人生で初めての事が起き、環の心は乱れてしまったが、
反比例してその後の日常生活は至って普通だった。
毎日仕事をして、帰宅。
そして夕食後、夫はそのままコタツでうたた寝。環はPCの部屋に行き、サークルのメンバーとネットで話し込む。そこに健もいた。
健が環に「また会いたいな」と誘ってきた。
どこかであの一件をなかったことにしたかった環は「そうね、また連絡するね」と返事をした。
深みに嵌ってしまったら、自分がどうにかなってしまいそうだったから。
その前に私は向き合わないといけない人が居る。そう思った。
そう向き合う相手はこの人。夫。
色々言っても、この人とまずは向き合わないといけないんだ。
そう思った環は、テレビを付けたままうたた寝している夫の部屋に行き、こう話を切り出した。
「あの、話があるんだけれど。」
「私の事…もう好きじゃないの…?」
環の存在で目が覚め、その話を聞いて少し面倒くさそうな表情になった夫は、
「好きっていうか、空気みたいな存在なんだよね」
そう言い放って、また寝てしまった。
それを見ていた環の頬には、涙が次から次へと溢れては伝っていった。
「ダメかもしれない…もう…」