ただひら氏が帰ってきたようである。
ここのところ数カ月、とんと姿を見せず、連絡も寄こさず、
ふらりと行方をくらましやがったただひら氏が、
いけしゃあしゃあと何食わぬ顔で、お帰りになったようだ。
以下は、ただひら氏からの引用文である。
どうも、みんなのアイドルただひらである。
この数カ月、私儀、いろいろと憂き目にあっていたのである。
我が高校は多士済々、彼らの功名全国に轟き、なお自己鍛錬の緩みなきさま、
ただただ感服し、辟易し、嫉妬し、落胆し、空を仰ぐばかりである。
私はと言えば、薄志弱行、登校しては天才どもの栄光に怖じ気づき、さりとて負けじと決心するも、
帰路につけばたちまち微睡む。それを毎日、義務とばかりに繰り返している。
そのぐうたらな生活やら怠惰な性格やらを、なにかと気に入っているのがさらに厄介である。
周りの友は、博学多才。口を開けば宇宙が飛び出る。
天馬空を駆けるが如き思想に我が僻案は勿論通じず、詭弁を弄すもたちまち説破される。
悔し涙は潺湲として溢れ、我がお気に入りの枕をしとどに濡らす。
次第に自信を失い、実力を失うも、頑として居座る我が高きプライド。
いい加減低まれとの主人から忠告はいとも簡単に跳ね返され、
嫌だ嫌だ、俺はここが気に入った、気に入ったから俺なんだと、
なんだかよく分からない理論を展開し、依然としてどかぬ。
ところで今、我らは現代文にて「山月記」を習い終えた。
主人公の李徴は性、狷介、自ら恃むことすこぶる厚き男なれば、
その臆病な自尊心を保つ為に山に籠ったのである。
そう、自身の非才が露呈するのを恐れたのである。
言ってみれば、私も実にそのような立場に置かれているのではないか。
彼は博学才頴、若くして一級国家公務員試験に合格する鬼才であるから、我とは大きく違えど、
それでもなお、その心中、慮るに難くない。
我も、自らの非才に気付き始めながら、それを否定し続けている。
しかし、それの露呈を防がんがため、あえて筆を置いているのではないだろうか。
郁々たる文章を書こうとするも出てくるのは単なる文字の羅列。
このまま修練を放棄すれば、私など容易に人後に落ちよう。
止めねばならぬ。悪しき流れは止めねばならぬ。
さて、余談ではあるが、また私事ではあるが、近況を語ろう。
まず、テストが幾つもあった。我が成績は乱高下するも徐々に下降を続け、まさに正念場を迎えている。
しかし我の心持は先述の通りである。
そして、学校祭があった。女装の羞恥と撮影の孤独とリア充への怨緒、それに尽きる。
最後に、これは先日の話であるが、高校生クイズ大会への出場が決まった。
どう運命が転がったかは見当がつかぬ。何かの間違いかもしれぬ。
運と微々たる知識と後先考えぬ楽観主義によって、
勝利の祝杯に酔う結果となった。
これが神様の巡り合わせなれば、一生懸命、更なる邁進に向けて、花の都パリスに向けて、
ただひたすらに努力を重ねるのみ、と私は考えている次第である。
(以上、引用終わり)