映画観賞……それは時に○○億円もの制作費をかけた作品を、だいたい2000円前後で楽しめるめっちゃコスパの良いエンタメ……。

 これは、当劇団きっての映画好きにして、殺陣と小道具美術担当の筆者が、コロナ禍からようやくかつての日常を取り戻しつつある現代社会いおいて、筆者の独断と偏見といい加減な知識と思い出を元に、徒然なるままに……徒然なるままにオススメの映画について書くコーナーである。

 

 

 

 

 

 

 

▼『映画を語れてと言われても』

 

 

 

 

 TODAY'S
 
第一三五回『超巨大移動都市、大転倒!!“移動都市/モータル・エンジン”』




 タグ:SF ポストアポカリプス ボーイミーツガール ロストテクノロジー 冒険 飛行船 空中都市 戦争 捕食 資源 スチームパンク ピータージャクソン 大コケ ロンドン

 

『移動都市/モータル・エンジン』

2018年公開

監督:クリスチャン・リヴァース

原作:フィリップ・リーヴ『移動都市』

脚本:ピーター・ジャクソン他

製作:ピーター・ジャクソン他

出演:ヒューゴ・ウィーヴィング ヘラ・ヒルマー ロバート・シーハン スティーブン・ラング他

 

 

 

あらすじ

 21世紀の初頭……後に〈60分戦争〉と呼ばれる超兵器が用いられた最終戦争によって、地球上の文明は崩壊、以後地上は深刻な地殻変動が続く世界となった。

 それから数百年……生き残った人類は、巨大な〈移動都市〉を建造し、地殻変動から退避しつつ、他の〈移動都市〉を襲撃し“捕食”することで資源と労働者を確保し存続していた。

 

 だがその時代も最大の〈移動都市〉“ロンドン”が他の大半の〈移動都市〉を捕食し尽したことで、緩やかに終わりをつげようとしてた。

 

 そんなロンドンで暮らす青年トム(演:ロバート・シーハン)は、以前は飛行戦パイロットを目指していたが挫折し、今はロンドン博物館の見習い職員として、旧文明の遺物を蒐集し、〈60分戦争〉で何が起きたのかの解明に夢中になっていた。

 

 そんな日々の中、〈ロンドン〉は久々に他の〈移動都市〉を捕食し、資源と労働者としての人間を収容する。

 トムは偶然にも、その中に混じって潜入してた顔に傷を持つ少女ヘスター(演:ヘラ・ヒルマー)が、〈ロンドン〉の実質的リーダーとして他の〈移動都市〉捕食の指揮をとる人物であるヴァレンタイン(演:ヒューゴ・ウィーヴィング)を、隠し持っていたナイフで襲い掛かろうとしたところに出くわしてしまう。

 

 思わず彼女の凶行を阻止し、逃げだしたところを追いかけたトムは、追跡のはてに、何故かヴァレンタインによって廃棄口に突き落とされ、ヘスターと共に〈ロンドン〉から荒野に放り出されてしまう。

 移動し続ける〈ロンドン〉から置いてきぼりにされる二人。

 

 その成り行きから生き残るために不承不承行動を共にすることになる二人。

 その道中、ヘスターがなぜヴァレンタインを殺そうとしたのか語ったところによれば、ヘスターの母は、10数年前トムと同じ様に旧文明の遺物の研究をヴァレンタインと共に行っていたのだが、母が旧文明を滅ぼした超兵器に関する遺物を発見したところで母と対立し、ヴァレンタインはヘスターの母親を殺した仇であったのだ。

 その復讐の為に、ヘスターは〈ロンドン〉に獲物として襲われるであろう〈移動都市〉に潜んでいたのだという。

 

 もしもヴァレンタインの行動を放置すれば、〈ロンドン〉は再び旧文明を滅ぼした超兵器〈メデューサ〉を復活させ、世界に仇なす存在となってしまう。

 トムとヘスターは時にいがみ合いながらも、再び〈ロンドン〉に向かうべく旅を開始する。

 

 一方〈ロンドン〉のヴァレンタインは、ヘスターを無き者にすべく、ある刺客を送り込むのであった……。

 

 

 

 はたしてトムとヘスターの二人を待つ運命とは!?

 ヴァレンタインの野望を阻止することができるのであろうか!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて今回はポストアポカリプス世界の大アドベンチャー映画回です。

 ポストアポカリプスとは、本コーナーでも紹介した『マッドマックス:怒りのデスロード』や『リベリオン』や、『風の谷のナウシカ』や『メイズランナー』シリーズ……それから『猿の○○』シリーズや、ゾンビ映画の何割か……などのように、人類の文明が、戦争や天変地異やその他の大異変によって失われ、そこから生き残った人類の住まう世界を舞台にした作品のことです。

 人は何故かこういったポストアポカリプス作品が大好きで、何本もの同ジャンルの映画やマンガやアニメが撮られてきました。

 それは非常に想像力を刺激するジャンルだからなのかもしれません。

 本作はそういったポストアポカリプス作品の中でも、かなりユニークな世界観を、ド迫力の映像美で映画化したオススメの一本なのです!

 

 

 

 監督はクリスチャン・リヴァースという人。

 うん! 知らないお方です!

 それもそのはず、本作が監督デビューであり、それまではピーター・ジャクソン監督作の中核スタッフとして数々の作品に携わったお方だそうです。

 そのピーター・ジャクソン監督といえば『ロードオブザリング』

三部作に『ホビット』三部作、それと『キングコング』に、本コーナーでも紹介した『さまよう魂たち』を監督した名監督です。

 そのピーター・ジャクソン監督が、製作と脚本も担い、さらに彼率いる潤沢なスタッフのバックアップを受けて作られたのが本作なのです。

 ゆえにそのVFXをわんさか使った映像の迫力は折り紙付きなのです!

 

 

 原作はフィリップ・リーヴという人の『移動都市』というタイトルのSF小説です。

 日本で言うところのライトノベルに類する小説ジャンルなようで……。

 他の小説原作映画でいえば『ハリーポッター』『トワイライト』『ダレン・ジャン』『メイズランナー』『ハンガーゲーム』シリーズなどが同じ系譜に属すると思われます。

 つまりティーンの男女が出会っで大冒険するお話なのです

 ボーイミーツガールです。

 というわけで本作もトムとヘスターという若者が、このポストアポカリプス世界を舞台に大冒険します。

 

 つまり本作は、そのボーイミーツガール&ポストアポカリプス大冒険を、『ロードオブザリング』等を作ったスタッフで映像化したところが魅力なのです。

 

 

 出演は主人公のトム役にロバート・シーハン。

 筆者の知る限りでは他に『ジオ・ストーム』なんかに出演してる若手俳優さんです。

 本作ではピュアで正義感と勇気と機知をもった主人公を見事に演じております。

 ……他に知らないので語れることは以上です……。

 

 

 もう一人の主人公ヘスターを演じるのは、ヘラ・ヒルマーという(当時)新進気鋭のアイスランドの女優さん。

 本作ではさる事情で顔に大きな傷跡をもったヒロインを見事に演じております。

 ……筆者の知る限りでは情報は以上です。

 

 

 その他、旧文明を滅ぼした超兵器復活を目論むヴァレンタインにヒューゴ・ウィーヴィング。

 キアヌ・リーヴス主演の名作SF映画『マトリックス』で、悪役のエージェント・スミスを演じてブレイクし、その後『ロードオブザリング』シリーズや数々のヒット作に出演することになる名優の一人です。

 恐らく本作でもっとも有名な出演者は彼でしょう!!

 

 

 

 もう一人、ヒロインのヘスターを執拗に追いかけるシュライクというキャラを、ジェームス・キャメロン監督の大ヒット映画『アバター』で人気からのクォリッチ大佐を演じたスティーブン・ラング

が演じているのですが、VFX技術を用いて俳優の顔がまったく見えないキャラを演じている為、筆者は本作を見た時は彼が演じているとはまったく気づきませんでした。

 

 

 

 ……とまぁ本作は、スタッフはともかく、キャスティングについては正直華が無い作品であることは否めません。

 

 

 

 

 ですが前述したように、世界観とその映像は大迫力なのです!

 いったいどこまでが原作のイメージ通りなのかは分かりませんが……なにしろ『巨大な動く都市や』『天空の城』や『紅の飛行船』などなどが、ポストアポカリプス世界らしいあまりハイテクっぽくない歯車やクランクやら蒸気機関ぽい動力で動きまくるのです。

 冒頭の超巨大〈移動都市“ロンドン”〉の捕食の追いかけっこや中盤の空中都市、クライマックスでの旧文明を滅ぼした超兵器を巡る〈ロンドン〉と主人公チームの戦いは、ただVFXが凄いだけでなく、巨大なセットも大盤振る舞いで建造し、主人公たちが挑むアクションに、物理的に存在するセッでの撮影ならではのリアリティと迫力を演出しております。

 その映像の凄さは世の大作映画にまったく劣りません。

 と、同時にいわく言い難い既視感を覚えないこともありません。

 

 筆者と同じことを思った人が本作を見た人に少なからずいるようなのですが……特にエビデンスのないまったくの憶測なのですが……本作作った人達って〇ブリアニメの大ファンじゃね?

 動く城って『〇ウルの動く城』の実写っぽくて、気球でできた『空中都市』が出てきて、真っ赤な飛行船が暴れまわる本作の映像は、意図してか偶然か、実写化されたジ〇リ作品のようにも見えて興味深く、見る価値があると思うのです。

 ストーリーもなんだかんだでハラハラドキドキして、爽やかにハッピーエンドで終わりますしね!

 

 




 

 

 しかしながら……本作、公開した結果、世間での評価はかな~り残念なことになっております。

 どう大コケしたか? というと投じた制作予算から利益を出すどころか回収できなかったからです。

 ではその投じた予算は幾らかというと、なんと日本円にして190億円近い金額だそうです!

 うん! そりゃコケる……というか回収が難しいわ!! って感じです。

 筆者的には充分面白かった作品ですが、その予算を回収して利益を上げるには、世間で一大ブームにでもならないと達成できない気がします。

 本作にそこまでの吸引力があるか? ……というとゴニョニョ……。

 

 

 思えば本文章を書いている2023年は、大予算を投じた大作映画が、次々と製作費回収できないという意味で大コケした年でした。

 予算をかけすぎたことが足枷となって起きた事象な気がするのですが、本作はひょっとしたら、そういった事象の近年における先駆けなのかもしれませんと思ったり思わなかったり……。

 

 

 本作にハリウッドの有名スターでも出ていればという気もしますが、それでは予算を圧迫するだけでしょうし……やっぱちょっと予算かけすぎたのが大コケの原因じゃないですけねえ? という筆者の感想なのであります。

 ……とはいえ、今となってはかかった予算や大コケしたかどうかは、本作を見る我々観客には直接は関係無い話で、見て面白ければ楽しめば良いと思うんですけどね!

 

 

 

 

 

 さてここでいつものトリビア。

 トリビアっていうか本作見れば一目瞭然の描写なのですが……旧文明で祭り上げられていた神は……。

 



 

 あと『ダイハード』や『ゾンビランド』にも登場したアメリカの庶民のお菓子〈トゥインキー〉の衝撃の賞味期限が分かりますよ!

 

 

 

 

 ってなわけで『移動都市/モータル・エンジン』もし未見でしたらオススメですぜ!