先生!もう半年近くずっと、予期不安や、ちょっとした不快な発作症状にも対処できるようになってきたんです。それなのに、先日思いもかけない所で、久しぶりの大きなパニック発作になってしまって、それからまた臆病になっちゃって…
あなたは…そうですね。カルテを見ると正しく練習は進めてきていますよね。経過を見ても山あり谷ありな時期も通過してきたようですし。
はい!それはもう。
だから、色んな場所にも行けるようになりました。今でも不安はありますが、「でも迷わずにとりあえず行ってみよう!」ってなったんです。これは私にとって大きな変化でした!
なのに…どうしたらいいでしょうか。
わかりました。
今回の事は、この先にも何度かあると思いますよ。
えっー!
何度かあるんですか?
どうしたらいいですか?
はい。これを私は「神様のおためし」と呼んでいます。私にも何度か起こりました。その度に罠にはまりました。
罠?
そう罠です。あなたもハマってますね。
私…ハマってますか?
はい!ドップリと。
「どうしたらいいでしょうか」は典型です。
他の方法を模索する。
原因を考える。
自分を責める。
備えようとする。
どうですか?あなたにも、そんなところがないですか?
図星です…
でもね、これ私も見事にハマった四つの罠なんですよ。皆回復の過程で、「神様のおためし」に出くわして、こんな心境になるんです。
何度か起きてしまう事が考えられますが、その度に同じ罠にハマるわけですが、だんだんと、このおためしの乗り越え方が上手くなっていきます。
本当でしょうか…そうは思えません。
はじめの頃のような強い発作症状だったもので…
そうですね。それは「今のあなた」だからこそ、そう思ってしまう心配です。
数ヶ月も経過して感じる発作症状は、余計にとても強くも感じられるでしょう。しかも思いもしないところで起きたりもするので。
そう!そうなんですぅ!
起きたこともない、起きるような場所でもない、なんでもないところで突然そんな事になったので…
「神様のおためし」だからです。
今までの腕試しです。
ためされているんですか?
私? なにも悪いことしてないですよ!私!
ハハッ、悪さをしたからじゃないですよ。
ただね、山頂間近なんです。富士山で言えば八合目。でも頂上は見えても空気は薄いんです。
もう一度、足元、持ち物をしっかり整理しなおす場所にやってきてるんです。
はぁ…わかるような、わからないような…
(苦笑)
何度かこうした「神様のおためし」に出くわして、毎回のように
他の方法を模索する。
原因を考える。
自分を責める。
備えようとする。
になるわけですが、そんな自分の状態に「気付き」が入れられるようになると、そんな自分を引いてみれるので
他の方法はない。
原因はない。ただそうなっただけ。
自分を責める必要はない。
備えるのではなくて、その時の対応だけ。
と本来の原則を思い出し、実行できるようになるんです。
あー、確かに…この四つはよく言われてました。忘れてたかも。だから罠にハマってても、気付かなかったんですね。
そのとおりです。私もハマったんですよ。人間、忘れてしまう生き物なのでね。仕方がないんです。今回の事は復習テストなんです。
これから山頂に向けて登頂を成功させるためには必要なルールの再確認なんですよ、今回の出来事は。
他の方法を探そうとする事自体、また症状をどうにかしよう、コントロールしようとしてたんですね、私。
それに原因を探して、それを排除しようとしていました。いつもより寝不足かもとか、疲れてるからかもって。そうしたら寝不足や、疲労感にとらわれぎみな自分がいたので原因探しはやめたんです。
誰も悪くないし、それは「たまたま起きただけ」なんですもんね!備えようがない!
さすが!ちゃんと理解できてるじゃないですか!
それなのに…私…
反省しない!
あっ、そうでした!(苦笑)
反省からは何も生まれないんでした!すぐ塞ぎ込んでしまう癖があるから…
あなたが今、言ったこと、次にやってくるかもしれない「神様のおためし」に少しでも気付けたら、きっと今回のような事にはならないと思いますよ。
そうですね。
やってきてほしくはないですけど…
気持ちはわかります。
でも怪我とは違って、克服の一歩手前まで、出てくるときは出てくるんです。その何度かの「神様のおためし」を通して、対処の仕方の精度が上がってくると考えてください。
精度が上がるかぁ…
はやく、ど真ん中を当てられるといいなぁ…
大丈夫!
ここまで登ってきたあなたですから!
ちゃんと山頂に立って、良い景色を堪能できるようになりますよ!
はい!たくさんの素晴らしい景色を見たいです! またふんどしを締め直します!
えっ?、ふんどし…って(苦笑)
「神様のおためし」…もうすでに体験して、罠にかかった人、現在ハマり中の方もいるでしょう。抜け出し方がわからず、もがいている人は、まず抜け出そうと考えないことです。
蟻地獄と同じで、もがけばもがくほど沈んでいきます。だからこそ、まずは抜け出そうと必死にならず、とりあえず肩の力を抜きましょう。これはいたずらな神様が仕掛けた愛情の罠なんです。
だから大丈夫。
パニック障害など心の病全般は、日を追うごとに、綺麗なカーブを描いて治っていくものではありません。ギザギザと山あり谷あり、そして回復の山頂が見え始める頃にさえも、谷に落ちる場面も起こりうるのです。
それが山であり、パニック障害、心の病という病気の性質なんです。それがわかっていれば大きく心配するに及びません。向きを変えて考えれば順調に山頂に進んできたということなのですから。
ブログをよく読んで対処を復習しましょう。
それでも辛い!ムリかも!となれば、カウンセリングを受けてください。グッと理解が深まります。カウンセリングは克服への最短距離ですよ。あなたとお話できることを楽しみにしています。