高齢の親を特定の家族が囲い込み、他のきょうだいや親族が会えなくなってしまう──
 

そんな「高齢親の囲い込み問題」が、今、家族間のトラブルとして深刻化しています。

 

この記事では、この問題をよりリアルに理解していただくために、実際にありうる相談のやりとりを会話形式で再現してみました。


登場人物は、囲い込みに悩む45歳の女性・真里さんと、高校時代からの親友であり弁護士でもある麻衣子さんです。

 

会話の中で、囲い込みの実態や家族間の葛藤、そして法的な対応策などが自然に見えてくる構成となっています。
「もしかして、うちの家族も…」と感じている方は、ぜひ参考にしてください。

 

 

 

 

■シーン:弁護士事務所の応接室

 

午後の静かな事務所。落ち着いた雰囲気の応接室に、旧友2人が向かい合って座っている。

 

パート女性(真里):「……本当に、こんなことを相談する日が来るなんて思わなかったよ。ごめんね、麻衣子。高校のときから親友なのに、こんな重たい話ばかりで。」

 

弁護士(麻衣子):「何言ってるの。こういう時のために、私がいるんでしょ。ちゃんと話してくれて嬉しいよ。…じゃあ、改めて。亮介さんにお父さんを囲い込まれてるってことだけど、具体的にどんな状況なの?」

 

 

 

 

真里:「うん…。2年前に父が軽い認知症って診断されたあたりから、亮介が“これからは俺が見る”って言い出して、それっきり。ある日突然、父が実家からいなくなってて…。」

 

麻衣子:「連絡は取れないの?」

 

真里:「亮介には何度も電話したし、メールも送った。でも『お前が来ると混乱するから』とか、『父は自宅にいる。会わせる必要はない』って言うだけ。でも実家に行っても人の気配がまるでないの。」

 

麻衣子:「施設に入れたって話は?」

 

真里:「親戚からこっそり聞いたの。“亮介、お父さんをどこか施設に入れたって言ってたけど、場所は教えてくれなかった”って…。私には『家にいる』って言ってるのに。これって、おかしいよね?」

 

麻衣子:「完全におかしいわね。しかもお父さんが認知症ってことは、意思表示も難しいだろうし、亮介さんが“すべてを管理してる”状態ならなおさら。囲い込みっていうより、もう情報の遮断と拘束に近いわ。」

 

 

 

 

真里(涙ぐみながら):「どこにいるのかもわからないのよ…。2年も、声も顔も見てない。父は今、元気なのかどうかも。母が亡くなってから、亮介が急に父に対して独占的になって……どうしたらいいの?」

 

麻衣子(手を優しく差し出しながら):「大丈夫、真里。今から一緒に動こう。まずは、情報開示の請求から進めていける。亮介さんが成年後見人になってるかどうかも調べられるし、必要があれば家庭裁判所に面会交流の調停や審判を申し立てることもできる。」

 

真里:「私でも父に会えるようになるの…?」

 

麻衣子:「もちろん。お父さんは誰かの“所有物”じゃない。たとえ認知症でも、“誰に会うか”は基本的に本人の意思。無理やり引き離されてるなら、それはお父さんの人権の問題でもある。」

 

真里(小さく頷きながら):「よかった…。高校のときから、麻衣子がしっかり者だったの知ってたけど、ほんとに頼りになるよ…。」

 

麻衣子(微笑んで):「あのときから私、法律好きだったもんね。大丈夫、真里。親友としても、弁護士としても、全力でお父さんに会えるようサポートするから。」

 

 

 


 

 

上記の真里と麻衣子の会話をもとに、「高齢親の囲い込み問題」相談シーンの解説文を作成しました。

 

内容理解を深めるため、ポイントを【状況整理】【問題点】【法的視点】【心理的側面】【今後の対応】などに分けて解説しています。

 

 


 

 

🔍【会話の解説】高齢親の囲い込み問題 ~真里と麻衣子の相談シーンより~


🧩【状況整理】

  • 主人公・真里は45歳のパート主婦。高校時代からの親友である麻衣子(弁護士)に相談。
  • 2年前に父が認知症と診断され、兄・亮介が「自分が見る」と主張。
  • その後、父の居場所が不明に。実家にもおらず、亮介は「自宅にいる」と言い張る。
  • 親戚の話では、亮介は父を施設に入れたらしいが、施設名などは教えず、真里には接触を許さない。

 


 

 

⚠️【問題点】

 

  • 高齢親の所在不明:家族が父の居場所を知ることができず、2年にわたり面会できない。
  • 情報の独占と遮断:亮介がすべての情報と決定権を握り、他のきょうだい(真里)を排除。
  • 親の意思の軽視:父がどう感じているか、誰に会いたいかという視点が完全に無視されている。
  • 法的・倫理的にグレーな囲い込み:家族間の「善意」による支配が、結果的に高齢者の人権侵害につながっている。
 

 


 

 

⚖️【法的視点】

  • 弁護士・麻衣子の助言により、以下のような法的アクションが可能であることが示される:
    • 父の成年後見制度の利用状況の調査(後見人がいるか確認)
    • 面会交流の調停・審判申立て(家庭裁判所に申立てることで、面会の機会を取り戻す)
    • 情報開示の請求(施設や介護サービスに対して、親族としての正当な情報開示を求める)

 


 

 

🧠【心理的・人間関係の側面】

  • 亮介の「自分が父を見る」という行動の背後には、過剰な責任感・支配欲・相続や感情のこじれなど、様々な心理的動機が考えられる。
  • 真里の「父に会いたい」という思いは、実は父の意思を尊重したいという姿勢に基づいている。
  • 麻衣子は親友として真里の不安に寄り添いつつ、専門家として冷静な対応策を提案している。
 

 


 

 

🛠【今後の対応】

  • 真里が父と再会するためのプロセスは、以下のようなステップで進められると予想される:
    1. 成年後見制度の有無の確認
    2. 父の居場所(施設)の調査
    3. 法的な手続きを通じた面会の権利の回復
    4. 第三者機関の介入(地域包括支援センターなど)
    5. 必要に応じて親子・兄妹間の法的紛争への備え

 


 

 

📝【まとめ】

  • この会話は、高齢親の囲い込みが「家族内の問題」であると同時に、人権・法・心理の交差点にある重大な課題であることを示している。
  • きょうだい間の感情や過去の確執が絡みやすい問題だからこそ、第三者の専門家(弁護士など)の介入が鍵。
  • 真里のように「親に会えない…」と悩む人は、早めに専門機関へ相談することが重要。