ようやく夏が戻った剱岳。
8月終盤の土曜日、雨が降り出す前に登り、順調に下山中でのこと。
平蔵ノコルでツアーグループの団体とすれ違った。
先頭は、誇らしげにガイドワッペンを付けた初老の男性。
「おー。どこから登って来た?」と話しかけてきたので、「別山尾根です」と答えたら、「なんだ」と言われた。
切れ目無く続く列とすれ違ったら、後ろの一般登山者は渋滞にハマっていた。
コロナ禍以来、久しぶりにこのような光景を見た。
そして驚いたことに、ツアー客の一人が東大谷側の崖へ降りだそうとしていた。
おもわず、ガイドらしき男に「こんな場所で、お客さんから目を離すんじゃない」と怒鳴ってしまった。
久しぶりに渋滞したタテバイ。
罵声も聞こえる。
先頭はカラビナ架け替えシステムのツアーグループ。
剱岳をガイドする資格を持たない人々が普通にガイドしても何の話題にもならない昨今。
それを指摘する方が排除される世界なので、こんなことは書きたくもないし、どうでもいいのだが。
しかし、剱岳を楽しみに来た登山者に迷惑をかけることには虚しさを感じる。
剱岳で嫌な想い出を持って帰って欲しくない。
剱岳を愛するひとりの山岳ガイドとしての想いだ。
この渋滞で時間を取られた登山者は、昼過ぎから降り出した雨の影響を受けたことだろう。
渋滞を作らないシステムを作って欲しいものだ。
簡単なことだ。
なんのためにトランシーバーを胸に付けているのか。
私は絶対ツアーグループの後ろにならないように気をつけている。
カラビナを落とされ、ペットボトルを落とされ、石を落とされた経験からリスク回避している。
ツアーグループだけに限らず、個人でも危険を感じる登山者からは離れるように注意している。
落とす方はもちろん悪いが、当たる方にも非はある。
そして、資格範囲外でのガイド行為は、運営側とガイド側はもちろん一番悪い。
わかってやってるので最悪だ。
しかし、これだけ情報が豊富な中で、そこに参加するクライアント側にも問題はあると思う。
剱岳、ジャンダルム、沢登り、クライミング…。
クライアント側も、自分の大切な命を預けるガイドの資格範囲をチェックして欲しい。
確かにわかりづらく、グレー部分が多いし、そのグレー部分をうまく利用しているガイドもいるので怪しい募集には注意が必要だ。

