『久しぶり』
そのひと言だけで、その後は何も喋らず、ただもじもじとそこに居る彼女。何か言いたいことがあるのはわかるが、俺にも伝えたい事があるわけで。
つい、と席を立ち、彼女 の前に立った。驚く顔と、視線がぶつかる。
構わず手を伸ばし、頭の上に置いた。その瞬間、ビクッと瞳を閉じられた。体が小さく震えてるのがわかる。
…やっぱ怖がらせちまってるんだな。
そうは思っても、ここで引き下がる訳にはいかねぇ。
そっと頭を撫でながら、出来るだけ穏やかに声をかけた。
「こないだは悪かったな、あんな真似して。
もう二度とあんなことしねぇからさ、また前みたいに顔、出してくれっと嬉しいンだけど」
嫌われたんなら仕方ねぇけど、もしそうじゃないなら
少しくらい、望んでもいいなら
たまにでもいい。以前みたいに顔を出して欲しくて。
返事は、声にはならない小さなうなずき。それでも、今の俺には充分な返事。それに答えるように、頭を小さくくしゃくしゃ…っと撫でた後、ポンポンっとして、俺は言葉を続けた。
「サンキュ…」
そして、抱き締めたくなる衝動を抑え込み、そっと顔を近づけ、耳元で呟いた。
「ごめんな、輝…」
to be next story …
最初から見たい時は
go-back to first story