映画観賞……それは時に○○億円もの制作費をかけた作品を、だいたい2000円前後で楽しめるめっちゃコスパの良いエンタメ……。

 これは、当劇団きっての映画好きにして、殺陣と小道具美術担当の筆者が、コロナ禍からようやくかつての日常を取り戻しつつある現代社会いおいて、筆者の独断と偏見といい加減な知識と思い出を元に、徒然なるままに……徒然なるままにオススメの映画について書くコーナーである。

 

 

 

 

 

 

 

▼『映画を語れてと言われても』

 

 

 

 

 TODAY'S
 
第一四八回『たかが犬だろ!‥‥なんて言ったバカ息子がいたんですよ~‥‥“ジョン・ウィック”』




 タグ:キアヌ・リーヴス ガンアクション アクション 銃 柔術 カーチェイス ガンフー スタントマン マフィア 殺し屋 ホテル 裏社会 通貨

 

『ジョン・ウィック』

2014年公開

監督:チャド・スタエルスキ デヴィッド・リーチ

製作総指揮:キアヌ・リーヴス

 

音楽:タイラー・ベイツ

出演:キアヌ・リーブス ミカエル・ニクヴィスト エイドリアンヌ・パリッキ ブリジット・モイナハン イアン・マクシェーン ランス・レディック ジョン・レグイザモ ウィレム・デフォー アルフィー・アレン ダニエル・バーンハード

 

 

 

あらすじ

 かつて裏社会を震撼させ〈ババヤガ〉の二つ名でも恐れられた最強の殺し屋ジョン・ウィック(演:キアヌ・リーヴス)。

 だが、運命の女性ヘレン(ブリジット・モイナハン)との出会いが彼を変えた。

 彼女との平穏な生活を求め、ジョンは殺し屋稼業から足を洗ったのだ。

 しかし、ジョンの平穏は長くは続かなかった。

 妻となった最愛のヘレンが病に倒れ、闘病の末にこの世を去ったのだ。

 悲しみにくれるジョン。

 そんな彼を見越して、生前のヘレンはジョンに対し、一頭の子犬のプレゼントを残していた。 

 その子犬と暮らすことで、妻を亡くした痛みから立ち乗ろうとするジョン。

 

 だが運命はそれさえも彼には許さなかった。

 

 

 かつてジョンが仕事を請け負っていたマフィア、タラソフ・ファミリーのボスの息子ヨセフ(演:アルフィー・アレン)が、ジョンの正体を知らないまま、彼の所有するビンテージカーを盗みに仲間を共に自宅に押し入り、その際にヘレンからジョンに送られた掛け替えのない子犬を殺したのだ。

 

 この行いに対するジョンの対応はシンプルであった。

 ただちに亡き妻の残した子犬の仇を打つ為、行動を開始するジョン。

 

 一方、息子のしでかしを知ったタラソフ・ファミリーのボス、ヴィゴ(演:ミカエル・ニクヴィスト)は、息子を守るため、ジョンの行動を見越して、先んじてジョンに向かって多数の殺し屋を差し向けるのであった。

 

 はたしてジョンの復讐の行方やいかに!?

 

 

 

 

 

 

 さて今回は、2010年代のガンアクション映像業界に新たな衝撃をもたらし、キアヌ・リーヴスを再ブレイクさせた傑作シリーズの第一作について語りたいと思います。

 

 

 

 ‥‥‥てなわけで主演はキアヌ・リーヴス。

 ヤン・デ・ボン監督・サンドラ・ブロック共演のアクション映画『スピード』でブレイクし、さらに本コーナーでも紹介した『マトリック』で二度目のブレイク、それから10年ほど停滞気味となりますが、本作で3度目のブレイクを果たし、本シリーズは4作目まで作られることとなるのです。

 本作では主演のみならず製作総指揮を務め、企画をはじめ、監督以下のスタッフ・キャスト集めも自ら行い、本作のヒットに繋げています。

 

 

 そのキアヌ・リーヴスによって監督を任されたのはチャド・スタエルスキとデイビット・リーチの二人。

 

 二人も元スタントマンで、チャド・スタエルスキの方は『マトリックス』でキアヌ・リーヴスのスタントダブル(キアヌ専属スタントマン)を担当していたお人。

 本作後もキアヌ・リーヴスと組み『ジョン・ウィック』を四作目まで撮り切るお方です。

 元スタントマンなだけあって、生身のアクション全般を大迫力で撮る人です。

 

 もう一人の監督デイビット・リーチは、本作後は『ジョン・ウィック』シリーズを離れ、『アトミック・ブロンド』『デッドプール2』本コーナーでも紹介した『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』さらに日本の新幹線を舞台にブラッド・ピットが主演する『ブレットトレイン』と、次々と大ヒットアクション映画を撮る監督となっております。

 彼の方は生身の人のアクションのみならず、VFX技術も多用したアクション映像を得意とするタイプのようです。

 

 その二人の監督の活躍も、本作の成功があったからこそなのです。

 

 

 

 

 音楽を担当したのはタイラー・ベイツ。

 本コーナーで言えばMCU作品の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズの他、『300 〈スリーハンドレッド〉』などのザック・スナイダー監督作の音楽をよく担当してるお人。

 本作では、どっしりとしたスローテンポでありながら、ジョン・ウィックの悲しみと鋼の意思を想起させるメインテーマを作曲し、ジョン・ウィックと言えばおなじみの曲としています。

 本作観賞後に街中を歩く機会があったならば、きっとあなたの脳内でも本作のメインテーマが強制再生されることでしょう。

 

 

 

 そしてキアヌ・リーヴス以外の出演は、放蕩息子の為にジョン・ウィックと戦う羽目になるロシアンマフィア・タラソフ・ファミリーのボス・ヴィコ役にスェーデン俳優の(故)ミカエル・ニクヴィスト。

 『ミレニアム:ドラゴン・タトゥーの女』のスェーデン版で主演した他、トム・クルーズ主演『ミッション・インポッシブル:ゴースト・プロトコル』で敵ボス役でトムと大立ち回りをしたりしているおじさん俳優です。

 悪役も善玉役もその演技力でどっしりと演じております。

 本作では、どんなアホでも息子である以上守りたいと思う一方、ジョン・ウィックの恐ろしさを最も理解している組織のボスを、時にコミカルささえ漂わせながら見事に演じております。

 

 

 ジョン・ウィックが宿泊する裏社会の殺し屋御用たちホテル(コンチネンタル・ニューヨーク)のオーナーのウィンストン役にイアン・マクシェーン。

 『パイレーツ・オブ・カリビア:生命の泉』の敵、黒ひげ役などが有名なおじいちゃん俳優です。

 本作公開時で70歳を超えておりますが、その演技力だけでモノ凄い存在感を出しており、『ジョン・ウィック』シリーズのレギュラーとして、もう一人の主人公のような活躍をします。

 

 

 その殺し屋御用たちホテル(コンチネンタル・ニューヨーク)のコンシェルジュのシャロン役に(故)ランス・レディック。

 数多くのドラマ・映画に出演してきた名脇役俳優です。

 

 さらにヴィコにジョン・ウィック殺しで雇われる殺し屋の一人マーカス役にご存知ウィレム・デフォー。

 サム・ライミ版『スパイダーマン』のグリーン・ゴブリン役など、数々の映画で悪役や悪役にしか見えない顔の善玉を演じてきたハリウッド屈指の顔面力俳優です。

 彼が出演してる時点で、本作が一定水準以上の面白さを有していることは保証されたようなものです。

 

 

 その他ジョン・レグイザモ、エイドリアンヌ・パリッキ、アルフィー・アレン、ダニエル・バーンハードなど、実力実績および顔面力のある個性派俳優が脇を固めております。

 

 

 

 

 

 そんな本作は、前述したようにチャプター4まで作られ、一本の前日譚スピンオフドラマと映画が作られる程の好評を受けることとあるわけですが、それは何故かというならば‥‥‥。

 

 

 ‥‥‥それはやはりガンアクションをはじめとしたアクションの数々なのであります。

 

 




 

 思えば映像エンターテイメント映画は、ガンアクションと共に栄えてきたといっても過言では無いでしょう。

 数々の西部劇、戦争映画に、1980年代からの『ダイハード』『リーサルウェポン』等のアクション刑事モノに、ジョン・ウー監督による『男たちの挽歌』等の香港ノワールのブーム、そしてクリスチャン・ベール主演『リベリオン』による格闘ガンアクション革命‥‥‥本作はそんなガンアクション映画の進化の先に位置する作品だと思うのです。

 そして本作は、映像面はもちろん、脚本に世界観にキャスティングにその熱演の全てが、ジョン・ウィックが銃持って大暴れする為に練り出されているところが良いのです。

 

 

 

 世界観につい本作がユニークなのは、〈ホテル・コンチネンタル〉の存在です。

 殺し屋や堅気ではない職の人が、金さえ惜しまなければ安全に宿泊できるという裏稼業御用たちホテル〈コンチネンタル〉の存在により、本作は独特な雰囲気となっているのです。

 本作ではホテル〈コンチネンタル〉をはじめ、裏社会で独自発行されている特殊な金貨を使えば、死体処理など、あらゆる殺しの補助サービスが受けられるというシステムが浸透しているという、普通に平和に生きてる人から見れば何気におっかない社会を舞台にしているところが本作世界のユニークなところです。

 このルールが存在することで、本作に登場する裏社会の人間達は殺し合いに抗争に明け暮れているはずなのですが、どこか理性的であり感情的に暴力を振るうという感じがしません。

 常に交渉の余地があって、殺す殺さないを決めているとでも言いましょうか‥‥‥それは作中でも『ルールが無ければ獣と同じ』というホテル・オーナーのウィンストンの台詞からも伺えます。

 まぁ、それは組織の中でも下っ端の鉄砲玉みたいなモブには関係無い話ですけどね!

 

 

 

 脚本面では、ジョン・ウィックがたった一匹の子犬の仇を討つ為に、ロシアン・マフィアにケンカを売るところが、実に無類です。

 ただの子犬ではなく、亡き最愛の妻の形見だったと思えば、ジョン・ウィックの怒りも無理なからぬ気もしますが、それにしてもこのような理由でマフィアどもをぶっ殺しまくったのは前代未聞です。

 ですが、本作を見たあとならば言えます。

 ワンちゃん殺すヤツぁ許せん!! と。

 

 

 

 そしてそれらの世界観、脚本によるお膳立ての上で行われるジョン・ウィックのアクションが白眉なのです。

 かつて本コーナーでも紹介した映画『リベリオン』では、銃と格闘技を混ぜ合わせた〈ガンカタ〉なる戦闘術が登場し、以後のガンアクションに多大な影響を与えましたが、本作ではその系譜ともいえる〈ガン・フー〉とスタッフ・キャストが呼ぶ戦闘スタイルが登場します。

 その戦闘シーンが凄いのです!

 

 具体的には、屋内で行われる近距離での銃撃戦に際し、ジョンが柔術とCARシステムと呼ばれるピストルの使い方を組み合わせて戦うのです。

 

 CARシステムとは、ザックリと筆者なりの理解を交えて語るならば、肘を曲げピストルを顔に近い位置で構えることで、屋内戦闘で壁際から出た時などに、出会い頭に敵に銃や腕を捕まれることを防止しつつ、壁際から銃が出て敵に見つかる可能性を抑える実在する戦闘術です。

 

 ジョンはこのCARシステムと思しきピストルの扱い方をしつつ積極的に敵の腕を掴んでは柔術で地面に引き倒し、ピストルの弾をを敵のど頭に撃ち込んで殺すスタイルを必勝パターンにしているのです。

 そのモーションの華麗さが素晴らしいのです。

 特にナイトクラブでジョンが大暴れするシーンは見事の一言です。

 

 この〈ガン・フー〉シーンの実現の為にキアヌ・リーヴスは鍛錬を積に積み重ね、撮影に挑んだのだそうです。

 またこの戦闘シーンは、監督に抜擢されたチャド・スタエルスキとデイビット・リーチと、二人が立ち上げたスタントマン・マネジメント事務所〈87〉のスタッフやスタントマンの力が大であったと思います。

 

 またクライマックスでは、このピストン術にカーアクションを加えた〈カーフー〉までお披露目してくれます。

 

 

 本作はこれらのアクションシーンを見せる為に、世界観、脚本、スタッフ、キャストが固められていたのではないでしょうか?

 

 

 




 

 

 さてここでいつものトリビア。

 

 前述したナイトクラブでジョンと激闘を繰り広げ、ほぼジョンに勝利するマフィアのボスの息子のボディガードを演じているのはダニエル・バーンハード。

 『アトミック・ブロンド』や『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』など〈87〉関連のアクション映画によく出演している元モデルにして格闘家の俳優さんです。

 実は本作ではキアヌ・リーヴスと対戦するのは二度目。

 一度目はキアヌ・リーヴス主演の2003年の映画『マトリックス:リローデッド』でエージェント・ジョンソンを演じた時でした。

 う~ん今もかっこいい!!

 というのは以前『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』でも書いたトリビアでした‥‥‥。

 

 が、そのナイトクラブでのジョン大暴れの撮影時、キアヌは高熱を出していて、ヘロヘロになりながら撮っていたんですって。

 製作総指揮&主演は大変だよ‥‥‥。

 

 

 

 

 ‥‥‥ってなわけで『ジョン・ウィック』もし未見でしたらオススメですぜ!!