ヤマトの値上げは、27年ぶりらしい。今が2017年だから、前回は1990年、ちょうどバブル崩壊の時期と重なる(日経平均の過去最大値は1989年12月の38,915円)。
今回の値上げは、人手が足りず人件費が上がっていること、多額の残業代未払いを請求されたことで、コスト的に苦しくなっている面と、人手不足により従業員の労働時間が長期化していることで、内部環境が苦しくなっている面と、大きく2つの理由がある。
しかし、これだけの理由であれば、同じ状況に陥っている業界は他にもありそうだから、社会全体的に値上げ、も有り得るのではと思うが、現状、そうはなっていない。なぜか。
例えばファーストフード業界。大体的に「値上げ」と打ち出してはいないが、緩やかに単価を上げられている。気付かれないうちに、商品価格に転嫁されているようだ。でも、24h営業は問題だ、となり、営業時間を短縮しているところもあるが、それを機に、値上げも考えられたのではないか。結果として、値上げ出来なかったのは、それによって顧客が離れるのが怖かったからだろう。「なくては困る」というほどのものではなく、競合も山ほどいるし、競合もそれなりに稼いでいるから。でも、競合も全体的に疲弊しているのであれば、競合も全体的に値上げに踏み切れるのであれば、業界として、やり方について改善の余地はあったのかも知れない。
例えばIT業界。BtoBが多いので、ニュースになりにくいのかも知れないが、そこまで値上げされているような感覚はない。Web業界では、人手が足りず人件費も値上がってそうだが、業務システム系の業界では、相変わらずの業態が続いている気がする。この業界が「値上げ」とならないのは、それぞれが、個別事情でのカスタマイズ案件が多く、費用対効果も見えにくく、「一律値上げ」という概念がないため、難しいのかも知れない。
そのように比較していくと、運送業界には、他の業界にはない特徴が見えてきた。社会のインフラのようなもので、なくてはならないもの、あって当たり前のものになっていること。サービスの価値が顧客にとって分かりやすく、見えやすいものであること。当日配送が当たり前、再配達が当たり前、という顧客の感覚を変えるには、これだけ大きく打ち出す必要があったということか。逆に社会的な事業だからこそ、大きく打ち出せる、という面もある。あとは、競合が少ないというか、大手が占めるシェアの割合が高い業界だというのも一因と考えられる。
しかし、社会に対してこれだけ大きく打ち出すことは、社外へのコスト交渉的に有利だというだけでなく、社内に対して改善の意思を示すという効果もありそうだ。自社へのコミットメントがより高まりそう。
他に社会インフラとなっている企業としては、鉄道、エネルギー、回線などが思い付くが、いずれも、今のところ、そこまで労働環境も悪くなく、それなりに稼いでいるよう思われる。でも、第二のヤマトが出てくるとすれば、社会インフラ的な会社だろう。条件が整えば、だが、労働環境が苦しくなった時の値上げ戦略の一つとして、非常に参考になる例だと思う。