映画観賞……それは時に○○億円もの制作費をかけた作品を、だいたい2000円前後で楽しめるめっちゃコスパの良いエンタメ……。
 これは、当劇団きっての映画好きにして、殺陣と小道具美術担当の筆者が、コロナ禍からようやくかつての日常を取り戻しつつある現代社会いおいて、筆者の独断と偏見といい加減な知識と思い出を元に、徒然なるままに……徒然なるままにオススメの映画について書くコーナーである。











▼『映画を語れてと言われても』


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第一五一回『猫がいる‥‥‥サム・ロックウェる‥‥‥“ARGYLLE/アーガイル”』





 タグ:アクション スパイ 冒険 作家 フィクション 小説 

『ARGYLLE/アーガイル』
2024年公開
監督:マシュー・ボーン
音楽:ローン・バルフ
出演:ブライス・ダラス・ハワード サム・ロックウェル ヘンリー・カヴィル ブライアン・クランストン キャサリン・オハラ デュア・リパ ジョン・シナ サミュエル・L・ジャクソン他



あらすじ
 ベストセラースパイアクション小説『アーガイル』の作者エリー(演:ブライス・ダラス・ハワード)は、主人公の凄腕スパイ・アーガイル(演:ヘンリー・カヴィル)が、相棒のワイアット(演:ジョン・シナ)と共に追いかけていた敵スパイ組織のボスが、実は自分が指令を受けていた組織のボスと同一人物であったことを知ったところで、次巻に続く‥‥‥と書き綴った『アーガイル』第四巻まで発売し、さらに続く第五巻を執筆中であったが、最終章がどうしても思い浮かばず、いつも意見を聞いている母に会う為、愛猫のアルフィーと共に、母の住まう実家に向かうこととする。

 そこまでの鉄道移動の車中、エリーの向いの席に座ってきた小汚い男ワイルド(演:サム・ロックウェル)に、突然「俺はスパイで君は狙われてるから指示に従え」と警告されたエリーは、その警告通りに突如襲い掛かってきた幾人もの乗客たちから、大立ち回りを繰り広げるワイルドによって守られながら、移動中の鉄道車両から攫われるようにして脱出させられる。

 ワイルドの隠れ家で目覚めたエリーがワイルドへ尋ねたところによれば、何故かエリーの執筆した『アーガイル』と同じ内容の出来ごとがスパイの世界で実際に発生しており、エリーが執筆中の『アーガイル』の続きの物語を求め、悪の組織によってエリーは狙われていたのだと言う。
 この事態を解決するには、小説『アーガイル』内でアーガイルが行っていたように、敵組織の悪事に関する情報が納まったデータファイルを手に入れるしかない。
 そしてそのファイルが如何にすれば手に入るのか?は、そういう物語を書いていたエリーにしか分からないというのだ。

 エリーは否応も無く、ワイルドによって執筆中だった『アーガイル』の内容にしたがってロンドンへ連れ出され、ファイル探しの大冒険へと放り込まれるのであった。

 はたしてエリーの運命はいかに!?
 そしてなぜエリーの書いた物語が現実で起きていて、スパイたちの暗闘は如何な結末を迎えるのであろうか?





 さて今回は2024年公開ほやほやのスパイアクション映画の傑作について語りたいと思います!
 本コーナーにしては珍しく、2024年3月末の段階で、辛うじてですがまだ公開中の映画です!
 お近くの映画館で観賞可能な方は、どうか本文章を参考に観賞を検討してみて下さい。



 監督はマシュー・ボーン。
 本コーナーで言えば『スターダスト』『Xメン:ファーストジェネレーション』の監督であり、他にヴィジランテヒーローの傑作『キックアス』や、本作と同じスパイを題材にしたトンデモアクション映画『キングスメン』シリーズの監督です!
 本作を筆者が見に行った最大の理由は、これらのマシュー・ボーン監督作がを筆者が好きだったからです!
 その作風は、恐ろしく外連味のある演出と、ブレーキとアクセルがぶっこわれたストーリーにあると思うのですが、それは本作でも遺憾なく現れております。



 音楽はローン・バルフ。
 本コーナーで言えば『レゴバットマン ザ・ムービー』『トップガン マーヴェリック』『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』で音楽を担当していたお方。
 その他おそろしく精力的に映画音楽を手がけており、寝る暇あるんだろうか?と思ってしまいます。
 本作では、ビートルズをはじめとした70年代のヒットソングを使用しつつ、さらにそれを恐ろしくエモいインストに編曲して流しております。
 マシュー・ボーン監督作の選曲センスと、ローン・バルフによるインスト化によって、本作は見る人の心をノリノリな気分から切ない気分などなどに揺さぶりまくりやがるのです。





 出演は、主人公たるベストセラー小説『アーガイル』を執筆した女性作家のエリー役にブライス・ダラス・ハワード。
 最近では『ジュラシックワールド』でクリス・プラットと共に主演したのが記憶に新しいお目目がキラッキラした美人女優です。
 その他サム・ライミ監督『スパイダーマン3』でグエン・ステイシーを演じたり、『ターミネーター4』でジョン・コナーの妻を演じたりしております。
 ちなみにこのお方、『アポロ13』や『ハン・ソロ』『ダビンチ・コード』などを撮った名監督ロン・ハワードの娘さん。
 本作では少々プロポーションのムチムチ度をアップした上で、ひきこもり気味の陰キャ独身中年作家なのに、なぜかスパイ同士の大立ち回りに巻き込まれちゃう役を、恐ろしい程の全力極まる演技で見せてくれております。
 それだけでなく、なぜ本作主演が彼女なのか? それが嫌と言う程実感できる大活躍を映画後半で見せてくれるのです。
 本作は彼女の存在こそが魅力の大半を占める映画であり、また彼女という女優が存在したがゆえに作ることができた一本と言える気がします。



 そのブライス・ダラス・ハワードと共演するもう一人の主役たる善玉のスパイのワイルド役にはサム・ロックウェル。
 本コーナーで言えば稀代の名作SFコメディ映画『ギャラクシークエスト』で、すぐ殺されるモブを演じたガイという俳優役で活躍した他、『アイアンマン2』のヴィランのハマー社長役や『グリーンマイル』『チャーリーズエンジェル』『ジョジョラビット』に出演し、『スリービルボード』という映画ではアカデミー賞助演男優賞を獲得、さらに月の炭鉱夫として働いていたら自分のクローンと遭遇してしまう秀作SF映画『月にとらわれた男』では主演もしている、ともかく隙があるとダンスステップを踏み出す胡散臭い小柄なおっさん俳優です。
 本作でもサム・ロックウェルらしい胡散臭~い男を全力で演じつつ、おっさん臭さからは想像もつかない見事なスパイアクションを見せてくれます。
 あとやっぱり本作でもダンスステップを踏みます‥‥‥。



 そして主人公エリーが執筆したスパイアクション小説『アーガイル』の主人公にして、角刈り凄腕スパイのアーガイル役にヘンリー・カヴィル。
 DC映画の『マン・オブ・スティール』でスーパーマンを演じた人で有名なムッキムキの英国人俳優です。
 その他『コードネーム U.N.C.L.E.』『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』でも本作と同じ様にスパイを演じております。
 思えばマシュー・ボーン監督の映画監督デビュー作『スターダスト』にチョイ役で出演もしてました。


 そのアーガイルの相棒ワイアット役にジョン・シナ。
 最近活躍目覚ましい元プロレスラー俳優です。
 『バンブルビー』『ワイルド・スピード』シリーズ、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』などで、元プロレスラーからはイメージできない芸達者な演技っぷりを見せてくれる人です。


 さらにエリーを追いかけまわす悪の組織のボス役にブライアン・クランストン。
 名作海外ドラマ『ブレイキング・バッド』での主演で有名なお爺ちゃん俳優です。
 本コーナーで言えば『プライベート・ライアン』等に出演した他、リメイク版『トータル・リコール』やハリウッド版『GODZILLA』などで名脇役俳優として多くの映画に出まくっております。
 
 その他、サミュエル・L・ジャクソンやキャサリン・オハラ、デュア・リ、パアリアナ・デボーズになど、実力派や売り出し中の俳優やモデルやらが幅広く集められております。





 そんな本作がなにゆえそこまで筆者の心に刺さったのか?
 それはこのスタッフ・キャストが結集された時点で半ば約束されていたような気もします。
 だってこの陣容の段階で、素晴らしいアクション映像と演技は確定したようなものなのですから‥‥‥しかしそれだとここで今回のコーナー終わってしまいますので‥‥‥なんとなく思い当たることを書くとします。。



 思えば、世には作家が主役の物語がそこそこ存在します。
 その中でも、スランプ中の引きこもり気味独身ベストセラー女性作家が、すったもんだの末に冒険に巻き込まれる映画というのは、本作だけではありません。
 ジョディ・フォスター主演、ジェラルド・バトラー共演の『幸せの1ページ』や、最近ではサンドラ・ブロック主演のチャニング・テイタム(とブラッド・ピット)共演の『ロストシティ』なんてのもありました。
 ドラマや小説などもくわえれば、探せばもっとこういうスランプ中の作家が外に出て大冒険に巻き込まれる系の物語はありそうです。
 筆者も本作の予告を最初に見た時は、その少し前に公開されていた『ロストシティ』みたいなあらすじだなぁ~と思ったものです。
 
 しかし、本作は前述した作品とは一味も二味も違う作品でした。
 本作がそれらのスランプ中の引きこもり気味独身ベストセラー女性作家が大冒険に出る系物語meetsスパイアクションにしたからだけでなく、なぜか主人公の書いた物語が現実で起きているという特大の謎を描いたお話だからです。

 はたして、なぜ主人公が書いたスパイの物語が実際に起きているのでしょうか?

 本作の魅力の一つは、その謎を割と物語として説得力がある範囲の答えを用意し、見事に作中でのアクションパートが行われる理由へと繋げていることです。
 筆者は本作予告を見ただけの段階では、主人公が書いた物語が現実となった世界もまた、誰かが書いた物語だった『入れ子構造』パターンのやつ‥‥‥と想像してみましたが、それは大ハズレでした。
 本作はその謎が解き明かされる過程で、ハラハラドキドキのサスペンス要素も盛り込んできていてくれているのです。
 この謎解きサスペンスがあることで本作はアクションパートとアクションパートの合間もダレることなくテンポ良く見続けることができるのです。
 はたして、なぜ主人公の書いた物語が現実となったのか? その答えは、どうか本作未見の方はどうかその目で見てご確認ください!



 そして、前述しましたが、なんといっても本作を魅力的な作品足らしめているのは、ブライス・ダラス・ハワードとサム・ロックウェルというあまり若くもなければ、主演に引っ張りだこな大ブレイク中のスター俳優というわけでもなく、それまでアクション俳優というイメージも無い二人の俳優を主演に据え、二人の類まれな演技力と努力と、キャラ設定や脚本はもちろん、音楽による雰囲気作の末に、スタッフの尽力によって実現した奇想天外なアクションの映像の数々が素晴らしいのです。

 そこを語ることは、本作未見の方の楽しみを減ずることになるのであまり言えませんが、筆者はブライス・ダラス・ハワードとサム・ロックウェルがその俳優キャリアの中でもトップクラスに無茶苦茶やっているその姿に、なんというか‥‥‥キュンキュン(熟慮の末の表現)したのです。
 ‥‥‥キュンキュンしたのです。
 主演の二人も、二人を選んで信じた監督以下のスタッフ陣も凄い!
 しかも本作は今時珍しい続編でも原作付きでもない完全オリジナル作です。
 それをここまで注力して作り上げたスタッフ・キャストの胆力に、もう感謝する他ありません!



 さてここでいつものトリビア!

 忘れちゃいけない本作の重要キャラ、主人公エリーの飼い猫のアルフィーを演じているのは、マシュー・ボーン監督のリアル飼い猫のチップ。
 見る者をメロメロにしてくれやがります。





 ‥‥‥ってなわけで『ARGYLLE/アーガイル』もし未見でしたらオススメですぜ!!