“恋愛のもつれ”では済まされない
なぜ『元交際相手による殺害』が
繰り返されるのか
─日本の見過ごされるジェンダーに基づく暴力─
今回もまたデートDVの末に命を落とす事件が起きました。
「ストーカーにあっていた」「警察に相談していた」・・・
どうしてこんなにも何度も何度も同じことが繰り返されるのでしょうか?
インターネットで「元交際相手」「殺害」などと検索すると、これまでのニュースが相当な数出てきます。
デートDV防止教育をしている身としては、
そろそろ、本質に向き合った対策に本気で取り組んでほしいと強く思います。
海外ではこういった事件は、
「女性に対する暴力」「ジェンダーに基づく暴力」として、社会的な取り組みを行っています。
予防教育の義務化や加害者対策など当たり前に行われていたりします。
しかし、日本はまだ「恋愛のもつれ」や「個人的なこと」などとして扱われているように思います。
こういった関係性を利用した暴力は、
被害を訴えてもその暴力の影響が矮小化されやすいのです。
(昔に比べ警察はDVについて取り組みを強化していますが)
特に、今回の「交際相手への暴力→別れる→ストーカー化→殺害」という流れは、
デートDVの典型的なパターンです。
だからこそ、こうした流れを予測した上で、早めの対応をとることが求められます。
しかし、警察の側も実は限界があって、
・被害届(被害者からの届け出)がないと警察が犯罪として動けないこと
・生活を共にしていないデートDVは、DV防止法の保護命令の対象外
であることも課題として挙げられます。
まず、DVは支配です。
「彼女は俺のモノ」
「彼女は俺に従って当たり前」
という支配的な価値観、
そして“彼女”に自分の欲求を満たしてもらえないことに対する「強い被害者意識」、
自分から逃げようとする被害者に対して
”罰を与える”=殺害する・暴力をふるう
という懲罰意識 を持っています。
この背景には、
日本に根強く残る家父長的な価値観
─たとえば「男が偉い」「女は男に尽くすべき」「女性は男性を満たす存在」といった思い込みがあります。
さらに、「自分の言うことをきかせるために暴力を使ってもよい」とする力と支配、暴力を容認する価値観も、
DVの動機となる根強い価値観となっています。
すべての男性がこのようなジェンダー規範を身に着けているということではありません。
しかし、男性が上・女性が下という日本社会(ジェンダー不平等な社会)の構造上、
意思決定の場には男性が偏っているため、
法制度の整備や政策の議論においても、
ジェンダーに基づく暴力といった女性が被害を受けやすい暴力、特に親密な関係における暴力 への対応が不十分になりがちです。
個人的な問題、
“家”の中で起きること、
デートDVやDVを社会的なことや
ジェンダーの問題として扱わなければ、
被害を防ぐための本質的な対策は難しいのです。
テレビにも多くの解説者が出てきますが、
どうしてもジェンダー視点がなく、本質が抜けているように思うので、
ひとりでも多くの人がこの問題の社会的な課題に気づいてほしいと思います。
もっと社会にジェンダー視点が入れば、問題の根底にたどりつけるはず。
私たち一人ひとりがジェンダーについて学ぶことが、
社会のあらゆる暴力を減らし、
誰もが安心して生きられる未来への第一歩になると信じています。