ここ数回、「記憶」について綴っております。
昨日のブログでは、
・海馬に重要な情報と認識させるためには復習が必要
・復習するタイミングは翌日、一週間後、二週間後、一か月後がよいこと
・脳内にインプットされた情報を整理するために睡眠が大切
という内容を綴りました。
本日は具体的な記憶の仕方について綴ります。
脳は大雑把に記憶することが得意です。
大雑把である程度の曖昧さをもって記憶することはとても大切なことなのです。
例えば、ある日初めてA子さんという方に会ったとします。
その日A子さんは、白いシャツを着ていて、髪を後ろに束ねていました。
もし脳がその日のA子さんを隅から隅まで精緻に記憶していたら、次にA子さんに会ったとき、青いシャツを着て、髪を短く切ったA子さんをA子さんとは認識できなくなってしまいます。
記憶というのはある程度大雑把であるからこそ、役に立つのです。
だから脳はあえて大雑把にものごとを記憶するわけです。
大雑把に記憶するのは得意、精緻に記憶するのは苦手。
この性質を学習に転用するならば記憶の仕方は、まず大雑把に全体像を記憶し、その後細部まで精緻に記憶するほうがいいことがわかります。
例えば、理科を例に説明してみます。
まず頭に入れるべきはその学問の全体像です。
理科であれば、物理、化学、地学、生物という大づかみのジャンルがあり、その中でまた様々なジャンルに枝分かれした体系を持っている訳です。
その全体像を把握して頭の中に知の地図を形作ることです。
手書きの図を掲載しますが、こんなイメージです。
具体的にそれは何をすることかを言えば、全範囲にわたって基本問題を一度解いてみることです。
ある学問にA分野、B分野、C分野、D分野があったとして、従来のやり方であれば、A分野基礎→A分野応用→B分野基礎→B分野応用→C分野基礎・・・という順番で学習していました。
脳は大雑把に記憶するのが得意という性質を利用するならば、こういう順番になります。
A分野基礎→B分野基礎→C分野基礎→D分野基礎でまず全体像を把握し、その後A分野応用→B分野応用→C分野応用→D分野応用で深い内容を把握していく。
この方が脳の特性に合った記憶法といえるのです。
だから例えば高校受験生には学校から配布される教材(新研究、整理と対策など)をやるときは、まず基本問題だけ全範囲にわたり学習し、その後応用問題に取り掛かるように勧めています。
またこの方法には、脳が大雑把に記憶するのが得意だからという理由以外に、もう一つ理由があります。
それは精緻化された情報は忘れにくいというものです。
精緻化とは脳科学の分野の言葉で、ものごとの内容を連合させてより豊富にすること、という意味で使われています。
2の平方根は1.41421356・・・と続く循環しない無限小数で表されますが、その数字の並びをそのまま数字の並びとして記憶することは容易ではありません。
でもこの数字を「ひとよひとよにひとみごろ」と語呂合わせで覚えたものは記憶に残りやすくなるわけです。
この数字という内容と語呂という内容を連合させて内容を豊富にすることを精緻化といいます。
ほかの情報と絡めて覚えたものは、記憶に残りやすいということが言えるのです。
まず大雑把に全範囲を学習したときに頭に入っている知識と、応用問題を解く際に学習した知識には当然関連性があるわけですが、
既に入っている知識と新しく入れた深い知識の間で、精緻化が起こりその記憶は脳内に留まりやすくなるわけです。
これが全範囲の基本問題→応用問題の順で解いたほうがよいもう一つの理由です。
まだ書きたいことがあるのですが、だいぶ長くなったので続きはまた次回に。
今日は、
・脳は大雑把に記憶することが得意
・精緻化された情報は脳に留まりやすくなる
・基本問題で全体像を理解した後に応用問題に取り掛かること
という内容を綴りました。
もしご家庭に受験生がいらっしゃるならば、ぜひ参考にしてみてください。
続きます。