映画観賞……それは時に○○億円もの制作費をかけた作品を、だいたい2000円前後で楽しめるめっちゃコスパの良いエンタメ……。

 これは、当劇団きっての映画好きにして、殺陣と小道具美術担当の筆者が、コロナ禍からようやくかつての日常を取り戻しつつある現代社会いおいて、筆者の独断と偏見といい加減な知識と思い出を元に、徒然なるままに……徒然なるままにオススメの映画について書くコーナーである。

 

 

 

 

 

 

 

▼『映画を語れてと言われても』

 

 

 

 

 TODAY'S
 
第一四五回『勝った方が人類の敵になる‥‥‥“ゴジラVSビオランテ”』




 タグ:ゴジラ 怪獣 バイオテクノロジー 自衛隊 大企業 シリーズ 放射能 核 生物兵器 植物

 

『ゴジラVSビオランテ』

1989年公開

監督:大森一樹

特技監督:川北紘一

脚本:大森一樹

原案:小林晋一郎

音楽:すぎやまこういち 伊福部昭

出演:三田村邦彦 田中好子 高嶋政伸 小高恵美 峰岸徹 沢口靖子 永島敏行

 

 

※本作は1954年公開『ゴジラ』および1984年公開『ゴジラ』の続編となっております。

 

 

あらすじ

 1984年に日本に上陸し、東京を蹂躙した“二頭目”のゴジラは、日本政府や自衛隊、民間協力者の尽力により、辛くもゴジラを大島の三原山に封じることに成功した。

 

 それから5年後‥‥‥来たるべきゴジラ再襲来に備えた政府のゴジラ対策室である国土庁特殊災害研究会に出向していたベテラン自衛官の権藤(演:峰岸徹)一佐と、若きエリート自衛官の黒木(演:高嶋政伸)特佐は、三原山の火口の奥でゴジラの活動再会の予兆を確認したことから、ただちに次なるゴジラ襲撃対策の為、対ゴジラ用無人飛行要塞スーパーXⅡ等の準備を開始する。

 そして、その対策手段の中で、先のゴジラ上陸時に回収したゴジラの細胞を用いて、核エネルギーを吸収する抗核バクテリアを作り、これを打ち込むことで核で動くゴジラを弱体化すさせるという方策を模索する。

 しかし抗核バクテリアを世に生み出すことは、核兵器を無力化することにも繋がり、それは世界の軍事バランスに絶大な影響を及ぼしかねない行いであった。

 

 その可能性を危惧しつつも、権藤はバイオテクノロジー研究者で彼に協力している桐島(演:三田村邦彦)と共に、日本で唯一抗核バクテリアを製造可能なスキルを有するバイオテクノロジーの権威にして、現在芦ノ湖の湖畔に、亡き愛娘のバラ園を育てながら暮らす白神(演:高橋幸治)博士に抗核バクテリアの製造を依頼する。

 しかし彼は五年前、中東サラジア共和国で、同国が非合法に入手したゴジラ細胞を用いた砂漠の緑地化計画を研究していたところを、ゴジラ細胞を巡って敵対しているアメリカのバイオ・メジャー(バイオ関連企業)によって研究所を爆破され、愛娘の英理加(演:沢口靖子)を亡くしていたことから、ゴジラ細胞に関わる抗核バクテリアの製造を拒否する。

 しかし、ゴジラの活動再会に伴う三原山の地震を切っ掛けに、何故か抗核バクテリアの製造を了承した白神博士は、抗核バクテリアを製造すると共に、先の地震で崩壊した亡き愛娘の形見のバラ園のバラをゴジラ細胞を用いて救うと同時に、亡き愛娘の細胞とを掛け合わせた新生物ビオランテを生み出してしまう。

 

 

 

 さらに白神博士が抗核バクテリアを完成させたタイミングで、日本政府に対し、完成した抗核バクテリアをよこさねば三原山火口を爆破し、ゴジラを目覚めさせるという脅迫状が届く。

 事前に三原山の火口が何者かよって小規模爆破されたことから、脅迫が本物であったと判断した日本政府と権藤と桐島は、抗核バクテリアの受け渡しに向かい、そこに現れたバイオ・メジャーのエージェントに抗核バクテリアを渡そうとするが、そこへ五年前にゴジラ細胞をサラジア共和国に送った同国のエージェントが銃撃と共に乱入し、バイオ・メジャーのエージェントを殺害、抗核バクテリアを奪って逃走した上に、三原山火口はそのまま爆破されてしまう。

 かくして5年ぶりに目覚め、三原山より出現するゴジラ。

 

 

 黒木特佐の指揮する自衛隊とスーパーXⅡの活躍により、大島から海上移動するゴジラの東京上陸は阻止できたものの、ゴジラは小田原より上陸し、芦ノ湖へと向かい出す。

 その芦ノ湖では、白神博士が生み出した新生物ビオランテがゴジラを待ち受けていた。

 

 同じゴジラ細胞を有する者同志として、芦ノ湖で激突するゴジラとビオランテ。

 その一方で権藤と桐島は、サラジア共和国のエージェントから奪われた抗核バクテリアを取り返すべく奔走する。

 

 はたしてゴジラとビオランテとの戦いの行方は!?

 人類の運命やいかに!?

 

 



 

 

 さて今回は怪獣映画回にしてゴジラ映画回!!

 それも数多あるゴジラ映画の中でも筆者がトップ3に入るレベルで大好きで、俗にいう『VSシリーズ』として平成の世の怪獣映画を盛り上げてきたゴジラシリーズの先駆けとなった作品でもあります。

 

 

 

 

 

 

 監督は(故)大森一樹。

 1980年代から2000年までに数々の邦画を撮ってきたベテラン監督です。

 また監督だけでなく脚本も数多く担当しているお方で、本作の脚本も担当しており、彼の書いた脚本が本作の魅力の大きな部分を締めてると言えるでしょう。

 

 

 特技監督は(故)川北紘一。

 円谷プロダクションのTVシリーズ『ウルトラQ』の時代から、数多くの特撮作品の特撮パートを担当してきた伝説的なお方。

 彼の存在無しには、平成の特撮作品の大半は存在できなかったことでしょう。

 

 

 音楽は、1954年の初代『ゴジラ』の音楽を担当した伊福部昭による『ゴジラテーマ曲』を使用しつつ、TVゲーム『ドラゴンクエスト』の楽曲を担当した(故)すぎやまこういちが本作のオリジナル劇伴を担当しております。

 そのBGMがまたやたら景気よく壮大で素晴らしいのです。

 

 

 

 キャストは三田村邦彦、高嶋政伸、峰岸徹、田中好子、小高恵美、沢口靖子などなど、1980年代末の芸能界の最前線で活躍していた方々。

 さらにゴジラ細胞を狙ってサラジア共和国やバイオ・メジャーから派遣されにエージェントには外国人俳優をキャスティングし、国際色も豊かにしております。

 ちなみに筆者の推しキャラは高嶋政伸演じる黒木特佐とサラジア共和国の名の呼ばれないエージェントです!

 

 

 

 

 

 

 

 そんな本作は、前述したようにご存知1954年の本多猪四郎監督作『ゴジラ』から始まるゴジラシリーズの一作です。

 

 ここで今一度ゴジラとはなんぞや? を説明しておくならば‥‥‥作品によって多少の設定の違いはありますが、古代の海棲爬虫類から陸上獣類への進化途上の生物が、近代の核兵器実験による放射能の影響で突然変異した体長50m~100mの巨大生物です。

 海中を自在に移動できるだけでなく、二足歩行で陸上でも同等に活動でき、口からは放射熱線と呼ばれる高熱の熱線を吐きます。

 腕を太くして巨大な背びれを生やした黒いティラノサウルスみたいな姿‥‥‥とでも例えれば良いのでしょうか?

 

 そのゴジラは、前述した1954年の第一作公開以来みんな大好き!

 2024年現在にいたるまで国内で30作、ハリウッド版で4作ものゴジラ映画が撮られている程です。

 

 

 しかしながら、ゴジラシリーズは1954年から現在に至るまで、ずっと順風満帆で続いて来たわけであありません。

 色んな区分の仕方がありますが、ゴジラシリーズは大きく分けて1954年第1作から1975年の第15作『メカゴジラの逆襲』までの昭和シリーズで最初のブームが一段落し、休眠期間を迎えます。

 

 

 そして1984年に、『ゴジラ』第一作の続編として(第二作から15作めまでを無かったことにした)『ゴジラ(1984)』が製作され‥‥‥そこから5年のスパンを開け、本作でついにゴジラは約15年ぶりに他の怪獣とぶつかり合うこととなったのです。

 それも、過去作で登場した対戦怪獣のリメイクではなく、ビオランテという完全オリジナル怪獣とです!

 

 

 

 本作は幼き筆者が初めて一人で映画館へ見に行った最初期の映画であり、同時に初めて映画館の大画面で見るゴジラとして、大変衝撃的だったのを覚えております。

 そしてその結果、筆者もゴジラファンの一人と相成るわけですが‥‥‥本作は2024年となった今でも、数あるゴジラ映画の中でもトップクラスに大好きな一本となったのです。

 

 

 

 では何故にそこまで筆者は本作に魅かれたのでしょうか?

 

 

 例によって一つはその物語です。

 おそろしく色々と盛りだくさんな脚本が良いのはもちろん、シリーズ内の本作のポジションや、物語に組みこまれたテーマといった部分が好きなのです。

 

 ちなみに本作の原案は、一般から公募された「ゴジラ対ビオランテ」小林晋一郎・作を大森一樹監督が脚本化したものだそうです。

 

 そのゴジラシリーズの中の一本である本作は、前述した通り1954年の『ゴジラ』のあとに、1984年『ゴジラ』時に二頭目のゴジラが現れ、てんやわんやの大騒ぎがあった後の続きの物語です。

 

 つまりこの世界の人類‥‥‥というか日本は、都合二度のゴジラ襲来を体験している世界なのです。

 ですからこの世界の日本は、またゴジラが襲来した時の備えが成されているのです。

 その数々の備えがイイのです。

 

 例えば4段階のゴジラ警戒手順。

 

▼第一種警戒態勢

 Gの活動が物理的以外の化学、地質、 気象、精神などいかなる点でも1つ確認された場合。

 

▼第二種警戒態勢

 Gの活動が声、動きなど物理的に確認された場合。

 

▼第三種警戒態勢

 Gが出現した場合。

 

▼第四種警戒態勢

 Gが日本の特定地域に上陸する ことが確実とされる場合。

 

 

 

 例えば、精神開発センターに集められた超能力を持つ子供達による、予知能力を用いたゴジラの同行予測。

 

 そしてなんと言ってもスーパーXⅡです!

 スーパーXとは前作『ゴジラ〈1984)』に登場し、ゴジラと新宿で激戦を繰り広げた陸上自衛隊幕僚監部付実験航空隊首都防衛移動要塞T-1号の愛称で、巨大な寸詰まりの銀色の芋虫みたいな飛行メカだったのですが、その後継機スーパーXⅡが本作では大活躍するのです。

 角を落とした緑色の巨大な消しゴム見たいな姿となったスーパーXⅡは、なんとゴジラの熱線を一万倍にして反射するファイアーミラーなる鏡を機首に装備しており、復活したゴジラと激戦を繰り広げるのです。

 

 



 

 

 さらに〈抗核バクテリア〉を核にして繰り広げられるポリティカルかつ生命を自身の都合でいじくりまわすバイオテクノロジーへの警鐘を盛り込んだドラマが秀逸です。

 もしもゴジラが上陸し大暴れしたならば、その跡からは少なからずゴジラの肉片が回収できるずです。

 そして核をエネルギー源としているゴジラの細胞には放射能に耐え、それを吸収する遺伝子が含まれていることになります。

 ですからゴジラ細胞を入手し、そこから核を吸収し耐える遺伝子を培養することができれば、作中の通り〈抗核バクテリア〉が作りだせるということになり、もしそれが実現すれば、世の核兵器の無力化にもつながり、結果として国家間でゴジラ細胞の奪い合いになる‥‥‥という『もしもゴジラが現れたら?』という思考シミュレーションが巧みに行われているのです。

 そしてそれが植物とゴジラの合成怪獣ビオランテの誕生に繋がるところも見事です。

 

 

 

 そして『もしもゴジラが現れたら?』を、日本の地理からシミュレートした物語の流れも好きなのです。

 大島三原山から出現したゴジラは、神奈川県小田原から上陸し、芦ノ湖でビオランテと交戦した後に静岡県駿河湾から海に消えます。

 筆者が好きなのは、そこで高嶋政伸演じる黒木特佐が、ゴジラが核エネルギーを狙って原発を襲うと推測し、原発の多い場所へ向かう最短ルートの愛知県伊勢湾にゴジラ迎撃の為の自衛隊全戦力を集結させたところ、なんとゴジラが和歌山県、徳島県、兵庫県が囲む紀伊水道に現れところです。

 普通なら指揮官である黒木特佐の責任問題として糾弾されるところですが、そこで黒木特佐がきる啖呵が好きなのです。

 それは実に当たり前の事なのですが、ゴジラ迎撃というとてつもない困難に立ち向かう際に、とても大切な心掛けを言っていると思うのです。

 はたして黒木特佐はなんと言ったのか? それ本作を未見の方は、どうかその目と耳でご確認下さい。

 

 

 

 

 そしてやはり怪獣映画であるがゆえのド派手な特撮映像も見逃せません!

 まだCG技術が欠片程しかない時代の作品ですので、正に特撮!

 巨大模型! 巨大プールとセット! そしてゴジラの着ぐるみを用いた映像は、今のVFX技術で生み出された映像にはない、曰く言い難い実在感があります。

 なかでも、クライマックスでゴジラと相対する人力で表現されたビオランテの姿とその動きは、今見ても大迫力なのです。

 なかでも、ゴジラと自衛隊戦力との位置関係を表現したワイヤーフレームを用いたCGのシミュレーション映像が、すぎやまこういちの劇伴と共に滑らかに実写特撮の映像に切り替わるところはまさに名演出!

 



 

 本作はそれら1989年の特撮邦画業界の総力を結集して作られた結果、1991年に公開された『ゴジラVSキングギドラ』へと続き、VSシリーズと呼ばれる一連のゴジラ映画を生み出す結果となるのです。

 

 

 

 

 ‥‥‥ま、なんだかんだ言って筆者が本作で一番気に入っているのは、映画全体の雰囲気を寄せるレベルで壮大で勇壮でド派手なすぎやまこういち氏の劇伴なんですけどね!!

 

 

 

 

 

 さてここでいつものトリビア。

 スーパーXⅡのファイアーミラーについて熱弁する技術部長を演じているのは、後に『ガメラ2:レギオン襲来』で宇宙怪獣レギオンと戦う事になる永島敏行。

 

 そのスーパーXⅡを遠隔操縦するオペレーターを演じているのは、まだブレイクする前の鈴木京香と豊原功補。

 

 また作中で何人も狙撃で血祭りにあげるサラジア共和国のエージェントを演じているのは、たまたま現場に呼ばれていた通訳さん。

 

 

 

 ‥‥‥ってなわけで『ゴジラVSビオランテ』もし未見でしたらオススメですぜ!!