劇的に変わるものなんていらない、冬。

本当に気のおけない友達から、半年ぶりに連絡をもらった。元旦に。

「明日、昼飯でも行こかー」

お昼前にそいつがうちまで来てくれた。

ぼくの住まいは片田舎。1月2日に営業しているお店が近くにあるかどうかもわからなかった。

気持ちとしては、行きつけの個人営業の飲食店へ顔を出したかったが、さすがに3日か4日にならないとまだ開店していないだろう。

「どこ行こな」

友人Tは言う。

「…まあ、まだ1月2日やし。ファミレスぐらいしか開いてないんちゃうか」

とぼく。

後で電話するわ、というセリフを、後でテレホンするわ、と表現する友人Tは、

「ファミリーレストランかいな」

と、わざわざ言い直す。

「うん、ファミリーレストラン」

「八田くん、ファミリーレストランはええけど、兄弟で行ったらファミリーちゃうでな」

「…ああ、ブラザーレストランかな」

とぼくはそう言って続ける。「おれら2人行ったら、オールドマンレストランかも知れんけど…おのおののおっさんが心ん中で思ってたらえんちゃうか」

「確かに」

と友人Tは笑いながら答える。

ぼくは、こう続ける。

「だってなあ、ラブホテルもな、そう考えるとおかしいで。ほとんど、ラブないで。たぶん。ラブを省いた、ただのホテル、になる」

友人Tは神妙にぼくのセリフを受けて言葉をつなぐ。

「…うん、せやな。ビジネスホテル、ってことになるかもな」

くだらない時間を共有できる友人は、1人か2人、いてくれるだけでこの人生はかわる。

劇的に変わるものなんて、いらない。

そんなものはまがい物であり、劇薬にすぎないのだから。

ほんの少し、風景や見方に影響をくれる人間が、ただ何人かいてくれるだけで、おれたちの世界は何倍も価値あるものに変わる。

そしてそれ以上を望むのは野蛮人。

【3月の展示・イベント情報】

【展示】

終了しました●「猫を愛する芸術家の仲間達2024」

2/22~3/3

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3/23（土）TORES（姫路市）

切り絵アーティストHachi

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