事の発端となった1歳上の男性、健は騒ぎの後、環にメールを送ってきた。
「そこまで気にしているとは思わなかった。ごめん。」
それを読んだ環は、数日考え、戸惑いながら返事を返した。
どうして既婚者であることを明かしたくなかったか、どうして恥ずかしいと思ったのか。
それは健の同情を買おうと書いたものではなく、また綺麗な文章ではなかったが、ひとつ残らず思いが綴られたものだった。
数日後、健から返事が返ってきた。
「そっか、よくあることだよね。まぁ気になさんな。俺も居るから。」
そこから健との個人的な付き合いが始まった。
とはいえ、環は健に男性として好意を持っていた訳ではなく、むしろ彼のどこか尖って、時には攻撃的となる彼の発言に少し違和感も覚えていたほどである。
ただ、今回の件で、健の理解のある態度に、少しだけ見直したのは事実だ。
更に友達として付き合っていけそう。環はそう思った。
ある日、健が
「サークルの友達とスキーに行く前、深夜バスが出発する前に、どこかで2人で会って、夕飯を一緒に食べよう。」
と誘ってきた。
あの一件の事は過去となっていた2人には、この誘いは環にも心地良いものだった。
当日は2月の寒い夜だった。
時間通りに到着した環。
数分後に現れた健。
久しぶりに男性と2人だけで食事をした。
ファミレスだったが、6年ぶり以上の男性との食事に、環は少しドギマギした。
「友達なのに何を恥ずかしがってるの…。女の子と一緒に食事と一緒でしょ!」
そう自分の心に呟き、その恥ずかしさを隠そうと、更に饒舌になっていった。