映画観賞……それは時に○○億円もの制作費をかけた作品を、だいたい2000円前後で楽しめるめっちゃコスパの良いエンタメ……。

 これは、当劇団きっての映画好きにして、殺陣と小道具美術担当の筆者が、コロナ禍からようやくかつての日常を取り戻しつつある現代社会いおいて、筆者の独断と偏見といい加減な知識と思い出を元に、徒然なるままに……徒然なるままにオススメの映画について書くコーナーである。

 

 

 

 

 

 

 

▼『映画を語れてと言われても』

 

 

 

 

 TODAY'S
 
第一三八回『ウチらの推しが死んだ件!!“キサラギ”』




 タグ:アイドル コメディ ミステリー 殺人事件 ファン ストーカー オフ会 推理 密室劇 ライブ オタ芸

 

『キサラギ』

2007年公開

監督:佐藤祐市

脚本:古沢良太

出演:小栗旬 ユースケ・サンタマリア 小出恵介 塚地武雅 香川照之 他

 

 

 

あらすじ

 2006年4月、とあるマイナーアイドルの“キサラギ”こと如月ミキ(演:酒井香奈子)が自宅に起きた火災により焼死した。

 焼死の直前、彼女のマネージャーの留守番電話に、遺言と思しきメッセージが残されていたことから、その死は自殺であるとみなされた。

 

 それから一年後、キサラギの一周忌を機に、彼女の熱狂的なファンの公務員にして、彼女の唯一のファンサイト運営者であるハンドルネーム・家元(演:小栗旬)の呼びかけにより、キサラギファン五人の追悼オフ会が、とあるペントハウスにて行われることとなった。

 参加したのは……。

 

 お調子者のチャラ男の雑貨屋店員スネーク(演:小出恵介)

 おそろしく生真面目で細かいことにもうるさいオダ・ユージ(演:ユースケ・サンタマリア)

 福島県から6時間かけてオフ会に参加した農家の安男(演:塚地武雅)

 ネット上の発言から女性かと思われていたが、会って見れば中年男性だったいちご娘(演:香川照之)

 

 彼ら初めて顔を合わせた五人は、楽しくキサラギの思い話に華を咲かせ、彼女を偲ぶはずであった。

 だがしかし、このオフ会には隠された目的があった。

 

 『キサラギの死は自殺ではなく、何者かによる“他殺”であり、その犯人が、彼女のファンサイトで交流し合いオフ会に参加したこの五人の中にいる』

 

 このオフ会は、参加者にいるであろうキサラギ殺人犯を焙り出す為に催された会だったのだ!

 

 オフ会の最中、キサラギの死について五人各々が各々のポジションであるが故に持つ情報を持ち寄ることで、徐々に明かされる新事実の数々と迫る彼女の死の真相……。

 

 はたしてキサラギの死の真相とは、五人のキサラギファンの男たちに隠された秘密とは!!?

 

 

 

 

 

 さて今回は隠れた(?)名作ミステリー(?)邦画回です。

 監督は佐藤 祐市というお方。

 本作で数々の賞を受賞し、その後も数々の映画を世に送り出すお方です。

 数々のTVドラマにも携わっており、日本の映画ドラマ界を支えている監督の一人です。

 

 

 脚本は古沢良太。

 映画では『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズ、『探偵はBARにいる』シリーズや『コンフィデンスマンJP』シリーズ。

 TVドラマでは『リーガル・ハイ』や『デート?恋とはどんなものかしら?』などなどの脚本を執筆した日本映画ドラマ界の最前線で活躍し、数々の脚本賞を獲りまくってる脚本家の一人です。

 本作は彼が執筆した演劇戯を映画用にしたものです。

 本作の魅力は彼の脚本によるところが大なりと思います。

 



 

 出演は小栗旬にユースケ・サンタマリアに小出恵介に塚地武雅に香川照之、他の、豪華かつ個性豊かなキャスト!

 若干名もう新作でお姿を見ることができなそうな人もいますが、皆さん実績も実力も申し分ない日本俳優界を代表する方々であり、本作が面白いのは間違いなく出演者の熱演の賜物であります。

 なにしろ本作は終始オフ会会場であるペントハウスを舞台に進行する変則的密室劇にあたります。

 通常の映画であれば、物語の舞台を様々に変え、観客を飽きさせずに物語を進行させるものですが、本作では回想シーン以外ではず~っとペントハウス内で物語は進行するのです。

 密室劇といえば、殺人事件を題材とした作品をよく見ますが、それにしたって屋敷一つなどが舞台であり、物語がまるっと一室だけというのは稀です。

 

 これは本作が元は舞台演劇の戯曲であったからと思われますが、映画作りとしてロケ地移動が少なくてちょっと助かったかもしれませんね。

 

 そんな限られた空間の中で、右往左往しくんずほぐれつしながら男五人だけで物語を回してゆくのが本作なのです。

 正直、ここだけ聞けばあまり面白い……というか見たい映画とは思えずとも仕方ない気がします。

 ですが、本作はそんな一見ハンデとなりそうな条件を奇想天外かつ練りに寝られた脚本をもってして武器に変え、キャスト陣が各々が演じる個性豊かなキャラを熱演することで、見事な名作映画と化しているのです。

 




 

 

 そして本作が面白い作品となった最大の要因は、やはり本作の脚本にある気がします。

 ……といいますか、あらすじの段階で言えることですが……どうやってこんな話を思いついたのかサッパリ分かりません!

 なんで死んだアイドルのファンが集い、ワイワイガヤガヤその死の真相について侃々諤々の大論争する話で一本書こうと思ったのでしょう?

 ここだけ話を聞くと、どこに勝算を感じて産み出した作品なのかようわかりません。

 実際筆者は不覚にも、劇場公開時に本作を見逃し、後にレンタルで観賞し、映画館で見とけば良かったと後悔することになります。

 だって……本作のヒロインたるアイドルのキサラギはもう死んでるし、どう考えたって明るく終わる物語とは思えなかったのです。

 しかしながらいざ見てみると、本作はキャストも熱演と共にテンポよく明かされる新事実と新展開、そして最後に明かされる死の真相によって、当初の筆者の予想とは全く違った気分で本作を見終えることとなるのです!

 しかし、肝心のキサラギの死の真相をここで明かすのはあまりにも無粋というもの!

 ここを語れないとほぼ語れない作品ですが、ここで語るわけにはいきませぬ!

 本作の最後に明かされるキサラギの死の真相が気になる未見の方は、どうかその目でご確認下さい。

 その物語のオチもさることながら、エンドロールもまた実にユニークというかその手があったか! ってなる終わり方なんですよ!

 

 

 

 さてここでいつものトリビア!

 

 

(ここから先の文章には、本作のオチに関わる内容が含まれております。

 本作未見の方はなるべく本作観賞の上、以降の文章をお読みください)

 

 本作は原作となった戯曲版の他にも小説版や豪華声優陣によるオーディオドラマ版が存在し、そのオーディオドラマ版ではオチがまったく異なるんだそうで……オーディオドラマ版ではキサラギの死はまごうことなき〇〇事件であり、〇〇は○〇なんだそうな…………。

 映画版見見終わった後の印象とは180度印象が変わりそう‥‥‥。

 

 

 ってなわけで『キサラギ』もし未見でしたらオススメですぜ!!