先日、剱沢小屋から雨で敗退して室堂へ帰る時、剱御前からの降り始めで後から来た単独登山者が追いついてきた。
先に行ってもらおうと思ったら、我々のグループの後に付かせて欲しいとのこと。
視界はかなり悪かったが、夏の雷鳥坂でおかしいなと思った。
先にどうぞと言うと、後から行きたいと言うし、しまいには怒り出し、捨て台詞を吐いてやっと降りて行った。
良く見たら、この人は剱岳に登りに来た単独行だった。
小屋内でもノーマスクで動き回っていて、我々グループが談話室で距離を取って会話していると、そのすぐ横に座り込む人だった。
私が「小屋内ではマスクしてください」と言うと不満気にマスクをつけたので良く覚えている。
ガイドしながら動いていると、後からピッタリ追いかけてくる登山者は今までも何度か経験したが、素性のわからない方に後からつけられると怖いものだ。
落石が嫌だし、その方に何かあれば面倒を見なければならない。
ガイド料金を払っているお客様に対しても失礼だ。
意地悪で言っているわけではなく、ホントに危険な状況では、困っている登山者にはいつもお手伝いはしている。
昨シーズン春、剱御前小屋を目指して雷鳥坂を登っていると、吹雪で視界が全く無くなり、危険を感じて雷鳥荘へ撤退した。
降りている途中で、迷っている単独登山者に会った。
相当な時間、迷ったらしく顔面が真っ赤で凍傷になりかけていたので、雷鳥沢テント場まで一緒に降りてきた。
翌朝、私達が撤退した地点から100m上で単独登山者が一名絶命して見つかった。
この時は、あともう少し登って見つけてあげられていたらと思った。
しかし、単独行を選択する登山者なら、もう少し覚悟を持って、自身で適切な判断を下し行動して欲しいと思う。
少なくとも、夏の雷鳥坂で、他パーティの後を追いかけるような人が、剱岳を単独で目指してはいけないのではないかと思った。
