小さな恋の行く先は【16】 | 今日の戯れ言

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『久しぶり』

そのひと言だけで、その後は何も喋らず、ただもじもじとそこに居る彼女。何か言いたいことがあるのはわかるが、俺にも伝えたい事があるわけで。

つい、と席を立ち、彼女 の前に立った。驚く顔と、視線がぶつかる。

構わず手を伸ばし、頭の上に置いた。その瞬間、ビクッと瞳を閉じられた。体が小さく震えてるのがわかる。

…やっぱ怖がらせちまってるんだな。
そうは思っても、ここで引き下がる訳にはいかねぇ。


そっと頭を撫でながら、出来るだけ穏やかに声をかけた。

「こないだは悪かったな、あんな真似して。

もう二度とあんなことしねぇからさ、また前みたいに顔、出してくれっと嬉しいンだけど」


嫌われたんなら仕方ねぇけど、もしそうじゃないなら

少しくらい、望んでもいいなら

たまにでもいい。以前みたいに顔を出して欲しくて。



返事は、声にはならない小さなうなずき。それでも、今の俺には充分な返事。それに答えるように、頭を小さくくしゃくしゃ…っと撫でた後、ポンポンっとして、俺は言葉を続けた。

「サンキュ…」


そして、抱き締めたくなる衝動を抑え込み、そっと顔を近づけ、耳元で呟いた。


「ごめんな、輝…」



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