こちらはスマホやゲームの依存症について専門外来を開設している神奈川の久里浜医療センターの先生が、スマホ依存に関して解説した一冊です。
アルコール、タバコ、違法薬物などの依存物には共通項があります。
それは快楽を得られること、飽きずに使い続けられることです。
スマホはこれらの共通項に加えて、手軽にアクセス出来るという特徴があり、現代の最強の依存物である、と本書では記されています。
依存物には、正の強化、負の強化という作用があります。
正の強化とは、依存物に触れることで快楽が得られるため、よりそれに触りたくなるという作用です。
負の強化とは、依存物が絶たれた状態の不快感から抜け出すために、よりその依存物を求めるようになる、という作用です。
依存物と関わり始めた当初は、皆正の強化によって依存物との関わりを強めていきますが、
やがてその依存物に触れられないことによる不快感を拭い去るために、つまり負の強化によってその依存物に耽溺していくようになります。
だから依存症に陥っている人というのは、依存物に触れて快楽を感じているわけではなく、むしろ不快感に苦しんでいるのです。
そして依存物に対して依存的になってしまう度合いは、その依存物に触れ始める年齢が若ければ若いほど強くなる傾向があるのだそうです。
つまり小さな子どものうちから、無制限にスマホを使わせてしまうと、将来的に依存症になるリスクが高くなる、ということです。
依存症に苦しんでいる人に対しては、本人の意志が弱いからだ、とか、自己責任だ、という声が度々聞かれますが、
遺伝的な特徴によって依存症になりやすいケースがあることが知られていますし、
アルコールやスマホゲームのCMのように社会がその依存物を許容し、推進さえしている場合があることを考えれば、
自己責任などという、社会がその責任を放棄をするための便利な言葉で片付けられない問題だということが分かります。
加えて、スマホ依存に苦しむ中高生には、まだ事の理非を判断するだけの力が十分に育っていません。
だからスマホ依存を、彼ら個人の責任に帰することは出来ないはずです。
まずは、その子の周りにいる大人が、スマホはただ便利なだけの道具ではなく、
使い方によっては、あなたの将来を台無しにする危険があるものなのだと、伝える必要があると私は考えます。
大切なお子さんの将来が、スマホの不適切な仕様によって害されることが無いよう、
中高生のお子さんをお持ちの親御さんにぜひ読んで頂きたい一冊です。