数時間後ファミレスを出て、健は環にこう言った。

「もし時間があるなら、スキー道具を入れたコインロッカーまで付き合ってくれない?」

何しろスキー道具はかさばるので、夕飯を食べる前にコインロッカーに預けたと言うのだ。

 

終電までまだ時間がある。

快諾した環は、健と会話に花を咲かせながらコインロッカーまで歩いて行った。

環は寒がりだったが、楽しい会話でその寒さがすっかり吹き飛んでしまった。

 

10分後、コインロッカーに到着した。

そこで健は荷物を取り出した。

環は少しだけ話をして帰ろうと思ったが、この時の健はやけに話が長かった。

「人気の少ない場所だから、早く帰りたいなあ。怖いな。」

そう思いながらも、健が環を笑わせようとしてくるので、つい長居してしまった。

 

沢山の長話の後、

「じゃ、行ってくるね。」と健。

「うん、またね~!(良かった、怖いからもう帰ろう)」と環。

 

「(さて、変な人に絡まれないうちに帰ろう)」と急ぎ足で帰ろうとした環。

そこに、健がいきなり環の手を掴み、引き戻した。

 

「…!?」

 

「どうしたの??」と訊く環。

健は少し戸惑いながらも、その力強い腕でそのまま環を胸に引き寄せ、

環の唇に、濃厚なキスをしたのだった。

 

環は気が遠くなった。

どうして?どうしてこんな風になってしまったんだろう。

これからどうなるの?

眩暈を感じながらも、頭の中に色んな思いが巡る。

強く抱きしめられた環は、初めて彼の思いを認識した。

そしてその感覚に、環も少し溺れかけそうになった。

 

唇を離した健は、一言

「ごめん…」

 

環はどうしたら良いのか分からなかった。

口から言葉が出てこなかった。

彼の強引なキスを受け入れてしまった自分。

 

色んな思いが交錯し、何もかもわからなくなり、そのまま走り去ってしまった。

池袋の大通りを池袋駅方面を早足で歩く環。

2月の寒い日、星の綺麗な夜だった。