映画観賞……それは時に○○億円もの制作費をかけた作品を、だいたい2000円前後で楽しめるめっちゃコスパの良いエンタメ……。

 これは、当劇団きっての映画好きにして、殺陣と小道具美術担当の筆者が、コロナ禍からようやくかつての日常を取り戻しつつある現代社会いおいて、筆者の独断と偏見といい加減な知識と思い出を元に、徒然なるままに……徒然なるままにオススメの映画について書くコーナーである。

 

 

 

 

 

 

 

▼『映画を語れてと言われても』

 

 

 TODAY'S
 
第一六九回『俺ちゃん参上! “デッドプール”』



 

 タグ:MCU アメコミヒーロー Xメン ライアン・レイノルズ ミュータント 第四の壁 メタネタ

 

『デッドプール』

2016年公開

監督:ティム・ミラー

製作:ライアン・レイノルズ サイモン・キンバーグ他

出演:ライアン・レイノルズ モリーナ・バッカリン エド・スクライン T・J・ミラー ジーナ・カラーノ ブリアナ・ヒルデブランド

 

 

 

 あらすじ

 元特殊部隊の隊員ながら不名誉除隊し、今は傭兵というかトラブルシューターのようなことで日銭を稼いでいる、やたらモノローグ好きで口が達者な男ウェイド・ウィルソン(演:ライアン・レイノルズ)は、ある日、高級娼婦のヴァネッサ(演:モリーナ・バッカリン)と運命の出会いを果たし、恋の炎を燃えがらせ結婚の約束を交わすに至る。

 しかし、その直後にウェイドは倒れ、末期ガンであることが発覚してしまう。

 あらゆる手段で治療の道を模索するウェイドであったが、そのようなものは無く、絶望の果てにヴァネッサの前から姿を消すウェイド。

 そんな時、友人のウィーゼル(演:T・J・ミラー)が店長をしている傭兵仲間行きつけのバーにて、怪し気な男からある実験的治療の提案を受けたウェイドは、藁にも縋る思いでそれを受けるのであった。

 

 そかしそれは、人為的にXメンのようなミュータントを生み出す為の違法な人体実験であり、ウェイドは彼らの実験施設に監禁されると、彼らのボスであるフランシス(演:エド・スクライン)によって拷問のような実験の数々を施された末に、全身がガン細胞となることで末期ガンを克服し、脅威的な治癒能力を有するようになったものの、全身ケロイドのような醜い姿へと変貌してしまう。

 

 ウェイドのその変化と同時にフランシスの隙をついて実験施設を爆破し、自身の死亡を擬装した上で脱出に成功する。

 しかし、醜く変貌した顔ではヴァネッサの元に返ることもできず、ウェイドはフランシスを探し出し、復讐するのと同時に自分の姿を元に戻す術を聞き出そうと、彼を探し始める。

 その過程で、フランシスに繋がる手がかりと思しき裏社会の住人を次々と血祭りに挙げて行ったウェイドは、返り血の目立たない深紅のコスチュームに実を包み、自らをデッドプール(死の賭け)と名乗り出すのであった。

 

 そして追跡の果てについにフランシスの居所を突き止め、襲撃を仕掛けるウェイド、だがそんな彼の行いを、Xメンであるコロッサスとエガソニック・ティーンエイジウォーヘッドが黙って見てはいなかった。

 

 はてして、ウェイドの復讐の行方は!?

 ウェイドは元の姿に戻り、ヴァネッサの元に返ることはできるのであろうか!?

 

 

 




 

 さて今回は実写アメコミヒーロー映画回!

 それもあらゆるヒーローのなかでも屈指の掟破り野郎の映画回です!

 

 

 原作はマーベル社の同名コミック。

 ‥‥‥ということはこのコーナーでも度々語られる『アベンジャーズ』や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』や『キャプテンアメリカ』と同じ会社から出版され、同じ世界観を共有するシリーズということになるのですが、原作コミックはともかく本作をはじめとする実写映画版は少々事情が異なるのです。

 

 

 

 監督はティム・ミラーというお人。

 本作が監督デビュー、本作後に『ターミネーター:ニューフェイト』を撮ることになるお方です。

 ‥‥‥そう書くと本作の期待値に若干の影響がありそうですが、元々視覚効果の専門家として活躍していたお方だそうで、CGを多用しつつ、ヒーローの肉弾戦をド迫力に描く優秀な監督さんです。

 

 

 

 で、主演にしてプロデューサーの一人も務めたのがライアン・レイノルズ。

 あのDCコミックスのヒーローチーム〈ジャスティス・リーグ〉のメンバーが一人を描いた実写映画『グリーンランタン』で主演し、

マーベルコミックス原作のバンパイアハンター・ヒーロー映画『ブレイド3』主演のウェズリー・スナイブスと共演し、『ウルヴァリン:X‐MEN ZERO』ではヒュー・ジャックマンと共演し、なんだかアメコミ原作映画に縁がある気がしないでもないカナダから来た元モデルのイケメン俳優です。

 因みに元嫁がMCUキャラのブラック・ウィドウで有名なスカーレット・ヨハンソンで、現嫁が本コーナーでも紹介した『ロストバケーション』主演のブレイク・ライブリーで、熱々夫婦で有名なそうです。

 彼の類まれな人徳と人脈と執念が、本作を誕生させることとなるのです‥‥‥。

 

 

 共演は、ヒロインであるウェイドAKAデッドプールの最愛の女性ヴァネッサ役にモリーナ・バッカリン。

 主にTVドラマで活躍していた女優さんで、宇宙人による地球侵略を描いたドラマのリメイク『V』での敵宇宙人のボスを演じたのが有名かもしれません。

 本作では大変器の大きな女性を演じております。

 

 

 そのデッドプールを誕生させた悪の実験施設のボス・フランシス役にエド・スクライン。

 アクションの出来る俳優さんでジェイソン・ステイサム『トランスポーター』リメイク版の主演や、木城ゆきと原作のハリウッド製AFサイボーグアクション映画『アリータ:バトルエンジェル』で人気キャラのザパンを演じたり、第二次大戦中の日米艦隊の大海戦を描いた『ミッドウェイ』では主演も務めていいます。

 格闘アクションでデッドプールと戦うにはもってこいの役者さんです。

 



 

 さらに、ウェイド行きつけのバーのマスター・ウィーゼル役にT・J・ミラー。

 POV怪獣映画『クローバーフィールド』での決してカメラを止めない主人公の悪友役で映画デビューし、以後『トランスフォーマー:ロストエイジ』や深海ホラー『アンダーウォーター』等で、毎度似たようなともかくやたらよくしゃべる軽薄キャラを演じているコメディアン俳優です。

 今回もほぼほぼアドリブなんだろうなぁ~というセリフしか言いません。

 でも筆者のお気に入り俳優の一人です。

 

 

 さらにもと総合格闘家の女優ジーナ・カラーノなどが出演し、本作をアクション面で盛り上げています。

 

 

 

 

 総じて本作のキャスティングは、実力派揃いではありますが、あまり大予算とは言えない感じです。

 実際本作は、この種の映画の中ではあまり潤沢とはいえない予算で作られた映画なのだそうです。

 しかしながら実際に見てみると本作は、予算不足など気にならないようなゴージャスな映像とアクション、意外と真面目なストーリー、そして主役デッドプールのハチャメチャさ加減で大ヒットし、本コーナーでも紹介した『ワイルドスピード:スーパーコンボ』や『ブレット・トレイン』の監督デイビット・リーチによる第二作が2018年に公開され、2024年には待望の映画第三作目が公開されるに至たるわけです。

 



 

 そこまで本作がウケた理由は、原作の魅力、見事な実写映像化、キャストの熱演と、これまで語ってきた作品と大して変わりありません。

 

 本作にはさらにプラスして、デッドプールというこれまでいそうでいなかったキャラの魅力が大きいと思います。

 器械体操のような華麗な身のこなしで、二振りの日本刀と二丁拳銃を自在に操る戦闘スタイル。

 さらにヒーリングファクターという脅威的治癒力で、何をやっても、どんなダメージを受けても死なないからできるグロテスクでスプラッタなアクション。

 そしてなんといっても、映画を見ている観客に語り掛けるという掟破りな第四の壁を破る能力。

 通称デップーは、原作段階からこの第四の壁を破ると言われるメタ能力で、作品内世界を超えて好き放題にくっちゃべるのですが、本作ではさらにライアン・レイノルズのアドリブ力とコメディセンスが加わることで、極めて稀有な存在となっているのです。

 なかでも『X‐MEN』の人気キャラ・ウルヴァリン演じるヒュー・ジャックマンに対する愛憎は続編でも続き、ついに三作は中々のミラクルを引き起こすに至るのです。

 



 

 ライアン・レイノルズの本作への功績は主演時の熱演だけに留まりません。

 主演を兼ねながら行ったプロデューサー業での、人徳と人脈と、情熱というか執念が、本作成功の最大の要因であったような気がします。

 

 

 しかし、そこまでの経緯を語るのはちょっと大変です。

 

 

 以下、筆者がうっすら知っているところによれば、そもそもデッドプールとは、アメリカのマーベルのライバルコミック会社DCコミックスに登場する人気キャラ・デスストロークを、マーベル社がパ‥‥‥模‥‥‥対抗して作ったキャラなのだそうです。

 そのデスストロークは、雑に言えばマスクを被った隻眼の超強い傭兵みたいなヴィランでして、DCコミックスの実写版ドラマや映画でも、その姿を見ることができる人気キャラです。

 

 

 そのデスストロークを模して生み出されたデッドプールは、確かにどことなくビジュアル的にデスストロークと似ていますが、その第四の壁を破って読者に語り掛ける能力をはじめ、破天荒なキャラで人気となり、デッドプールも2000年ごろに実写化の話が持ち上がることとなります。

 

 これは当時のマーベルコミックス社が経営難に陥っており、自社が持つアメコミの実写映画化権をあちこちにの映画会社に売り払ったという事情もあるようです。

 

 しかし、すぐにはデップー映画化は実現せず、2002年のサム・ライミ版『スパイダーマン』以後のプチ・アメコミ実写化ブームにのって、2005年に再び映画化の機会が訪れます。

 それは、20世紀FOX社の映画『X‐MEN』シリーズの成功によって製作されたスピンオフ映画『ウルヴァリン:X‐MEN ZERO』にて、まだデッドプールとなる前の、傭兵時代のウェイド・ウィルソンを登場させるところから始まりました。

 

 なぜ『X‐MEN』絡みなのかというと、前述したマーベル社から20世紀FOX社に売られた映画化権の作品が『X‐MEN』と『デッドプール』だったからです。

 ゆえに完成した本作『デッドプール』内でも、映画『X‐NEN』のキャラ達が登場するのです(予算と相談しながら‥‥‥)。

 もしもマーベル社が、20世紀FOX以外の会社に映画化権を売っていたなら『スパイダーマン&デッドプール』や『デッドプールinアベンジャーズ』なんてものが出来ていたかもしれません‥‥‥。

 

 ともかく、今のMCU映画等では珍しくもない、単独映画の前に他映画でゲスト出演させるヒーローみたいなパターンのヤツで『デッドプール』単独映画の布石が他映画内で打たれ、『ウルヴァリン:X‐MEN ZERO』の評価次第で、単独映画『デッドプール』を撮ろうという皮算用があったであろうことは想像に難くありません。

 

 しかしながらあまりにもアレンジされた同映画中のウェイド・ウィルソンの評判は芳しく無く、その流れでの『デッドプール』映画化は、主演と監督は決まりつつも、足踏み状態となってしまうのです。

 

 ハリウッド映画業界ではこういった映画の企画が塩漬け状態となり放置されることは、割と珍しくない出来事なようです。 

 日本のマンガのハリウッド製実写映画化企画など、噂は聞いても一行に実現しない作品は多々あります。

 

 『デッドプール』もまたそういった幻の作品の内の一つとなると思われました。

 

 

 ‥‥‥ですが2014年、何処からか本作冒頭のデッドプールによる高架高速道路を舞台にしたアクションシーンのフルCGテスト映像がネットにリークされ話題となり、その評判を受け、ついに映画『デッドプール』の製作にGOサインがでるのです。

 因みにフルCG映像内でデッドプールの声を当てていたのは、プロデューサーを兼ねていたライアン・レイノルズ‥‥‥。

 はたしていったいどこの誰がこのテスト映像をリークさせたのでしょうね!?

 



 

 ともかく本作は、そういった数奇な運命を経て、ようやく公開に至った作品なわけです。

 そしてその影に、プロデューサーを兼ねた主演ライアン・レイノルズの尽力があったであろうこと本作でのアドリブ前回芝居をするデッドプールを見た後に知ると‥‥‥ライアン・レイノルズ‥‥‥尋常じゃ無ぇ‥‥‥と本文章読んで下さった方々も思うのではないでしょうか?

 

 ちなみに筆者が一番好きなのは『ミュージック、スタート!』のシーン。

 はたしてそれが如何なシチュエーションのシーンなのか、本作未見の方はどうかその目でご確認下さい。

 

 

 

 さてここでいつものトリビア(すでに今回はほぼトリビアな回でしたが)。

 ライアン・レイノルズによる実写映画版デッドプールは、何故か日本のサンリオの人気キャラ『キティちゃん』の大ファンという設定で、使ってる腕時計やリュックがキティちゃんグッズだったりします‥‥‥。

 

 

 

 ‥‥‥ってなわけで『デッドプール』もし未見ならオススメですぜ!