映画観賞……それは時に○○億円もの制作費をかけた作品を、だいたい2000円前後で楽しめるめっちゃコスパの良いエンタメ……。

 これは、当劇団きっての映画好きにして、殺陣と小道具美術担当の筆者が、コロナ禍からようやくかつての日常を取り戻しつつある現代社会いおいて、筆者の独断と偏見といい加減な知識と思い出を元に、徒然なるままに……徒然なるままにオススメの映画について書くコーナーである。

 

 

 

 

 

 

 

▼『映画を語れてと言われても』

 

 

 

 

 TODAY'S
 
第一四四回『負け犬チャンピオンズ&“ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り”』




 タグ:ファンタジー TRPG ダンジョン ドラゴン 魔法 吟遊詩人 モンスター コメディ セクシーパラディン

 

『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』

2023年公開

監督・脚本:ジョナサン・ゴールドスタイン ジョン・フランシス・デイリー

音楽:ローン・バルフ

原作:ハズブロ『ダンジョンズ&ドラゴンズ』

原案:クリス・マッケイ

出演:クリス・パイン ミシェル・ロドリゲス レゲ=ジャン・ペイジ ジャスティス・スミス ソフィア・リリス ヒュー・グラント

 

 

 

あらすじ

 剣と魔法と不思議生物が住まう世界‥‥‥。

 吟遊詩人(バード)のエドガン(演:クリスパイン)は、その正義感から悪を挫く正義の秘密組織〈ハーパー〉に参加し、スパイとして悪の教団〈レッドウィザード〉の数々の悪事を阻止してきた。

 だが、いくら正義をなせども経済的に報われぬハーパー生活に嫌気がさしていたところで、ある時〈レッドウィザード〉の報復を受け、妻を殺されてしまう。

 まだ赤ん坊だった娘のキーラの命は無事だったものの、これを気に〈ハーパー〉を抜けたエドガンは、酒に溺れ荒れた生活を送っていたが、飲み屋でであった女戦士のホルガ(演:ミッシェル・ロドリゲス)と何故か意気投合し、共に娘を育てるため、大魔法使いの子孫だが小心者のヘッポコ魔法使いのサイモン(演:ジャスティン・スミス)、詐欺師のフォージ(演:ヒュー・グラント)らと手を組み、人は傷つけず、大金持ちからのみ金品を盗む窃盗団業を始める。

 それから数年後、エドガンはソフィーナという魔法使いから〈よみがえり石板〉なる宝の情報を提供され、彼女と共にその石板の盗みを目論む。

 〈よみがえりの石板〉は誰でも一人だけ死者を生き返らせることができるアイテムであり、それさえあれば、殺されたエドガンの妻を生き返らせることができるからだ。

 

 かくして〈よみがえりの石板〉が眠るハーパーの宝物庫への侵入を試みるエドガン。

 しかし、件の石板を入手したところでソフィーナが裏切り、石板をフォージに託したところでエドガンとホルガは捕まってしまう。

 

 ‥‥‥それから二年後、投獄されていたエドガンとホルガは脱獄に成功し、娘キーラの元に向かうが、何故か大都市ネヴァーウィンターの領主となったフォージの元で、キーラは父に捨てられたと思い込まされながらフォージによって育てられていた。

 しかもフォージの傍らには裏切り者のソフィーナがおり、二人はまたも捕縛され、処刑されかけたところを辛くも脱出する。

 

 怒り心頭のエドガンは、フォージの元から娘キーラと〈よみがえりの石板〉を取り返すため、かつての仲間サイモンと、彼が想いを寄せる変身能力者の少女ドリック(演:ソフィア・リリス)を仲間に引き入れ、娘と石板の奪取作戦を目論む。

 しかし、その作戦成功の為には、石板の納められた宝物庫に施された魔法の封印を破って侵入するためのアイテム、〈魔法破りの兜〉が必要であった。

 遁走の末にその兜の在りかを、高名な聖騎士(パラディン)のゼンク(演:レゲ=ジャン・ペイジ)が知っていると突き止めたエドガン一行は、彼の元を尋ねる。

 しかしそんなエドガン達の動きを、最初に彼を罠にはめた犯人であるソフィーナは座視してはいなかった。

 

 はたしてエドガン達の娘と石板の奪取作戦の行方やいかに!!?

 

 

 




 

 

 

 

 

 さて今回は2023年公開の傑作ファンタジーアクションコメディ映画の傑作について語りたいと思います!

 

 本作タイトルの『ダンジョンズ&ドラゴンズ』とは、アメリカのオモチャメーカー〈ハズブロ社〉が1974年から発売しているファンタジーTRPG(テーブルトーク・ロールプレイングゲーム)のこと。

 今我々がTVゲーム等で行っている『ドラゴンクエスト』等々の数多のRPGゲームのアナログ版というか始祖にあたるゲームでして、サイコロやらマップやらカードやらを駆使して、魔法使いやら戦士やらエルフやらを操り、ドラゴンやらのモンスターと戦って遊ぶのだそうです(極めて曖昧な知識)。

 

 ファンタジー世界の物語と言えば『指輪物語』や『ナルニア国物語』ですが、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』はそれらと現代の『ドラゴンクエスト』やらの家庭用ゲーム機器でのRPGとの間を繋ぐ存在なのです。

 

 このTRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』がアメリカの人達は大好き(私見)!

 本コーナーで紹介した映画『グッドボーイズ』や人気ドラマの『ストレンジャーシングス』や『ビッグバン・セオリー』などなどで、登場キャラが『ダンジョンズ&ドラゴンズ』と思しきゲームを楽しむ姿が確認できます。

 

 本作はその人気TRPGの実写化に果敢に挑んだ作品なのです!

 と同時に本作は、『指輪物語』などのファンタジー作品の実写化であると共に、『トランスフォーマー』や『Barbie:バービー』あるいは『バトルシップ』等のような玩具やゲームの実写映画化作品なのです。

 

 

 

監督・脚本はジョナサン・ゴールドスタインとジョン・フランシス・デイリーのコンビ。

 『モンスター上司』『曇り時々ミートボール2』『スパイダーマン:ホームカミング』『ザ・フラッシュ』などなどの数々のコメディ映画の脚本をこなしてきたコンビ監督です。

 監督作は僅かですが、彼らの携わってきた作品を一本でも見たことがあり面白いと思えたなら、本作もきっと楽しんでもらえるはず。

 そう、本作はけっこうな大予算と有名キャストとそろえたアクションファンタジー大作であると同時に、と~っても良くできたコメディ映画なのです。

 

 

 音楽はローン・バルフ。

 2000年代から猛烈な勢いで映画音楽を担当してるお人。 

 『ペンギンズ FROM マダガスカル ザ・ムービー』『ターミネーター:新起動/ジェニシス』『13時間 ベンガジの秘密の兵士』『バッドガイズ!!』『レゴバットマン ザ・ムービー』『ゴースト・イン・ザ・シェル』『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』

『トップガン マーヴェリック』そして2024年3月に日本公開予定の『ARGYLLE/アーガイル』と‥‥‥。

 なんとまぁ凄い精力的なお方。

 

 

 そして原案にクリス・マッケイ。

 監督・脚本家として『レゴ・バットマン・ザ・ムービー』や『トゥモロー・ウォー』に携わったお人。

 

 

 

 

 出演は吟遊詩人のエドガン役にクリス・パイン。

 本コーナーでいえば『スタートレック(2007)』『スタートレック:ビヨンド』のジェームズ・T・カーク船長で有名なイケメン俳優。

 その他では『ワンダーウーマン』でワンダーウーマンの恋人のスティーブ役なんかが有名。

 本作ではファンタジー世界において、〈勇者〉とか〈冒険者〉ではなく〈吟遊詩人〉というかつてない職業の主人公をと~っても軽薄に演じてります。

 

 

 そのエドガンの相棒の〈戦士〉ホルガ役にミッシェル・ロドリゲス。

 『ワイルドスピード』シリーズで有名な見るからに強そうなお姉さん俳優です。

 その他『アバター』『バイオハザード』やシリーズでも、強そうな強い女を演じてるお方。

 

 

 エドガン一味の臆病だけど才能秘めた〈魔法使い〉サイモン役にジャスティス・スミス。

 『ジュラシックワールド・炎の王国』や『名探偵ピカチュウ』の主演で有名な人。

 今回も、臆病だけどホントは優秀なキャラ担当です。

 

 

 そのサイモンが想いを寄せる変身能力者〈ティーフリング〉のドリック役に『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』のヒロイン・ビバリー役でブレイク中のソフィア・リリス。

 浮世離れした美少女役を見事に演じております。

 

 

 そしてエドガン一味を裏切る〈詐欺師〉のフォージ役にヒュー・グラント。

 『ノッティングヒルの恋人』『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズ『アバウト・ア・ボーイ』で有名な英国人俳優です。

 最近は『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』でウンパ・ルンパを演じてビックリしましたが、本作でも『パディントン2』や近年の出演作で彼が演じたキャラと同じ様に、うさんくさ~いおじさんを飄々と且つうさんくさ~く演じております。

 

 

 さらに忘れてはならないエドガン一味が出会うセクシー極まるパラディン〈聖騎士〉のゼンク役にレゲ=ジャン・ペイジ。

 最近躍進凄まじい俳優さんで、本コーナーでは『移動都市/モータル・エンジン』で、後半になって唐突に現れたかと思うと津田健次郎の吹き替え声で大活躍する飛行戦パイロットのコーラ役が印象深いお人です。

 彼の演じる俗称セクシーパラディンっぷりにみんなメロメロです!

 

 

 ‥‥‥うむ、こうして書いてみると、本作のキャスティングの配役はすっごいそのまんまな気がして来ましたが、問題ありません。 だってすっごい合ってたから!

 

 

 

 本作はコロナ禍真っただ中に製作され、コロナにより散々延期の末に、コロナ禍が終わりかけた2023年に公開され、私をはじめ多くの見た人達を楽しませてくれたのです。

 

 

 

 

 ではなぜ本作はそこまで面白かったのか?

 その答えは、他の多くの名作と同じ様に、面白い脚本、キャストの熱演、凄い映像、良い音楽‥‥‥‥‥‥と、全てのパラメータがハイレベルだったからだと思います。

 



 

 

 まず、ファンタジー世界を見事に映像化したところが素晴らしいのです。

 実はこの『ダンジョンズ&ドラゴンズ』という題材、実写化されるのはこれが初めてではありません。

 本作以、2001年から三作ほど実写映画版『ダンジョン&ドラゴン』が製作されました。

 これはスピルバーグ監督の『ジュラシックパーク』以来、CG技術の急激な進歩で『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の世界観の映像化が可能になったから‥‥‥と推測しますが、その三作は、本作に比して大作と呼べる程の予算のかかった映画でないこともあり、記憶に残る程ヒットしたとは言い難いようでした。

 ですが最初の『ダンジョンズ&ドラゴンズ』製作から20年以上が経過し、CG技術は劇的に進歩し、出来る表現とコストパフォーマンスは大いに向上しました。

 それらの技術とノウハウを大予算を用いることで、ドラゴン等の架空のモンスターや、氷に覆われた厳冬の世界や、緑豊かな世界、溶岩が照らすダンジョンなどなどが非レベルな精度で映像化され、大変素晴らしいものとなっているのです。

 これは単にCG技術を用いただけでなく、アイスランドでロケし、そこの雄大な自然の映像を本編に組み込んだ事も大いに寄与していると思います。

 

 

 

 

 もちろんセクシーパラディンをはじめとしたキャスト陣の熱演も素晴らしいのです。

 なにしろファンタジー世界の住人役ですので、みなその社会で生まれ育った人間を演じなければなりませんし、激しいアクションも多々あります。

 特に肉弾戦担当の〈戦士〉ホルガ演じるミッシェル・ロドリゲスと、〈聖騎士〉ゼンク演じるレゲ=ジャン・ペイジの殺陣シーンは、他の殺陣メインのアクション映画に引けをとらないクオリティで見ごたえ充分なのです。

 それは殺陣振り付けのセンスや、ファンタジー世界が舞台ゆえのアイディアを巧みに織り込んだアクションを考え、映像化したところも素晴らしかったと言えるでしょう。

 また、どこまで脚本通りでどこからアドリブか分からないキャスト陣のテンポの良いコメディパートも、俳優陣の巧みな演技力が存分に発揮されて素晴らしいのです。

 

 

 

 そして本作が受けた最大の理由は、巧みなユーモアを交えながら、人生の敗北者達が一念発起し、娘の信頼を取り戻すと同時に、巨大な陰謀に立ち向かうことになる物語なのだと思います。

 なにしろ本作の主人公は〈勇者〉だの〈冒険者〉だの〈戦士〉だのではない〈吟遊詩人〉なのです。

 主人公たるエドガンのスキルは、歌と悪だくみと達者な弁舌と娘への愛だけなのです。

 そんな彼が、正義の秘密組織ハーパーに一度は属するも、貧しい暮らしに嫌気がさしたところで、妻も殺され、窃盗団に身をやつした結果、娘まで失いかけたところから、必死に這い上がろうとするところが良いのです。

 その状況は、エドガン一味の他のキャラも変わりありません。

 女戦士のホルガは他種族の男に惚れたことで、自分の属する部族を追放になった上に、その男(まさかのキャスティング)とも別れてしまったお辛い境遇ですし、他の仲間も似たり寄ったりです。

 そんなエドガンの言うところの〈負け犬のチャンピオン〉が、往生際悪く、無様に見れんたらしく、でも決して諦めず、失敗を繰り返しても、決して歩みを止めず、他の者達ではできない奇想天外な方法で困難に立ち向かう姿が心に響くのです。

 それが、四度目の映画化で本作がウケた理由なのでは無いでしょうか?

 

 

 

 ま、ちょっと予算をかけ過ぎちゃって、好評ではあるけど続編の製作は厳しいみたいですけどね‥‥‥。

 

 

 

 さてここでいつものトリビア。

 作中でまったくの運が悪くてエドガン達の目論見が失敗するシーンは、TRPGで『ダンジョンズ&ドラゴンズ』をプレイした際の、サイコロの目が悪かった場合の再現‥‥‥らしいよ。

 

 エドガンは〈吟遊詩人〉らしく、ウクレレみたいな小さな弦楽器を持ち歩き、時に弾き語りし、時にそれでモンスターやら敵をぶん殴りますが、この楽器、ちゃんと魔法で強化されている(という設定)ので敵を殴ってもぶっ壊れないんだって。

 

 

 ‥‥‥ってなわけで『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』もし未見でしたらオススメですぜ!