高校では、正直、苦しいことの方が多かった。
いちおう友人もいるし、まあなんとなく生活はしているのだが、どうしても女の子の視線が気になってしょうがない。入学と同時に自尊心を打ち砕かれた彼は、ますます自分の見た目を気にするようになり、自分の一挙手一投足が評価の対象になっているような、そんな精神状態で毎日を過ごしていた。
アルバイトをしていてもそれは同じで、特に好きな女の子の前では、何をしていても失敗しているような気がして、冷や汗をかいていた。
「どうにかしなきゃ、どうすれば緊張しなくなるんだろう・・」
彼の頭には、女の子の前で、どう「緊張しないでいられるか」しか頭になかった。
そのために、毎日本屋に行っては、心理学やら、加藤諦三の本やらを、読みまくっては、悩んでいた。
とにかく場数をこなそうと、いろいろ話しかけてみるのだが、唐突過ぎるのと、アフターフォローが全くないので、
結局はコミュニケーションにならずに自分を責めたり、
かっこよく見られたい、独創的な人だと思ってもらいたい、その一心で、髪型やファッションにオリジナリティーを発揮しすぎて浮いてしまったりしていた。
いろいろとやってみた結果、表面的には明るくなり、「中沢くん変わったね」とか「明るくなったね」といわれるものの、内心では、相変わらず冷や汗をかいていた。
そんなことが続いて、ストレスがたまり、だんだんと感受性が乏しくなってきたのを感じていた。
大好きな音楽が、いつの間にか意味のないただの「音の羅列」のように感じられてきたのだった。