映画観賞……それは時に○○億円もの制作費をかけた作品を、だいたい2000円前後で楽しめるめっちゃコスパの良いエンタメ……。
 これは、当劇団きっての映画好きにして、殺陣と小道具美術担当の筆者が、コロナ禍からようやくかつての日常を取り戻しつつある現代社会いおいて、筆者の独断と偏見といい加減な知識と思い出を元に、徒然なるままに……徒然なるままにオススメの映画について書くコーナーである。











▼『映画を語れてと言われても』




 TODAY'S
 
第一五三回『ケンカをするなら他所でやれ!ベイイズム大爆発!戦え!“トランスフォーマー”』




 タグ:トランスフォーマー 変形 玩具 異星人 戦争 アクション 爆発 アニメ マイケル・ベイ 日本 ティーンエイジャー 青春 自動車 VFX 米軍 実写化 ファーストコンタクト 家族


『トランスフォーマー』
2007年公開
監督:マイケル・ベイ
脚本:アレックス・カーツマン ロベルト・オーチー
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ他
音楽:スティーヴ・ジャブロンスキー
出演:シャイア・ラブーフ ミーガン・フォックス ジョシュ・デュアメル タイリース・ギブソン ケヴィン・ダン ジュリー・ホワイト ジョン・タトゥーロ ジョン・ヴォイト他


 あらすじ
 はるか太古の昔‥‥‥宇宙の片隅で、あらゆる物に命を与える聖遺物、オールスパークによって生まれた機械生命体が住まう星サイバトロンでは、あらゆる乗り物や機械類に変形・擬態できるトランスフォーマーと呼ばれる種族が、その聖遺物オールスパークを巡って、メガトロン率いる悪の勢力ディセプティコンと、オプティマス率いる善なる組織オートボッツに分かれ、激しい戦争を繰り広げていた。
 そしてその戦争の果てにサイバトロン星は荒廃し、さらに聖遺物オールスパークが宇宙の何処かに消え去ってしまう。
 オートボッツとディセプティコンは、再びサイバトロン星を復興すべく、このオールスパークを探し求め宇宙へと飛び立ち、長い長い旅の末に、ついにとある星にたどり着くのであった。



 そして現在‥‥‥地球は中東カタールの米軍基地に、撃墜されたはずの米軍ヘリが着陸してきたかと思うと、突然人型ロボットに変形し、基地を攻撃しはじめる。
 その攻撃は、基地の米軍データベースに強制アクセスするためであった。
 辛うじて生き延びた米軍兵士のレノックス(演:ジョッシュ・デュアメル)と仲間たちは、追撃してくる謎のロボットと交戦しながら、この事実を本国に伝えようと試みる。


 その一方、アメリカ・ロサンゼルスでは、高校生の少年サム(演:シャイア・ラブーフ)が、ついに念願だった自家用車の購入を達成する。
 予算の都合で買えたのは中古でボロボロのイエローカラーのカマロであったが、このカマロのお蔭でサムは憧れていた同級生の美少女ミカエラ(演:ミーガン・フォックス)との急接近に成功する。
 しかしその直後のある日、このカマロが無人で勝手に動き出しいることに気づいたサムは、カマロを追いかけている最中に、突然衝突してきたパトカーから変形した巨大人型ロボに襲われる。
 その窮地に現れサムを救ったのは、無人で動くサムのカマロであり、そのカマロもまた巨大人型ロボに変形すると、サムを襲った元パトカーだったロボを激しい戦闘のうえに倒すのであった。


 サムは偶然そこに居合わせ巻き込まれたミカエラと共に、自分を守ったカマロ変形ロボに誘導されるまま、彼の仲間のロボに引きあわされる。
 宇宙より飛来し、サムの元に様々な種類の自動車の姿であらわれ、人型ロボへと変形した彼らは、オールスパークを求めて地球にやってきたオートボッツのオプティマスとその仲間たちであった。

 オプティマスによれば、サムの曾祖父であり冒険家だったアーチボルトが、その昔南極探検中に、地球に落ちていたオールスパークを追って地球を訪れたものの、事故で南極に墜落し、氷漬けとなったメガトロンを発見し、その際にアーチボルトの眼鏡に、オールスパーク位置を示すデータがメガトロンによって偶然焼きつけられたのだという。
 そして現代となり、サムが自動車購入予算確保の為に、曾祖父アーチボルトの遺品の眼鏡をネットオークションにかけた結果、地球に来ていたディセプティコンにサムと眼鏡の存在が知られ、狙われることとなってしまったのだ。
 サムが購入した中古のカマロは、オプティマスによってサムのボディーガードとして派遣されていたオートボッツの戦士バンブルビーだったのだ。

 サム達がディセプティコンとオートボッツとの戦いに巻き込まれないようする為には、件の眼鏡を速やかにオートボッツに渡すしかない。
 かくして眼鏡があるサムの自宅に向かうオートボッツ一行。
 だがサムの自宅には、トランスフォーマーの存在を感知し、独自に追いかけてたアメリカの秘密組織もまた迫っていた。


 はたしてオートボッツとディセプティコンの戦いの行方は!?
 サム達の運命やいかに!?








 さて今回は2007年に公開され、その後五作目までの続編と、二本のリブート作が撮られることとなった人気シリーズにして誰もが、ンな無茶な! と思った人気アニメからの実写映画化を見事に成した映画史に残るかもしれない名作映画回です!







 監督は爆発大好きマイケル・ベイ!
 ウィル・スミス&マーティン・ローレンス主演の刑事アクション映画『バッドボーイズ』や、ブルース・ウィリスとベン・アフレックが隕石から地球を守る『アルアゲドン』、ショーン・コネリーとニコラス・ケイジが占拠されたアルカトラズ刑務所に潜入する『ザ・ロック』などなどの監督で有名なお方。

 そしてそう! 前回の『ミステリーメン』の最後で出したクイズの答えとなる監督でもあります。
 なんで出てるの!? マイケル・ベイ!

 その監督としての特徴は、ともかく大爆発&大爆発&カーチェイス&大爆発! ‥‥‥あとモブにいたるまでやたらハイテンションでまくしたてるキャラ達が出てくる‥‥‥などなどです!
 そんな脳みその中まで爆発してるような監督が映画化に臨んだのは、自動車から巨大人型ロボに変形するロボットの活躍を描いたアニメの実写化!
 映画史でも稀に見る挑戦です!



 その前代未聞の挑戦的映画の製作総指揮をつとめたのはご存知スティーブン・スピルバーグ!
 もう彼についての説明は割愛しますが、スピルバーグ監督の代表作といえば『ET』そして『宇宙戦争』!!
 ティーンエイジャーの主人公サムと、遠い宇宙からきたトランスフォーマーとの出会いを描いた作品の製作総指揮を務めるのはむべなるかなといった感じです!


 脚本はアレックス・カーツマンとロベルト・オーチーというお方。
 本コーナーで言えば『スタートレック(2009)』などなどの映画をコンビで担当してきた売れっ子脚本家です。


 音楽はスティーヴ・ジャブロンスキー。
 本コーナーでも紹介した『バトルシップ』の他、『L.A. ギャング ストーリー』『ローン・サバイバー』などなどの大作映画の音楽を担ってきたお方。
 本作ではめっち重厚でケレン味のあるBGMを奏でております。



 そんなスタッフで作られた本作の出演者に選ばれたのは‥‥‥。
 主人公の少年サムにシャイア・ラブーフ。
 本コーナーで言えば『アイ.ロボット』でウィル・スミスにウザ絡みしていたチャラい少年役や、キアヌ・リーヴス主演『コンスタンティン』で、キアヌ演じる主人公にあこがれる彼の専属運転手を演じていたり、『インディジョーンズ』四作目でインディの息子を演じたりした、子役出身の若手(当時の)俳優です。
 本作では敵味方の巨大ロボがド突き合う中を、見事な全力疾走する姿を見せてくれます。
 あとどこからが脚本通りで、どこからがアドリブなのか分からない見事なしゃべくりを見せてくれます。


 そしてそのサムの思い人となるクラスメイトのミカエラを演じるのはミーガン・フォックス。
 美人と言うかゴージャスな、いかにもマイケル・ベイ監督が選びそうな(偏見)女優さんで、本作後は実写版『ミュータント・ニンジャ・タートルズ』等に出演しております。

 また悪のトランスフォーマーでるディセプティコンと戦う米軍側の中心人物のレノックス役にジョッシュ・デュアメル。
 本作後も数々の映画で主演出演するイケメン俳優です。
 本作では生身でディセプティコンと戦う勇敢な米兵を演じております。

 そのレノックスの相棒のエップス役にタイリース・ギブソン
 『ワイルドスピード』シリーズへ二作目より参加し、お笑いキャラのローマン役が有名かもしれません
 本作でも激しい戦闘の最中に丁度良いボケを挟んでくれます。


 さらにアメリカ政府が結成してした極秘のトランスフォーマー追跡組織セクター7のエージェント・シモンズ役に名優ジョン・タトゥーロ。
 本コーナーでも紹介し、ボウリング玉を磨く姿が有名な『ビッグ・リボウスキ』の変態ボウラー役や、同コーエン兄弟監督作の『オー・ブラザー!』や、近年では『THE BATMAN-ザ・バットマン-』で、ゴッサムシティを牛耳るマフィアのボス、ファルコーネを演じていたオッチャン俳優です
 本作でも極めて挙動不審なエージェントを演じております。



 その他、名優ジョン・ボイトや、あらゆる映画で見かける俳優ケヴィン・ダンやアンソニー・アンダーソンや(故)バーニー・マックなどなど、とっても個性的かつ豪華な出演者たち!
 本作は主人公サムだけでなく、大勢の立ったキャラが活躍する半群像劇としても面白いのです。


 

 そんなスタッフ・キャストで作られた本作は、前述したように人気アニメ『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』の実写映画化です。
 その『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』とは、日本のオモチャメーカー〈タカラ〉が1980年代に日本で発売していた〈ダイアクロン〉や〈ミクロマン〉といった自動車等の乗り物からロボットに変形するオモチャを、業務提携したアメリカのオモチャメーカーハズブロ社から、『トランスフォーマー』シリーズとし、オモチャの発売と同時にアニメ化し放送したTVアニメシリーズです。
 根幹的なあらすじというか設定は前述したあらすじと同じで、サイバトロン星から来た善と悪の可変ロボット軍団が、地球でドンパチする話です。
 この作品は、脚本と画コンテはアメリカのスタッフが、映像制作を日本のアニメスタジオが担当して制作されるという日米合作であり、放送の結果、オモチャと共に大ヒット。
 2024年現在にいたるまで、オモチャと共に新作アニメが作られ続けることとなります。

 筆者も幼き頃は、このアニメとオモチャに夢中になっていたものです。




 本映画は、このアニメを2000年代後半のVFX技術を駆使して実写映画化に挑戦したものなのです。
 筆者もお台場で行われたジャパンプレミアで初観賞し、ドハマリしたものです。

 ですが、見る前まで筆者は、2024年の今でこそ多少珍しく無くなったとはいえ、2007年の段階で、あらすじに書いたような設定の物語を実写映画で作ることは、到底不可能とは思っていました。
 自動車サイズという絶妙な大きさのロボが大暴れする実写アクション映画など、過去に例が無かったからです。
 本作を見るまで、どんな映像になるのかまったく想像できなかったのです。

 無理矢理過去に遡って類似作品を探すならば、本コーナーでも紹介した『ロボジョックス』や、日本映画の『ガンヘッド』など、VFXどころか模型特撮の時代の作品になってしまいます。

 すでに『ジュラシックパーク』のVFX技術革命によって、CGによる映画表現の地平が開けたとはいえ、本作がいかに挑戦的だったのかは、言い尽くせぬところがあると思います。



 しかして、それを可能にしたのが製作総指揮のスティーブン・スピルバーグとマイケル・ベイ監督なわけです。
 本作が成功し特大ヒットとった理由の根っこは、この二人にあったと思います。
 『ジュラシックパーク』を撮ったスピルバーグはもちろん、『アルマゲドン』や『パールハーバー』等の監督でVFX技術を駆使した作品を撮り、『バッドボーイズ』等でカーチェイスも撮りまくったマイケル・ベイ監督だからこそ、本作の試みは成功したと思うのです。


 ではいかにしてこの二人は本作を成功に導いたのでしょうか?
 理由は多々あるでしょうが、今回はその内の三つについて語りたいと思います。



 一つは本作の真の主役たるトランスフォーマー達のデザインの勝利だと思います。
 
 アニメに登場するトランスフォーマー達は、正に1980年代のアニメのロボとでも言うべき箱と箱を繋げたような見た目のロボ達なのですが、本作ではそれの実写化に伴い、オリジナルデザインの特徴をほんの僅か残しつつ、大胆にアレンジしたそれまで見たことも無いデザインに変えたのです。
 正直、主役たるオプティマスプライム以外のトランスフォーマー達にはオリジナルの面影は皆無といって良いでしょう。
 しかし、カラーリングと言動によって、なんとなくオリジナルのどのキャラかは観客に分かるようにはなっています。
 そしてその上でトランスフォーマー達のデザインは、様々な体格の機械の骨組みの上に、擬態した乗り物の表面カウルで作られた鎧を着たかのような斬新なデザインとなっているのです。
 このデザインは既存のロボとは全く異なったデザインラインであると同時に、それによって間違っても地球製ロボではない、別の星の別の文明の、機械っぽい見た目の異種生命体であることが分かるようになっているのです。
 そして無数のパーツから出来上がった全く見たことも無いロボデザインであることが、実写映像で見た時のリアリティに大いに貢献していると思うのです。
 
 一つは見たことのデザインなので、巨大ロボの映像を見た時に、『そういうものかもしれない』と思わせる効果があること。
 無数のパーツから出来上がっていることで、巨大感が演出できることです。

 本作はこのデザイン段階でのこの試みにより、観客に巨大ロボが暴れている映像を納得させることに成功しているのではないでしょうか?



 そしてもう一つの勝因は、おそろしくザックリと言えば‥‥‥マイケル・ベイのテイストに『トランスフォーマー』を強引に引き寄せたことです。
 本作は間違いなく実写版『トランスフォーマー』なのですが、それと同等以上にマイケル・ベイ監督作なのです!
 それはつまり、大爆発&大爆発&カーチェイス&大爆発! ‥‥‥あと、中古車ディーラーのおっちゃん等のモブにいたるまで、やたらハイテンションでジョークをまくしたてるキャラ達が出てくる‥‥‥あとギラギラした照明や太陽光が大好き!
 汗だくで茫然とするキャラの周りをやや煽りのカメラアングルでグルグルと回って映す映像が大好き‥‥‥などなどということです!
 言い方を変えれば、それらのマイケル・ベイ監督のテイストと『トランスフォーマー』とが、メチャメチャ相性が良かったと言えるのかもしれません。



 そして最後の一つは、本作をティーンエイジャーの青春映画にしたことです。
 例えば本コーナーでも紹介した『レディプレイヤーワン』『ヒックとドラゴン』『待ちきれなくて』『スコット・ピルグリムVS.邪悪な元彼軍団』や『バックトゥザフューチャー』のように、ティーンエイジャーの一人の少年が、想い人のハートを掴むため、家族とのスレ違いに苦労したりしながら右往左往してるところで、とんでもない出会いと事件に巻き込まれるパターンのアレです。
 オリジナルのTVアニメ『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』は、トランスフォーマー達が主役であり、人間の出番は脇役の域をでなかったのですが、本作はそんなティーンエイジャーの少年の物語とすることで、オリジナルTVアニメを知らない幅広い層の観客の心に響いたのではないでしょうか?

 ちなみに筆者が一番好きなシーンは、主人公サムの自宅へトランスフォーマー達が押しかけてきたのを、何も知らない家族にひた隠しにするシーン。
 これはベイ監督らしさとトランスフォーマーらしさと映像と役者の熱演が合わさった見事なシーンなのです。





 さてここでいつものトリビア。
 本作中盤で、夜の地球に降り立ったトランスフォーマーを自宅で目撃してしまい、歯の妖精と勘違いしてしまう幼女を演じている子役は双子。
 片方が何かあっても、もう一人で撮れるからと選ばれた子役で、案の定もう一人の双子の子は寝ちゃってたんだそうな。
 ハリウッドはもちろん、子役業界では双子はよく活躍してるらしいですぜ。

 本作のラストバトルで、ビルから落下したメガトロンに指で弾き飛ばされるモブ市民を演じていたのはマイケル・ベイ監督ご本人。




 ‥‥‥ってなわけで『トランスフォーマー』もし未見でしたらオススメですぜ!!