映画観賞……それは時に○○億円もの制作費をかけた作品を、だいたい2000円前後で楽しめるめっちゃコスパの良いエンタメ……。
 これは、当劇団きっての映画好きにして、殺陣と小道具美術担当の筆者が、コロナ禍からようやくかつての日常を取り戻しつつある現代社会いおいて、筆者の独断と偏見といい加減な知識と思い出を元に、徒然なるままに……徒然なるままにオススメの映画について書くコーナーである。











▼『映画を語れてと言われても』



 TODAY'S
 
第一五四回『あなたの人生の歌“ウォーク・ハード ロックへの階段”』




 タグ:コメディ ミュージシャン ジョン・C・ライリー ロック ブルース ジャズ 結婚 子供 人生 伝記 ノンフィクション
『ウォーク・ハード ロックへの階段』
2007年公開
監督:ジェイク・カスダン
製作:ジャド・アパトー他
脚本:ジャド・アパトー ジェイク・カスダン
音楽:マイケル・アンドリュース
出演:ジョン・C・ライリー クリステン・ウィグ 他

 あらすじ
 伝説のミュージシャン、デューイ・コックス(演:ジョン・C・ライリー)は、幼き日、あらゆる面で自分よりも才能のあった天才児の兄を、ナタを使ったチャンバラごっこ中に誤って死なせてしまい、それ以来、父にお前の方が死ねば良かったと罵られながら成長する。
 だがミュージシャンとしての才能があった彼は、10代半ばでクラスメイトと行ったバンド演奏で大人気となる。
 しかしデユーイの演奏は若者に悪影響を与えると大人たちからは大批判を受け、それを機にデューイは家を飛び出し、ガールフレンドと結婚し、子をもうけながら、人気黒人バンドが演奏するクラブで下働きをしつつ、ミュージシャンとして世に出る機会を狙う。
 そしてその目論見は功を奏し、運よく得たクラブでのピンチヒッターとしての演奏が、大手レコード会社の目に止まり、デューイはついにメジャーデビューを果たす。
 しかし、それは彼の波乱の音楽人生の始まりに過ぎなかった。
 
 繰り返すブレイクとスランプ、ドラッグと女性問題による数々の失敗の果てに、彼の人生に待ち受けているものとは!?







 さて今回は、皆さんご存知の、あの音楽史に残る世界的ミュージシャンにして、20世紀最高のエンタティナー、伝説の男デューイ・コックスの生涯を豪華キャストでお送りした名作コメディ(ここ重要)伝記映画回です!
 え、デューイ・コックス誰それ? ですって?
 ‥‥‥ナイスジョーク!!


※なお今回の本文章には若干のフィクションが含まれております。




 さて、そんな音楽史に残るミュージシャンの伝記映画を監督するという大役を任されたのはジェイク・カスダンというお方。
 数々のコメディ映画を撮ってきたお方で、日本で知られる有名作ではロビン・ウィリアムズ主演のファンタジーコメディアクション映画『ジュマンジ』‥‥‥のリメイクのドゥウェイン・ジョンソン、ジャック・ブラック主演『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』とその続編の『ジュマンジ/ネクスト・レベル』を監督し、大ヒットさせたお方です。
 つまりなかなかの凄腕監督ということ!


 そして製作を担当しつつ、監督と共に脚本を書いたのはジャド・アパトー。
 本コーナーでも紹介したウィル・フェレル主演作『俺たちニュースキャスター』『タラデガ・ナイト オーバルの狼』『俺たちステップ・ブラザース -義兄弟-』で製作を担当し、その他数々のコメディ映画で脚本したり監督したり製作を担当してきたアメリカコメディ映画業界の黒幕みたいなお方。
 近年はヒットしたアメリカ製のコメディ映画で、彼が関わって無い作品を数えた方が早いかも知れない程、数々のヒットコメディ映画に携わっているお方です。
 つまりジャド・アパトーが関わっている時点で、本作が一定以上の面白さがあることは保証されたも当然なのです!





 そんな監督と脚本の元、デューイ・コックス役に挑むという大役に挑戦したのはジョン・C・ライリー!
 1980年代から数え切れない程の映画に出演してきた個性派性格俳優です!
 見れば分かる通り、イケメンイケオジからは程遠いビジュアルの、むさくてだらしない体つきのおじさん俳優ですが、その人の良さそうかつ極めて個性的な顔立ちと、あらゆジャンルの映画に馴染むキャラと演技力で、仕事が絶えないおっさんです。
 本コーナーでも紹介した作品で言えば前述した『タラデガ・ナイト オーバルの狼』『俺たちステップ・ブラザース -義兄弟-』や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』や『シュガーラッシュ』で主人公ラルフの声をあてただけでなく、有名児童小説の実写映画『ダレン・ジャン』や、トム・クルーズ主演の『デイズオブサンダー』や『マグノリア』や、今も続くレジェンダリー製怪獣映画シリーズの『キングコング:髑髏島の巨神』などなど、コメディだけでなく、アクション、SF、ヒューマンドラマなどなどあらゆるジャンルの映画で活躍し続けてきた大ベテラン俳優さんです。
 そんな彼が、本作では徹底した役作りの元、伝説のミュージシャンデューイ・コックスを演じるのだから見逃せません!




 共演は、デューイ・コックスの最初の妻イーデス役にクリステン・ウィグ。
 アメリカの長寿人気お笑い番組『サタデーナイトライブ』出身の女性コメディアンで本コーナーでも紹介した『オデッセイ』や『ヒックとドラゴン(声の出演)』の他、女性版『ゴーストバスターズ(2016)』で主演し、『ワンダーウーマン1984』ではワンダーウーマンと戦うヴィランを見事に演じていたチャーミングなお姉さん女優です。



 さらに本作ではジャド・アパトー組とでも言うべき、数々の映画で活躍してきたコメディア俳優がゲスト出演しています。
『スクールオブロック』や『カンフーパンダ』のジャック・ブラック。
『アントマン』のポール・ラッド。
『スーパーバッド』や『ウルフオブ・ウォールストリート』のジョナ・ヒル。
『ギャラクシークエスト』や『ダイ・ハード4.0』のジャスティン・ロング。
『天才マックスの世界』のジェイソン・シュワルツマン。
『ゴーストバスターズ』のイゴン役の(故)ハロルド・ライミスなどなどなど、知ってる人は知っている豪華な人達。


 本作はそういったスタッフ・キャストを揃えることで、あのデューイ・コックスの伝記映画化に挑戦し、そして実に見事な見事なコメディ映画にしているのです!


 そんな本作の存在を筆者が知ったのは、以前本コーナーで紹介したウィル・フェレル主演映画のDVDの特典にあった予告編を見たからです。
 つまり筆者が存在を知った段階でDVDスルー映画、日本では劇場未公開作品でした。
 その予告に魅かれ筆者は本作を観賞し、感動したわけですが‥‥‥その際に最初に抱いた感想は二つ‥‥‥。
 一つめは‥‥‥。


 『この映画、だいたいウィル・フェレルの出ないウィル・フェレル映画だな!』


 ‥‥‥という極めて理不尽な感想だったのですが‥‥‥どうかお許し下さい。
 スタッフ・キャスト共に、これまで本コーナーで紹介し続けてきた『俺たちニュースキャスター』『タラデガ・ナイト オーバルの狼』『俺たちステップ・ブラザース -義兄弟-』と笑いのテイストや無茶苦茶さ加減のテイストが似ている気がするのです。
 ゆえに筆者は本作を『ウィル・フェレルの出ないウィル・フェレル映画』と例えたわけですが、言い換えれば、本作はこれまで紹介してきた数々のウィル・フェレル映画と同等の面白さがあると言えるのです。
 今回ウィル・フェレル出ませんけどね!
 つまり本作ではこれまでここで紹介したウィル・フェレル映画と同等のキレッキレのコメディパートが見れるということ!
 その切れ味は、キレッキレ過ぎて怖くなるレベルです。
 そしてウィル・フェレルが出なくともジョン・C・ライリーが主演しているだけで、充分強烈だと言いたいのです!
 すでに何枚か貼られている本作の画像の時点で、もう充分目に優しく無いかもしれません。
 そのジョン・C・ライリーの身体をはった演技の数々!
 まず登場するなり15歳のデューイ・コックスを堂々と演じているところに驚かされます。大河ドラマの序盤のようです!
 しかも本作はミュージシャンを描いた作品であるだけに、数々の名曲の歌声まで披露してくれます!
 ジョン・C・ライリーは歌も上手いしギターも弾けるのです。

 ちなみに、筆者が一番好きなシーンは、新種のドラッグでハイテンションになったデューイが、半裸で街に飛び出して、素手で自動車をひっくり返すシーン。

 そんな油ギトギトの全部乗せ特盛ラーメンのような濃さが、本作の魅力だと思うのです。

 





 そしてもう一つは、本作があのデューイ・コックスの生涯を描いた伝記モノとして、また音楽映画として、普通に素晴らしいからです。

 デューイ・コックスが生きた1930年代から2000年代までのアメリカの社会、ポップカルチャー、ファッションなどなどをヴィジュアル的に綿密に再現しつつ、ブルースとカントリーミュージックを聞き、奏でながら成長し、エルビス・プレスリーやビートルズなどの有名ミュージシャンと邂逅し、ロックにハマり、レゲエに被れ、ヘビメタに傾倒し、あらゆるドラッグに溺れて生きるデューイ・コックスの姿を良いところも悪いところも余すところなく描ききったところが響くのです。
 その時代を駆け抜ける姿は、音楽世界のフォレスト・ガンプのよう。
 そして留まることなき時代の流れに、やがて置いていかれ、引退状態となり、余生を送っていたデューイ・コックスの元に訪れるある奇跡に、筆者は思わず涙腺バルブが緩んでしまったりなんかしちゃったりするのです。
 人生とは、良い思い出だけを数珠のように繋いで生きられるわけではありません。
 デューイ・コックスの人生もまた、ヒットミュージシャンとしての栄光と共に、当人の愚かさだけが原因ではない理不尽もまた多々襲い掛かってきます。
 そんな悲喜こもごもの人生であっても、最期の最後に本作のような締めくくりを迎えられるならば、悪くないな‥‥‥そう思えたのです。
 ‥‥‥と同時に本作のあらすじって、ほぼほぼ『ボ〇ミア○○プソデ〇ー』じゃね? ‥‥‥って思ったりなんかしちゃったりして‥‥‥。

 はたして、デューイ・コックスが数奇な人生の果てに迎えるささやかな奇跡とは? 本作未見の方は、どうかその目でご確認下さい!






 さてここでいつものトリビア。

 色々と書いてきましたが、本作は『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』というホアキン・フェニックスとリース・ウィザースプーン主演映画のパロディ作品。

 監督のジェイク・カスダンは、『スターウォーズEPⅤ:帝国の逆襲』『スターウォーズEPⅥジェダイの帰還』や『レイダース:失われたアーク』等々の脚本を書き、『ドリームキャッチャー』等を監督したローレンス・カスダンの息子。

 本作のエンドロール後のはおまけ映像として、実際のデューイ・コックスの映像が見れますよ!
 もう神の作為を感じるくらいにジョン・C・ライリーそっくり!!!



※なお、繰り返しになりますが、今回の本文章には若干のフィクションが含まれております。



 ってなわけで『ウォーク・ハード ロックへの階段』もし未見でしたらオススメですぜ!!