こんにちは、大井です。

 

10月9日にミュージカル「エリザベート」が帝国劇場で開演初日を迎えました!

 

2020年の全公演中止から2年半。新たなリスタートの瞬間に立ち会うため帝国劇場へ行ってまいりました。

 

 

座席はS列のセンターブロック!S列は前が通路なので前席に座る人の頭を気にすることなく落ち着いて観れます。帝劇は1階席の傾斜が緩いので前の席にどのような人が座るのか、開演前はいつもビクビクです。

 

とはいえセンターブロックの席はやはり格別です。たとえ後方であってもキャストのエネルギーがまっすぐにこちらへ向かってきます。

特に第一幕の最後「私だけに<リプライズ>」三重唱は、真正面からだと3人(エリザベート、トート、フランツ)が上下左右に美しく配列されて見えるため、圧巻の光景を目にすることができます。

 

 

初日のキャストはご覧のとおりです。

育三郎トートが初見参であったほか、熟練キャストとフレッシュな顔ぶれがミックスされた見ごたえのある公演でした。今後も何回か観に行くため観劇の感想は後日またじっくりと。

 

見た目はキッチュですが、頑丈でしっかりしたアクリルスタンドセット。

 

子ルドルフくんのチャーム。研究室にいる子ルドルフくんのおともに。

 

さて今回ミュージカル「エリザベート」を観て、この作品が

歴史の勉強要素が存分に詰まった最高ランクの歴史ミュージカル

だと改めて実感しました。

 

たとえば

 

新絶対主義と自由主義弾圧(皇帝の務め)

王権と教権の癒着(皇后ゾフィーとラウシャー大司教)

ウィーン体制の崩壊(クリミア戦争による墺露の離縁)

ハンガリー民族主義(ハンガリー独立運動の高まりと和協)

資本主義と貧富の格差(ミルクの偏在と貧民の不満)

公認売春宿の盛況(マダム・ヴォルフ)

ドイツ民族主義と反ユダヤ主義(憎しみHass)

 

などなど、19世紀後半のリアルなヨーロッパが詰まりに詰まっています。

 

とりわけ最後に挙げたテーマはとても重要な意味を持つものでした。

巨大なナチスの鍵十字(ハーケンクロイツ)の旗が舞台になびくシーンはものすごい怖さを感じます。

 

「双頭の鷲」から「鍵十字」へ時代が少しずつ移り変わる!このミュージカルではその時代の変遷が舞台装置やルドルフの死を使って表現されています。それにしても、皇太子ルドルフが自殺した年にヒトラーがオーストリアで誕生するなんて・・・。偶然にしてはあまりにも話ができすぎていてちょっと怖いですね。

闇が広がっていたのはルドルフの心だけではなく、オーストリア、いやヨーロッパそのものだったのでしょうか・・・・。

 

もちろんこの作品は一人の女性の生きざまと葛藤を描いた歴史ドラマです。

だからこそ、時代や国を超え多くの女性を魅了し感情移入させるのだと思います。

しかしそれだけでなく、この舞台の背後にはハプスブルクの黄昏という大きな歴史上のテーマも潜んでいます。600年にわたりヨーロッパを牛耳ってきた王朝の落日と終焉。その時代背景を意識しながら鑑賞するとこのミュージカルのスケールの大きさが見えてきます。

 

ただひとつだけ注意してなければならないのは、私たちはその後にハプスブルク帝国が滅亡(1918年)することを知ってしまっています。だからこそ、エリザベートが生きた時代をハプスブルクの「終末期」「落日寸前」と見てしまいます。しかし当時の人にはまだ未来が見えていません。そこを考えながらこの作品を観ると、つまり当時の人と同じ目線に立ってストーリーを追っていくと各登場人物のリアルな感情に近づけるかもしれません。

 

そして、なぜハプスブルク帝国は崩壊したのか?世界で何千年も続いた帝国の時代はなぜ終わってしまったのか?これを考える一助にもつながります。

 

ミュージカル「エリザベート」はヨーロッパ近代史の勉強にもなる!

のです。

 

プリンセス好き!ヨーロッパ好き!歴史好き!そんな日本人の国民性にぴったりなミュージカル「エリザベート」。日本人が楽しめる娯楽であり、いろいろ学べる勉強道具ではないかと思います。

 

 

おわり