映画観賞……それは時に○○億円もの制作費をかけた作品を、だいたい2000円前後で楽しめるめっちゃコスパの良いエンタメ……。
 これは、当劇団きっての映画好きにして、殺陣と小道具美術担当の筆者が、コロナ禍からようやくかつての日常を取り戻しつつある現代社会いおいて、筆者の独断と偏見といい加減な知識と思い出を元に、徒然なるままに……徒然なるままにオススメの映画について書くコーナーである。











▼『映画を語れてと言われても』




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第一五二回『ベン・スティラーの怒りが頂点に達した時!彼はMr.フューリアスへと瞬転するのだ!“ミステリー・メン”』



 タグ:ヴィジランテ ヒーロー アクション SF コメディ ベン・スティラー

『ミステリー・メン』
1999年公開
監督:キンカ・ユーシャー
原作:ボブ・バーデン
音楽:スティーヴン・ウォーベック
出演:ベン・スティラー ハンク・アザリア ウィリアム・H・メイシー グレッグ・キニア ジェフリー・ラッシュ クレア・フォーラニ


 あらすじ
 巨大犯罪都市チャンピオンシティでは、頻発する数々の凶悪犯罪に対し、一部の志ある市民がヴィジランテヒーローとなって立ち向かい活躍していた。

 怒ることで超パワーを発揮する(自称)男フューリアス(演:ベン・スティラー)と、フォーク投げの達人ブルーラジャ(演:ハンク・アザリア)、さらにシャベルを武器に戦う中年親父シャベラー(演:ウィリアム・H・メイシー)の三人の自称ヴィジランテヒーローの男たちは、今日もチームを組んで老人ホームを襲った強盗団に立ち向かったが、まったく役に立たず、颯爽と現れた人気実力ナンバーワンのヒーロー、キャプテン・アメージング(演:グレッグ・ギニア)によって手柄を奪われる。

 それでも憧れのヒーローに出会えて喜ぶ三人。
 
 一方、キャプテン・アメージングの方は悪党共を倒したものの心穏やかではなかった。
 彼は数々の極悪ヴィランを倒すことで、数々の大企業からスポンサー契約を結び大金を得ていたのだが、主だったヴィランを倒してしまい、もう戦って倒す相手がいなくなってしまい、スポンサー契約も打ち切られてしまいそうになっていたのだ。

 そこで一計を案じたキャプテンは、かつて倒し、今は精神病院に収容されている最恐の極悪ヴィラン、カサノバ・フランケンシュタイン(演:ジェフリー・ラッシュ)を開放し、再び自分と戦わせようと画策する。
 キャプテン・アメージングは自分の世を忍ぶ仮の姿、億万長者のランス・ハントの権力を駆使し、無事カサノバを世に送り出すことに成功する。
 だが、そのカサノバによってキャプテン・アメージングはあっさりと彼の隠れ家に捕まえられてしまう。

 邪魔する者がいなくなったカサノバは、キャプテン・アメージングから息をひそめて隠れていた街の悪党共を集め、さっそく巨大な陰謀を企てはじめる。
 しかし、偶然にもその事態に気づいた者がいた。
 フューリアス達ポンコツヴィジランテヒーロー三人だ。
 だがカサノバ達に自分達三人では叶うわけがないと判断したフューリアス達は、新たなヒーローを募集し、この巨悪に立ち向かわんとする。

 かくして集められる新たなポンコツヒーロー達。

 はたしてフューリアス達はカサノバの陰謀を阻止することができるのであろうか!!?








 さて今回は皆さんお待ちかねの久々のベン・スティラー回にして、ポンコツヴィジランテヒーローが、力を結集して巨悪に挑むアクションヒーローコメディ映画回です!


 監督はキンカ・ユーシャーというお人。
 残念ながら本文章執筆に際してサラッと調べた限りでは、同監督について分かっている情報は以上となります。

 脚本はニール・カスバート。
 残念ながら本文章執筆に際してサラッと調べた限りでは、同監督について分かっている情報は以上となります。

 しかしながら本作は、ボブ・バーデンという人が、『スーパーマン』や『バットマン』でおなじみのDC社から出したアメコミが原作なのだそうです。
 たしかにアメコミっぽい世界観です!


 音楽はスティーヴン・ウォーベック。
 ニコラス・ケイジ主演の『コレリ大尉のマンドリン』の音楽を担当したお人。



 ‥‥‥かように、本作のスタッフは音楽を除き少々ネームバリューの無いお方と思えるかもしれません、しかしキャストの方は割と豪華です。


 まず主演はなんといっても我らがベン・スティラー!!
 稀代スパイモデルアクションコメディの傑作『ズーランダー』や、RDJやジャックブラックと組んで撮ったトンデモベトナム戦争映画制作コメディ映画『トロピックサンダー』で主演しただけでなく監督までこなしたお人です。
 世間的には『ナイトミュージアム』シリーズの主演で有名かもしれません。
 何気に映画デビュー二作目で、いきなりスピルバーグ監督作の『太陽の帝国』にもチョイ役で出演してたりします。
 本作では怒りさえすれば怒ることで超パワーを発揮できる(自称)ヒーローを、いつものベン・スティラーらしいめんどくささで演じております。


 そのフューリアスの仲間の一人、ちっとも青くない衣装のフォーク投げの名人ブルーラジャ(青き王子)を演じるのはハンク・アザリア。
 1998年公開のローランド・エメリッ監督版『GODZILLA』で、ゴジラ撮影に挑むカメラマン役が印象深い俳優さんです。
 その他、本コーナーでも紹介したアル・パチーノ、ロバート・デ・ニーロ共演の刑事アクション『ヒート』など、数々の映画で名脇役を演じております。


 そしてもう一人のフューリアスの仲間、シャベル使いのシャベラーを演じるは、名優ウィリアム・H・メイシー。
 コーエン兄弟監督作『ファーゴで、』妻の殺害をドジな殺し屋に依頼してエラいめに会うドジな夫を演じたことで有名な他、本コーナーでも紹介した『エアフォース・ワン』や、我が子を探す為に無茶苦茶やる父を演じた『ジュラシックパークⅢ』や『セルラー』などなど、数々の映画で名脇役を演じたお方です。
 筆者的には名作医療ドラマ『ER』で命外科医のモーゲンスタン先生を演じていたのが印象的。
 ともかく個性的な顔のだちのお方で、雰囲気全体で善良さと頼りなさを醸し出している気がする筆者の推し俳優が一人です。



 そんなチャンピオンシティで、主だった悪党を全て退治してしまい、保身の為に自ら悪党を世に解き放つ自己ちゅうナンバーワンヒーロー、キャプテン・アメージングを演じているのはグレッグ・ギニア。
『リトル・ミス・サンシャイン』でのパパ役なぢ、数々の映画で顔を見る名脇役俳優が一人です。




 そしてそんなキャプテン・アメージングが保身の為に開放した結果、チャンピオンシティを重大な危機に陥れるヴィラン、カサノバ・フランケンシュタインを演じるのは名優ジェフリー・ラッシュ。
 世間では『パイレーツオブカリビアン』でキャプテン・バルボッサを演じた人として有名かもしれません。
 その他、本コーナーでも紹介した『キング・オブ・エジプト』で太陽神ラーを演じたり、アカデミー賞作品『英国王のスピーチ』で、英国王にスピーチを伝授する準主役たるキャラを演じたお方。



 さらに、なんやかんやあって本作のヒロイン枠となる、フューリアス達行きつけのダイナーのウェイトレスのモニカを演じるのはクレア・フォーラニ。
 1998年公開のブラッド・ピット主演映画『ジョーブラックをよろしく』で、ブラピの相手役に選ばれるほどの超べっぴんさんです。


 総じてこのように、本作はキャストはこの映画に出ても良いの? とちょっと思っちゃう程に割と豪華っちゃ豪華。




 そんなスタッフ・キャストでお送りする本作の存在を、いったいどのくらいの方が存在を知っているでしょうか?
 そう多くは無いでしょう。何故なら日本劇場未公開作品であり、軽く調べた限りでは、制作費の半分程しか収益がなかったいわゆる‥‥いえまごうこと無き大コケ映画なのですから。

 しかし! それでも本作は、作った人達の儲け問題関係無しに、私達がただ見る分には充分楽しい一本だと思うのです!
 コケた分だけ映像もそこそこ豪華ですしね!




 本作は、無理矢理ジャンルわけをするならば、いわゆるうヴィジランテヒーローモノとでも言えそうな作品群のうちの一本です。
 ヴィジランテヒーローとは、以前本コーナーでも紹介した『レゴバットマン・ザ・ムービー』のバットマンなどのように、特に超常の特殊能力があるわけでも無く、人間の出来る範囲の努力で、警察などの公権力とあ無関係に自警活動してる人達のことです。
 こういったヴィジランテヒーローの作品では『ウォッチメン』や『キックアス』などが有名です。
 また日本のアニメ『タイガー&バニー』は、特殊能力に目覚めた一般人が、企業のスポンサーの元、ヴィジランテヒーローとなって、同じく特殊能力に目覚めたヴィランと戦うという、『Xメン』と『ウォッチメン』を混ぜたような作品もあります。
 本作のヴィジランテヒーローも、一部特殊能力持ちも登場しますが、基本的に趣味で勝手にヒーロー活動をやっている人々です。
 本作はその、誰に頼まれたわけでも無く、己の正義感と才覚と趣味の問題から、自ら進んで勝手にヒーロー活動をはじめた人らのお話なのです。
 そのポンコツでダメダメな個性豊かさが素晴らしいのです。

 すでに主役三人の〈怒ると怪力〉〈フォーク投げ〉〈シャベル使い〉のヒーローパワー(特技ともいう)の段階で、だいぶツッコミどころが発生します。

 〈怒ると怪力〉‥‥‥程度の差はあれ誰だってそうだよ。
 〈フォーク投げ〉‥‥‥ナイフ投げだと殺意高すぎだからなそうな。
 〈シャベル使い〉‥‥‥個性を出したいだけなんじゃ‥‥‥?


 このような自称ヒーローパワー(特技ともいう)ごときで、ルール無用の悪党どもに叶う分けも無く、フューリアス達はまるで『七人の侍』の村人のごとく、仲間集めを始めるのですが、それであつまった新たなヒーローもまた中々の曲者ぞろい。


 新たに加わったメンバーは‥‥‥。

 透明になれるぞ! ただし誰もみていない時だけ!な〈インビジブル・ボーイ〉
 狙った敵に百発百中で命中させられるぞ! オナラをな! な〈スプリーン〉
 父の頭蓋骨と魂が納まったボーリング球を操るぞ! な〈ボウラー〉など! ‥‥‥パーティバランスに難ありな仲間たち!

 う~む‥‥‥これはなかなか厳しい戦いになりそうな予感。
 しかし、そのポンコツ極まりない連中が、知恵と勇気と家族の絆と友情と運の良さとご都合で、様々な窮地を脱してゆくところがなかなかどうして燃えるのです。
 ちなみに筆者が一番好きなシーンは、死を覚悟したシャベラーが、健康に悪いんでそれまで我慢していたけど、大好きなタマゴサラダを作るシーン‥‥‥。




 知らないスタッフばかりの本作ですが、なかなかの予算を投じて作られたセットや予算やCGで、映像面もなかなか豪華!
 マイナーですけど見る価値ある一本なのです!



 さてここでいつものトリビア。
 本作にはマニアックなカメオ出演が色々いるらしいのですが、筆者でも見覚えのある人が、カサノバ・フランケンシュタインがアジトに呼び寄せた悪党連中の中に混じっています。
 その人は俳優ではなく監督なのに何故か顔出し出演しているのですが‥‥‥さて皆さんはどなたか分かりますか?
 正解は次回紹介する映画の監督です!!






 ‥‥‥ってなわけで『ミステリー・メン』もし未見でしたらオススメですぜ!!