人から、いい加減に見える生き方をしてたところを彼に拾われた僕は。
あれからずっと、この部屋で彼と暮らしている。
人から、いい加減に見える生き方をしていた僕のことを彼も他の人と同じように
いい加減に生きているように見ていた。
他の人よりもたくさん、僕は彼に僕自身の話をしたけれどそれでも、彼は僕のことをなんとなく歪んで見ていた気がする。
それでも、たぶんきっと、僕自身が彼ではない他の人に話す時よりも素直に話が出来ているって思えて僕は彼についていった。
自分が猫だったらよかったのに、と思う。
所有されることに片方の愛情があればいい。そして僕は餌をくれる、可愛がってくれる飼い主を愛す。気まぐれに可愛いげを醸して。足元へと素直に、撫でてもらいにいく。
僕の体がこんなにデカくなければな。
知ってることがたくさんなんて無ければ。
無条件で可愛がってもらえるような獣であったならよかったのに。
責任がこんなに重い生き物でなんてなかったなら。
選択肢の手前で
だいぶ初期の頃を悔やむ。
繋がりに、はっきりとした名前がなければ
誰の傍にいることも許されない。
否、居ることはできるけれど居続けることは無理なんだよなぁ。
時が、過ぎていってしまう。
このままがいいって今まで、
何回も何回も何回も思ったんだけど
そのときに留まることは叶わなかった。
魔法なんて使えないただの人間だし当たり前だ。
たとえばタイムマシンがあったとしても
この願いは叶わない。
とめどなく流れていく時間を止めることができるわけじゃないし、今この時を標本にできたとしても
いつだっていつも叶わない願いだってわかってるけど
生きてしまう僕の、生まれてしまう願いは
虚しさが先に待っているとしてもそんなことは関係なく。
本当は目的を持っていた。他人から見たらきっと、ちっぽけでくだらなくて愚かしい理由ではあったけれどそれが僕の全てでもあった。
大人にはなりたくなかった。
誰かのものになりたくなかった。
みんなから優しくされたかった。
一人で静かにいたかった。
どこにもいたくないけれど
どこか少しで良いから陣地が欲しくて
そこを誰にも侵してほしくはなくて、
誰かの目に映っていたいけれど
ずっと見られているのは怖くて。
現状維持を心掛けるだけでは維持なんてしていられなくて。
温もりなんて信じてなかった。
過ぎていく時間の中で人の心は
移り変わり行く風のような、
飛んでいく風船のような、
空のような掴まえ所の無い存在に見える。
自分のすら掴まえていられないのに。
だから、ひとときだけで充分。
幸せになってしまえば慣れてしまって
それ無しではいられなくなって
掴まえようと躍起になれば遠ざかる。失う。
幸せの手前にいれば安心できた。
それが自分のものにならずとも
それだけで幸せだったから。
続けるにも、伸ばしていくにも
僕自身がそれに不適応。
幸せの手前までしか近付けない。
ここまでで良い。
たくさん幸せを見つけてきた。
いつだって満たされている。
いつだってまた満たせる。
だからいつだってもう、充分だ。
もう充分なんだ。
消えたい僕を許してほしい。
許容できる範囲なんてほんとはすごく小さいんだ。
気にしないことが時々上手くいくだけで。
許せる許せないの秤にかけるのであれば
両極にガタンゴトンと傾くことだらけだろう。