環、20歳。大学3年生。
両親の不仲から、そのストレスのはけ口となった。
自殺未遂をするも、このままではいけないと思い、大学在学中に家を飛び出し、当時付き合っていた同じ大学生の彼氏の元に転がり込む。
その彼と同棲を始め、大学卒業間近の22歳で結婚。
卒業しその後4年間。
何事もなく平和な生活を送る中、結婚後、仕事に夢中になるあまり、自分に見向きもしなくなった彼に不満を持ち続けるようになった。自分を求めてくることも次第に減り、女性としての魅力に自信を無くし心が満たされなくなってしまった。
何度かの激しい口論の末、「勝手にしろ、他の人を見つけたら?」と言われた環は、自分を自分として見てくれる人たちが集う趣味を見出していった。
参加し始めたサークルの人たちには、結婚をしていることを隠していた。
いや、隠しているというよりは聞かれるまで言わないで置こうと思った。
それは自分を「誰かの奥さん」としてではなく、「自分」として見て欲しかったから。
参加している人たちは面白いくらいに同世代が多く、とても心地よかった。
このサークルの9割が男性だったが、
26歳の環には、そこで男女問わず多くの友達が出来た。
特に仲のいい男友達がいた。
1人は2歳上、1人は1歳上、2人は同い年。
そしてそれを見守る8歳上のお兄さん役の男性。
みんな頻繁に環とメール交換をした。
他愛無い話で盛り上がる、環と男友達。
それ以外にも環に絡んでくる男性は多く居た。
合わせると5人くらいはいただろうか。
やはり女性は貴重だったのだろう。
とても可愛いとは言い難い環の存在も、みんなの歓心を買うようになっていったのだ。
そして環はそれをどこかで感じていた。女性として見られていることを。
趣味を始めて2年ほど。28歳の春。
そのサークルの人たちとすっかり馴染んだ時、1歳上の男性が
「環って結婚してるんだよね?不倫?(笑)」
と、みんなの面前でからかってきたのだった。
環は愕然とした。
ここには結婚していることを知らない人は多く居る。
隠していたわけじゃないのだけれど…知られたくなかった。
「見向きもされないのに既婚者ってなに?私はあの人のモノじゃないのに…」
知られてしまったことへの恥ずかしい気持ちと共に、悔しい思いがふつふつと湧き上がってきた。
「そういう話はしたくないので、控えて頂けませんか」
小さな声でそう言うのが精一杯だった。
回りは静まり返っていた。
28歳の春の夜だった。