人手不足が叫ばれ、運賃値上げ交渉が始まった物流業界。今後の見通しについて、ヤマトと佐川での比較や、他業界との比較のなかで見定める。ヤマトも佐川も、5月に決算公表のはずなので、いったん2016年度の決算で分析し、公表され次第、最新のものでアップデートする。
<売上/利益/利益率>
ヤマトが1.4兆円の売上に対して700億円の営業利益、営業利益率は5%程度。決して高い数字ではない。一方の佐川は、9,000億円の売上に対して500億円の営業利益、営業利益率はこちらも、5%+α程度。
ちなみに、輸送という観点で、他業界はどうなっているのか。
まずは陸。JRは東海がダントツで、なんと30%超え!売上規模も、1.5兆円と高い。JR東で17%、JR西で13%と、そこそこ高い。こんなに利益率が高く稼いでいるなら、新幹線もっと安くしろと言いたくなる。
次に空。規模はANAが1.7兆円、JALは1.3兆円とANAの方が高いが、営業利益率については、意外にも、破綻したJALの方が16%と高い。ANAは8%。全く同じような事業をしていて、2倍も差がつくのは、余り考えられないが・・・ちなみにJALの破綻前の利益率を見てみると、1~5%程度と、相当低かったようだ。破綻後の危機感から、業務改善した結果だろう。稲盛さんの功績だろうか。
最後に海。日本郵船は赤字または高くても2%程度と、民間の雰囲気がしない。と思ったら、商船三井も、2007年の約15%をピークに、直近はマイナスだったり0%近くで苦しんでいるようだ。そして川崎汽船も5%以下。売上規模としては、いずれも1~2兆円で、他と変わらない。
まとめると、営業利益率では、陸(鉄道)>空>陸(車)>海、となっている。車での陸運の利益率の低さは、距離的にも荷物サイズ的にも、単価が安く、薄利多売になってしまっていることが大きいと想像がつくが・・・海運の利益率が低いのは、積載率の低さや回転率の悪さからだろうか。特に国内だと、ルート的に非効率にならざるを得ないというのはあるのかも知れない。
<取扱い個数/単価>
ヤマトは、17億個で1兆円だから、1個当たり600円程度になる。そして佐川は、12億個で7,000億円だから、こちらも1個当たり600円程度と、変わらない。ちなみに3番手のJPは5億個、4番手の西濃は1億個と、だいぶ差が開いてしまっている。
業界全体で合計してみると、35億個の宅配便が送られていることになる。単価が変わらないとすると、市場規模は2.1兆円程度。
日本の人口約1.2億人と比較すると、一人当たり年間で30個も宅配便を送っている、または受け取っていることになる。月に2~3回。相当な量だとは思うが、確かに、それぐらいは利用しているのかも知れない。
ちなみに、経産省によると、BtoCのEC市場規模は13.8兆円で、前年比7.6%増とのこと。宅配便が35億個だとすると、全体としての平均購入単価は、4,000円程度になる。ZOZOTOWNが公表する購入単価は9,000円程度だから、アパレルは高めとして、その他の日用品が押し下げているのだろうか。
EC化が同じスピードで進むとすると、来年には、市場規模は+1兆円、単価4,000円で割ると、宅配便の個数は+2.5億個となる。ヤマトのシェアは半分ぐらいだから、ヤマトだけで+1.2億個。
<将来の見立て>
上記のような市場の状態に対して、ヤマトは、来年、宅配便を8,000億個は減らす、と言っている。つまり、他社が2億個(1.2億個+0.8億個)を掴み取るチャンスが出てくるということだ。でもそうはせず、同じように値上げ路線に入っている。
そうすると、どうなるか。大きく3通りが考えられる。
荷主業者が値上げ幅を吸収し、カスタマーに転嫁しないのだとしたら、市場の成長は維持、荷主業者からヤマトや佐川に利益が還元され、ヤマト/佐川は利益率を改善することになる。カスタマーにとっては、これが一番有り難い。
一方で、荷主業者がカスタマー向け価格に転嫁し始めるとしたら、そしてカスタマーの購買力が変化しないのだとしたら、どこか別の業界、カスタマーがこれまで消費してきた領域がダメージを受けるのかも知れない。EC業界としては、成長が維持される。カスタマーがECの替りに削る事となる業界から、ヤマト/佐川へ、利益が還元される。
そして最後に、荷主業者がカスタマー向け価格に転嫁し、かつ、それを受けカスタマーが通販でモノを買い控えするパターン。そうなると、EC業界は縮小する。そしてヤマト/佐川は現状維持、または場合によっては成長が鈍化する可能性もある。
カギになるのは、荷主業者である各店舗がどう動くか、そしてカスタマーがどう動くか。感覚的には、以下3点の理由より、各店舗が吸収するのではと思う。
①有象無象が多数のため、足並みを揃えられず、カスタマーへの転嫁が競合劣位になる
②配送以外にも色々な業務があるため、その他領域のBPRで吸収できそう
③店舗が無い分、資産効率が良くなるため、元々の利益率が高そう(想像)
とすると、これからヤマト/佐川が潤っていき、ECを展開する各店舗が苦しい状況になる構図が見えてくる。まずはJALの利益率を目指し、是非10%超えを達成して欲しい。引き続き、注目していきたい。