルコ、シリア国境の町まで走り休む予定だったが、
道が思いのほかフラットであった為にお昼頃に到着してしまい、
少し迷ったのだが、勢いでそのまま『アレッポ』まで行く事にした。

国境付近を伸びる道は常に緊迫した雰囲気が漂い、
銃を持った軍人達は見張り塔の上から周囲を眺め、
軍事演習だろうか、どこからか無数の銃声が聞こえてくる。
何本も巻かれた有刺鉄線は道沿いに延々と続いていた。
日本では決して感じる事が出来ない不思議な緊張感がある。
約40km程走りシリア国境へと到着する。
観光バスやトラックが長い列を作っていたのだが、
その列を交わしながらふらふらとイミグレーションまで走り、
難なくトルコを出国し、シリアまでの緩衝地帯を3km進む。
厳正な入国審査が行われるかと思いきやいつの間にかシリアの
イミグレーションを通り過ぎ入国してしまいそうになったのだが、
スタンプを押されてないのに気付き戻って警備員に聞いてみると、
「向こうの建物でスタンプを押してもらってください。」
と、拍子抜けするような軽い感じで言われスタンプをもらいに行った。
ビザなしで不法入国も容易な感じに思える国境だった。

シリア人はトルコ人に比べると口数も少なく誠実な印象を受ける。
厳格なムスリム国家な為か、男性でもスカーフやターバンなどの
民族衣装を身に纏っている人も多く異国情緒が溢れる。
風景も変わり、ごつごつした白い岩山に植物が緑の芽を出し、
砂の色をした四角く小さな家が集まって町を作っていた。
空が異様に青く映り、景色をよりくっきりと浮かび上がらせる。
『アレッポ』までは緩やかな上り坂が多く、夜19時に到着した。
久々のロングランで疲れきって宿の前に自転車を停めると、
偶然にも『アンタクヤ』で分かれた相棒が買出しから戻ったようで、
再会を喜ぶと同時に、一日でここまで着いた事に驚かれた。
中東の都市は古い歴史を持つ遺跡や町が多いのだが、
『アレッポ』の歴史も古く紀元前25世紀頃まで遡り、
古代文明を発展させたユーフラテス川も近く、
『アレッポ』も有史以前から周辺国との交易が盛んだった。
町の象徴でもあるアレッポ城は紀元前10世紀に作られ、
その後14世紀の十字軍侵攻の際に要塞化された。
町を歩いているだけで十分観光気分に浸れるのだが、
その中でも迷路のように小道が入り組んだ旧市街の雰囲気は、
イスラム文化独特の味わいのある趣を感じることが出来る。
シリアの人々は非常にフレンドリーなのだがしつこくなく、
道を聞いても笑顔で教えてくれるし、店でのぼったくりも少ない。
子供達は英語で名前を尋ねてきては更に握手を求めてくる。
経済的には豊かとは思えないのだが、貧しさを感じる事も無い。
僕はこれからしばらく中東の暮らしの中を走るのだろう。
シリア、レバノン、ヨルダン、(イスラエルは行くか迷ってます。)
を約一ヶ月半かけてのんびり回ろうと思っているのだが、
一体どんな出会いが待っているのだろうか?
中東の冬は暖かさと寒さの中間を行ったり来たりするのだった。














↑シリア入国!物価はトルコに比べかなり安く、
生活費は一日1000円~1500円ってところです。
アレッポはまだ寒いので、早く暖かいところへ行きたいです。