せっかくの幼なじみの申し出に乗って、居ないのを承知の上で
「天ちゃん、居る?」
と部屋に行けば、驚き顔のケン兄がいた。
押された背中に勇気をもらって会いにきたはずなのに、「久しぶり」の言葉しか出てこない。
ちゃんと言わなきゃ、私の気持ち。
こないだは、何も言わずに逃げちゃってごめんなさい。
私も、ホントはずっと前からケン兄が大好きだったの…
なのに、まっすぐに顔を見ることも出来ず
気持ちばかりが焦って、うまく言葉に出来ない。
空気は重くまとわりつき、時間だけがさらさらと過ぎていく。
その時、カタン、と音がして、ケン兄が立ち上がる気配がした。
ゆっくりと近づいて来るのがわかる。けど、怖くて顔があげられない。
何も言わず、つ、と私の前で立ち止まった。
思わず、顔が上がる。視線が一瞬だけど、ぶつかった。それと同時に伸びてきた手に、反射的に目をギュッと閉じてしまった。
優しい瞳、柔らかい笑顔。怯える必要なんてどこにもないのに、緊張で体が震える。
だめだよ
こんなじゃ、今度は本当に嫌われちゃう。
言わなきゃなのに
伝えなきゃなのに…
to be next story …
最初から見たい時は
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