
マトリックスはもともとはレコード盤をプレスする「スタンパー」の製造を管理する目的でつけられています。マトリックスはいわゆる「原盤番号」と「枝番号」からなることが多く、本来は「枝番号」がマトリックスを意味します。
ロックの領域でこのマトリックスが広まる原因となったのは、おそらくザ・ビートルズのUKオリジナル盤のマトリックスの探求だと思われます。有名なものは「ラバー・ソウル」のモノラル・オリジナルにおける通称「ラウド・カット」と「リボルバー」のモノラル・オリジナルにおける「別ミックス盤」です。
前者はマトリックスが「XEX579-1」「XEX580-1」となっています。この「XEX579」というのが原盤番号で、各レーベルで続き番号になっているのが普通です。つまりEMI傘下のパーロフォン・レーベルから出たアルバムを1枚ずつ見ていくと、この番号の連続になっているはずです。(はず、というのは例外がたまにあるのです。例えばテストプレスまで作られたけど、発売中止になった場合には割り当てられた番号が欠番になることあり)そして「1」というのが枝番号で、通常は「○番目にカッティングして作製したスタンパー」ということになります。このプレスは「ラウド・カット」と呼ばれており、風説ではレベルが高めに切られているために市販のプレーヤーで針飛びしかねない、ということで急いで別のスタンパーに切り替えられた(ので、枚数が少ない)といわれています。ちなみに切り替えられた後の枝番号は「4」です。あれ?「2」と「3」は?となりますが、なんらかの理由で製作はされたものの破棄されたと推測されます(つまり枝番号の欠番ですね)。「2」や「3」の盤がもし出現したら、エラいことになるのですが・・・
そして後者はB面のマトリックスが「XEX606-1」となっており、「Tomorrow never knows」の「OKテイク」ではない別のテイクが間違って収録されていることがわかったために有名になりました。これは判明後にすぐ対応され「XEX606-2」に切り替わりますが、「XEX606-1」盤はある程度流通しているので、ザ・ビートルズのニュー・アルバムの発売がいかに当時としては異例の体制でなされていたかの証左となっています。(普通回収されるところですが、混乱を避けるためにそのまま流通させたのでしょう)
このように本来は工業製品の管理目的で機械的に付された番号が、いろいろなストーリーを持って語られるところが「マトリックス」探求の面白さで、まだまだ分かっていないことがたくさんありまさしくラビリンス(迷宮)なのです。
