ここ数回にわたり、脳の仕組みに基づいた記憶方法について書いております。
前回のブログで綴ったことは、
・脳は大雑把に記憶することが得意
・精緻化された情報は脳に留まりやすくなる
・基本問題で全体像を理解した後に応用問題に取り掛かること
という内容でした。
前回に引き続き、脳科学の知見に基づいた記憶のメカニズムについて綴って行きたいと思います。
「脳の仕組みと科学的勉強法」(池谷裕二著)によれば、記憶というものは、大まかに三つに分かれるのだそうです。
・方法記憶
・知識記憶
・経験記憶
この三つです。
方法記憶とは、身体を使う経験を伴ってやり方を記憶することです。
例えば、泳ぎ方、箸の使い方、自転車の乗り方、逆上がりの仕方、歩き方などです。
得意な記憶の仕方は、年齢とともに移り変わっていくのですが、
生まれて間もない段階で得意とするのが、この方法記憶です。
方法記憶は記憶の仕方として低次ではありますが、
記憶したことをいつまでも覚えていられるという利点があります。
例えば、久しぶりに自転車に乗っても、その乗り方をしっかりと覚えているという経験をされた方は多いと思うのです。
それは自転車の乗り方の記憶が、方法記憶によってなされているからです。
次に知識記憶です。
これは知識や情報の記憶です。
例えば、
江戸幕府を開いたのは徳川家康だとか、新潟の県庁所在地は新潟市だとか、○○さんの電話番号は090-○○○○ー××××だとか、
知識や情報そのものを丸暗記することです。
これは方法記憶の次に発達する記憶の仕方で、中学生くらいまではこのやり方が得意なのだそうです。
だから中学生くらいまでは、丸暗記というやり方で勉強するというのは理にかなったやり方なのですが、
年齢とともに苦手になってくるという特徴があります。
中学生まではすごく勉強が得意だったのに高校に入ったら苦手になる、という現象がしばしば起きてきますが、
それはもしかしたら、年齢とともに丸暗記が苦手になってくるのに、記憶の仕方を転換できていないことに起因するのかもしれません。
三つ目が経験記憶です。
経験記憶とは、その名の通り経験を記憶することです。
経験記憶は、記憶の仕方として一番最後に発達する方法なのだそうです。
小さい頃の記憶が乏しいという方も多いと思いますが、それは経験記憶という記憶方法がまだ未発達なことに起因しています。
さて、何か記憶を思い出してください、と問われたときに私たちは何を思い出すでしょうか?
例えば、家族でどこそこの山を登ったこと、友達とおいしいラーメン屋さんに行ったこと、大学生のときに海外を一人旅したこと、など、
何かしらの経験を思い出される方が多いのではないでしょうか?
記憶を思い出してください、と問われたときに、
鎌倉幕府が開かれたのは1192年であるとか、二次方程式の解の公式は~~であるとか、○○さん家の住所は新潟県新潟市×△□であるとか、
知識記憶を思い出される方は少ないと思います。
これが経験記憶の大きな利点です。
経験記憶というのは、知識記憶に比べて思い出しやすい、という特徴があるのです。
例えばテレビを見ながら「この芸能人の名前何だっけ?」と問われて、出てきそうで出てこない、という経験をされたことはありませんか?
それはその記憶が、思い出しやすい経験記憶ではなく、思い出しづらい知識記憶だからです。
今日書いたことをまとめると、以下になります。
・記憶には、方法記憶、知識記憶、経験記憶の三つがあること
・方法記憶は、身体を伴った記憶でいつまでも忘れづらいという特徴があること
・知識記憶は、知識や情報をそのままに記憶すること、つまり丸暗記と呼ばれるもので、中学生くらいまではこの方法が得意であること
・経験記憶は、何かしらの経験を伴った記憶で、知識記憶が思い出しづらいのに比べて、経験記憶は思い出しやすいこと
ちょっとまた長くなってしまいましたので、続きはまた次回。