映画観賞……それは時に○○億円もの制作費をかけた作品を、だいたい2000円前後で楽しめるめっちゃコスパの良いエンタメ……。

 これは、当劇団きっての映画好きにして、殺陣と小道具美術担当の筆者が、コロナ禍からようやくかつての日常を取り戻しつつある現代社会いおいて、筆者の独断と偏見といい加減な知識と思い出を元に、徒然なるままに……徒然なるままにオススメの映画について書くコーナーである。

 

 

 

 

 

 

 

▼『映画を語れてと言われても』

 

 

 

 

 TODAY'S
 
第一四一回『ありがとうスピルバーグ……“レディ・プレイヤー1”』





 タグ:ゲーム 仮想現実 文化 アニメ 特撮 映画 スピルバーグ ガンダム 日本 80年代カルチャー VR ジュブナイル ボーイ・ミーツ・ガール

 

 

『レディ・プレイヤー1』

2018年公開

監督:スティーブン・スピルバーグ

原作:アーネスト・クライン

音楽:アラン・シルヴェストリ

出演:タイ・シェリダン オリヴィア・クック ベン・メンデルソーン T・J・ミラー サイモン・ペッグ マーク・ライランス 森崎ウィン ハナ・ジョン=カーメン

 

 

 

あらすじ

 時に21世紀の半ば……気候変動や環境汚染、食料不足に政治不信に経済不況などの様々な社会不安に嫌気がさした人類は、ジェームス・ハリデー(演:マーク・ライランス)とオグデン・モロー(演:サイモン・ペッグ)の二人が開発した画期的VR(仮想現実)世界〈オアシス〉に耽溺し、数々のゲームはもちろん、ビジネスや恋愛、友達探しなどなど、多くの人間が食事と睡眠とトイレ以外の全てを、〈オアシス〉で過ごす時代を迎えていた。

 

 そんな最中、〈オアシス〉創設者のジェームズ・ハリデーが病により死去する。

 己の死を悟ったハリデーは、〈オアシス〉内の何処かに隠した三つの鍵〈イースターエッグ〉を発見した者に、〈オアシス〉運営の全権利を含む56兆円もの遺産を相続させるという遺言を残していた。

 

 この遺言により、多くの人間がソロ、あるいは友人知人と組んだパーティでこの“宝探しゲーム(エッグハント)”に参加する一方、

〈オアシス〉独占を目論む大企業IOIもまた、大量の人員と予算を投じてゲームに参加していた。

 

 そしてゲーム開始から五年……。

 最初の鍵があると目されるレースゲームが発見されたものの、まだ鍵は一つとして発見されす、時だけが過ぎていた。

 

 

 

 〈パーシヴァル〉ことウェイド・ワッツ(演:タイ・シェリダン)は、幼くして両親と死別し、叔母と共に積み上げられたトレーラーハウスで貧しい生活を続けながらも“エッグハンター”の一人として〈オアシス〉で出会った親友エイチとダイトウ、ショウトウらと共に、鍵を求めレースゲームに挑戦し続けていた。

 そんな中、ウェイドはある日のレースで、有名なプレイヤーのアルテミス(演:オリヴィア・クック)を偶然助けたことが切っ掛けで、ついにレースゲームの攻略を達成し、ゲーム開始五年目にして初の“鍵”の獲得者となる。

 

 俄かに活気づく〈エッグハント〉界隈。

 ウェイドはアルテミス達と共に、鍵と一緒に得た次の鍵の在りかのヒントを元に、新たな鍵の獲得に向け行動する。

 しかし、その動きを〈オアシス〉独占を目論む大企業IOIとその社長ノーラン・ソレント(演:ベン・メンデルソーン)は黙って見てはいなかった。

 

 

 

 はたしてウェイド達の〈エッグハント〉の行方やいかに!!?

 

 

 




 

 

 

 

 さて今回は、以前語った『マトリックス』と同じ様に、いわゆる〈仮想現実〉を題材にしたエンターテイメントな物語を、ハリウッド映画業界の生ける伝説スピルバーグ監督が映像化した名作について語りたいと思います!

 

 

 スティーブン・スピルバーグ監督については本コーナーの『ジョーズ』『インディ・ジョーンズ:魔宮の伝説』『プライベートライアン』回をお読みいただくとして……。

 

 1970年代から『激突』『ET』『ジョーズ』『インディ・ジョーンズ』シリーズに『ジュラシックパーク』に『シンドラーのリスト』『プライベート・ライアン』『マイノリティ・リポート』『宇宙戦争』などなど……と、2020年代の現在に至るまでヒット作をかっ飛ばし続けてきた生ける伝説のような監督です。

 

 そんな同監督は、近年では実話を元にした作品や、過去の名作のリメイクなど、メッセージ性や芸術性、社会性を重視した作品を多くとってきた(ような気がする)のですが、2018年に久しぶりにエンタメ性とアクション特盛で挑んだ作品が本作なのであります。

 

 

 

 原作はアーネスト・クラインという人の同名小説です。

 スターウォーズファンの末期ガンの親友の為に、公開直前の『スターウォーズ:ファントムメナス』をなんとか見せよう! という内容の映画『ファンボーイズ』で脚本デビューし、その後に執筆したのが本作の原作小説です。

 筆者は原作小説も『ファンボーイズ』も見ましたが、まぁともかくとんでもないレベルで映画アニメマンガ音楽ゲームのオタクな方のようです。

 後述する理由で良く出版できたな!? という内容の原作なのですが……映画版たる本作では、映像で映えさせる為に原作から大胆なアレンジがなされております。

 原作モノの映画化でのそういうアレンジは、結構な警戒警報事案なのですが、本作の場合は心配ご無用。

 なぜなら本作の脚本にも、アーネスト・クライン本人が参加しているからです。

 

 

 

 音楽はアラン・シルヴェストリ!

 あの『バックトゥザフューチャー』の音楽を手がけたお方!

 本作ではあるシチュエーションにより、その経験がちょっとだけそのままお出しされるシーンがあります。

 その他『プレデター』や『アベンジャーズ:エンドゲーム』の音楽を担当したハリウッド映画音楽業界の生ける伝説みたいなお方の一人です。

 

 

 

 

 

 出演は、主人公の〈パーシヴァル〉ことウェイド・ワッツ役にタイ・シェリダン。

 後に実写『X‐MEN』シリーズでサイクロップスを演じることになる若手俳優です。

 『ゾンビーワールドへようこそ』というゾンビコメディ映画の秀作でブレイクし、本作の主演へと繋がったと思われます。

 なんといいますか、すごくぼんやりしたお顔の人で、決してイケメンではないのですが、とても善良そう且つオタクっぽいお顔の俳優さんです。

 

 

 

 そしてその〈パーシヴァル〉の鍵獲得を汚い手で妨害してくる大企業IOIの社長ノーラン・ソレント役にベン・メンデルソーン。

 もうビジュアルから芝居から悪役を……それも微妙にズルくて狭量な悪党を演じる為に生まれてきたような悪役俳優界の二大イケオジが一人です(もう一人はエイダン・ギレン)!

 本作以外でも『ダークナイト・ライジズ』『スターウォーズ・ローグワン』『フッド・ザ・ビギニング』で悪役を見事に演じております。

 筆者イチオシの悪役俳優なのです。れ

 そんな彼が『キャプテン・マーベル』などで善玉を演じると、これまた素晴らしいんですけどね。

 本作では金儲けの為に、〈オアシス〉内に大量の広告を強制投影させようと目論む社長を、絶妙な愛嬌とドジっ子っぷりを交えて魅力的に演じております。

 本作クライマックスで彼が見せる無言の表情芝居は圧巻です。

 

 

 

 さらに〈オアシス〉を開発したジェームズ・ハリデー役にマーク・ライランス。

 おじいちゃん俳優としてスピルバーグ監督の近年のお気に入り俳優らしく、本作の他に同監督作でトム・ハンクスと共演した実話ベースの冷戦スパイ映画『ブリッジ・オブ・スパイ』の出演で数々の賞を獲得し、さらにスピルバーグ監督の『BFG:ビッグフレンドリージャイアント』でも主演しております。

 どこかチャーミングなお爺ちゃんを飄々と演じる俳優さんです。

 

 

 さらにジェームズ・ハリデーの相棒として〈オアシ〉開発に携わったオグデン・モロー役にサイモン・ペッグ。

 本コーナーで紹介した『ショーン・オブ・ザ・デッド』の主役ショーンの他、世間では『ミッションインポッシブル』シリーズのムードメーカー、ベンジー役で有名かもしれません。

 業界屈指のオタク俳優としても有名なお方で、本作にピッタリなキャスティングです。

 

 

 その他、後に日本のドラマ映画業界で活躍する森崎ウィンや、コメディアンのTJミラー、後にMCU作品『アントマン&ワスプ』でヴィランのゴーストを演じるハナ・ジョン=カーメンなど、本作の物語を映像化するために、実に適材適所のキャスティングが成されています。

 

 



 

 

 そんなスタッフ・キャストでお送りした本作は、例によって大好評大ヒットとなりました。

 その理由はなんと言っても本作に登場する数々のポップカルチャー(オタク文化ともいふ)作品の数々です!

 

 これは原作段階でそうなのですが、作中のVR空間〈オアシス〉の開発者ジェームズ・ハリデーが、80年代を中心としたポップカルチャーの大ファンという設定であり、そんな彼が用意した遺産相続ゲームである〈エッグハント〉には、クリエイターたるジェームスの趣味が大いに反映されており、ゲームに参加した大量の〈オアシス〉ユーザーがゲームクリアの為、その80年代ポップカルチャーを研究した結果、多くの人間がドハマりし、作中では人々の間に80年代ポップカルチャーの一大ブームが押し寄せているという設定なのです。

 

 本作は最先端のVFX技術を用い映像化されたVR技術を用いた仮想現実と、50年弱前のポップカルチャーとが混然一体に融合した作品なのです。

 

 その80年代ポップカルチャーが具体的に何か? といえば……。

 『バックトゥザフューチャー』『ゴーストバスターズ』『ナイトライダー』『ジュラシックパーク』『キングコング』『バットマン』『AKIRA』『スターウォーズ』『デューン:砂の惑星』『カウボーイビバップ』『宇宙戦争』『13日の金曜日』『スーパーマン』『ロボコップ』『ターミネーター』『エイリアン』『アイアンジャイアント』『チャイルドプレイ』『ストリートファイターⅡ』『ゴジラ』『ケロケロケロッピ』『ハローキティ』『ロボコップ』『バカルーバンザイ』『シャイニング』そして『ガンダム』などなど‥‥‥‥‥‥のアニメと映画、そしてゲームと音楽類のことです。

 

 これらのキャラやメカやアイテムや場所や音楽が、VR世界が舞台であることを活かし、VFX技術を駆使してあらゆる形と口実で現れるのが本作の見どころなのです。

 

 ごくごく僅かなりとも80年代を駆け抜けた筆者をはじめ、同年代を生きた人間にはたまらんのです!

 

 ここで筆者をはじめ、日本人の観客の多くが嬉しかったであろうことは、前述したコンテンツの中に多くの日本発の作品が含まれてることです。

 前述したコンテンツの発祥国に対する割合の高さに、同じ日本人でありながら改めてビックリです。

 しかも、ただ多く出てくるだけではなく大活躍するのです。

 冒頭でヒロインが駆る深紅のバイクは、日本の大友克洋原作・監督作『AKIRA』で主人公が乗り回すバイクですし、最終決戦では2020年代の今も新作が作られ続けるあのコンテンツ同士の大激突が見れるのです。

 本作を知ってる人には常識といいますか、そのシーンで主人公チームの一人ダイトウを演じる森崎ウィンが、撮影時に自分で考えて言うことになった『俺は○○〇〇で行く!』といセリフは、公開当時や地上波放送時はちょっとしたブームになった程……。

 はたして日本を代表するコンテンツの何と何がぶつかったのか? 本作未見の方はどうかその目でご確認下さい。

 

 

 ……と、本作の魅力は間違いなく、大量極まるオタク文化コンテンツの大量投入なのですが、ただそれだけで名作には足り得ません。

 

 

 本作を名作にしたのはキャスト・スタッフ陣の奮闘もさることながら、やはりスピルバーグ監督の力がデカいと思うのです。

 

 まず前述した大量のコンテンツの映像の使用許可をとれたのは、スピルバーグ監督の実績とネームバリューあってのことですし、そもそもスピルバーグ監督作品もいくらか混じっています。

 スピルバーグ監督でなければそもそも映画化できなかったのです。

 

 そしてスピルバーグ監督でなければ不可能なスピルバーグ監督ならではのセンスと演出力。

 そしてそれをもって、原作の物語ポテンシャルを引き出したことです。

 

 スピルバーグ監督ならではのセンスと演出力とは、以前にも語ったことがありますが、シーンとシーンの間に挟まる長めのワンカットの中で、劇的に変化する状況や、新たに提供される情報などです。

 そしてスピルバーグ監督ならではの小学生が考えたようなユーモアを、全力映像化しているところです。

 おっかないのは、それらのセンスと演出力が監督デビューから50年弱経過した今でも冴えわたりまくっていることです!

 しかも本作では、100%VFX技術で映像化された〈オアシス〉と、生身のウェイド達が生きる現実世界での物語が縦横無尽に行きかう内容なのです。

 スピルバーグ監督には是非とも、また今作のようなエンタメ盛り盛りのお祭り映画を撮って欲しいものですね!

 

 

 




 

 

 

 

 さてここでいつものトリビア!

 

 本作ではある事情でスティーブン・キング原作のスタンリー・キューブリック監督映画『シャイニング』の舞台が再現されるシーンがあるのですが、原作ではそのシーンに該当するのはリドリー・スコット監督作『ブレードランナー』でした。

 本作の公開時期が『ブレードランナー』の数十年ぶりの続編『ブレードランナー2049』と被っていたから変更されたと聞きますが、筆者は単にスピルバーグ監督が『シャイニング』大好きだったからだと思います。

 

 

 またラストバトルで激突する、日本を代表するキャラ○○〇VS○○〇〇のシーンのうち、○○○○の方は円谷プロダクションが生み出した特撮ヒーロー『ウルトラマン』でした。

 ですがウルトラマンの権利が本作製作時に揉めてて、使うことができなかったんですって。

 

 

 それから本作冒頭で、ジェームズ・ハリデーの訃報に涙する女子小学生を演じているのは、本コーナーでも紹介した『マリグナント』で主人公の少女時代を演じ、後に『ゴーストバスターズ:アフターライフ』で主人公フィービーを演じ、その続編の公開も控えている期待の若手女優マッケンナ・グレイス。

 

 

 本作はキャスト陣の撮影が終了した後、大量のVFX技術を用いた〈オアシス〉のシーンの製作に長い時間がかかった為、スピルバーグ監督はその時間を利用し『ペンタゴン・ペーパーズ』という映画を一本作っちゃった!

 

 

 

 ってなわけで『レディ・プレイヤー1』もし未見でしたらオススメですぜ!