映画観賞……それは〈中略〉……めっちゃコスパの良いエンタメ……。
これは……〈中略〉……好きな映画について、いい加減な知識と思い出を元に‥‥‥いい加減な知識と思い出を元に!! ‥‥‥筆者の徒然なるままに書くコーナーである。
▼『映画を語れてと言われても』
第一〇一回『荒野にジョーズは現れまいてwww‥‥‥“トレマーズ”』
タグ:モンスター アクション ホラー 荒野 田舎 銃 コメディ プレッパー パニック
『トレマーズ』
1990年公開
監督:ロン・アンダーウッド
出演:ケヴィン・ベーコン フレッド・ウォード マイケル・グロス 他
あらすじ
ネバダ州の片田舎の荒野の中に、ポツンとある小さな小さな町パーフェクションで、いい歳して便利屋で食いつないでいる青年バル(演:ケビン・ベーコン)とその相棒の中年アールは、将来性のまったくない暮らしに嫌気がさし、ついに町を出ることを決意し、自動車で隣町へと向かうが、その途中、知り合いの老人が送電線の鉄塔によじ登ったまま動ないでいるところを発見する。
酔っぱらって昇ったのだろうとは思うが見過ごすこともできずに、下ろそうとバルが鉄塔に登ると、その老人は鉄塔にしがみついたまま亡くなっていた。
仕方なく町まで戻り、運んだ遺体を町の医師に診てもらったところ、死因は炎天下で3~4日間も水分を摂らなかったことによる脱水が原因だという。
つまり老人は、数日間何故か鉄塔に登ったまま降りなかったことで死んだのだ。
その謎が解けぬまま、再び隣町への移動を開始するバルとアールであったが、今度はその道中で、知り合いの営む道沿いの牧場で、家畜が肉片となって全滅している光景を発見する。
何事かとその牧場の主を探したところ、その牧場主が頭部だけを地面から覗かせて絶命しているのを発見する。
何者かが老人と牧場主を殺したのだ考えたバルとアールは、大慌てで警察に通報すべく、電話のあるパーフェクションの町の雑貨屋まで戻るが、何故か電話は普通になっており、しかもそれまで乗っていた自動車に、巨大なヘビのような生物が絡まったまま引きちぎられ絶命しているのを発見する。
その巨大なヘビ状生物が、これまで人を殺してきたのだとしか考えられなかった。
バルとアール他の町の住民は、直接隣町に助けを呼ぶことを考えるが、何故か隣町に通じる道が、渓谷部分で土砂崩れにより通行不可能になっていたため、二頭の馬によってバルとアールがまたしても隣町へ救援を呼ぶための旅を開始する。
だがその彼らを、それまで人を襲い続けてきた生物は見逃してはいなかった‥‥‥。
はたしてその謎の生物の正体とは!? バルとアールと〈パーフェクション〉の住民の運命やいかに!!?
今回はモンスターホラー映画回!!
モンスターホラー映画とは、誤解を恐れずいえば、人を襲うでっかい動物や怪物が現れ、人間が大騒ぎする映画のことです。
例えば『ジョーズ』『ロストバケーション』『グリード』『スパイダーパニック』『プレデター』『エイリアン』『キングコング』『サラマンダー』『UMA』『アナコンダ』『クロール』などなど、挙げだしたら切りがありません。
つまり、世間はモンスターホラー映画大好きなのです。
本作はそんな世に数あるモンスターホラー映画の中でも、地中から襲ってくる人食い巨大怪物という、大変ユニークなアイディアと完成度で、ヒットはせずともカルトな人気作となり、何作もの続編が作られた傑作モンスターホラー映画なのです。
監督はロン・アンダーウッドというお方。
他にスマッシュヒットした『シティ・スリッカーズ』という映画の監督で有名ですが、他はTVドラマの監督がもっぱらで、他に監督した映画を筆者は知りません。
主役のバルと演じるのはケビン・ベーコン(当時32歳)!
世界を救ったヒーローとして宇宙でも有名(MCU脳)!
『13日の金曜日』の被害者役などで映画に出始め、青春ダンス映画『フットルース』の主演でブレイクし、1980年代から数々の映画に主演・出演してきた名優の一人です。
イケメンというには個性がり過ぎる顔立ちのお人で、あらゆるジャンルの映画に、善玉・悪玉・主演・脇役問わず出演して良い縁技を見せています。
本作以外での筆者のお気に入りは『アポロ13』で演じた宇宙飛行士ジャック・スワイガードと『Xメン:ファーストジェネレーション』のヴィランのセバスチャン・ショウ。
本作では、テンガロンハットの似合う気のいいあんちゃんを好演しております。
そのケビン・ベーコンの相棒のアールを演じるのは、フレッド・ウォード(当時48歳)。
筆者的には『ライトスタッフ』という映画で、アメリカで二番目に宇宙へ行った宇宙宙飛行士ガス・グリソムを演じたことで印象深い俳優です。
(つまりケビン・ベーコンとフレッド・ウォードは、同じ時期に活躍した宇宙飛行士を別々の映画で演じことに)
ケビン・ベーコンより人世代上の俳優さんで、作中で何故ケビン・ベーコン演じるバルと、フレッド・ウォード演じるアールがこの歳の差で便利屋バディを組むことになったのかは謎ですが、作中での丁々発止の掛け合いと意気の合い具合は、ルパンと次元かルパンと銭形警部のよう!
ちなみにフレッド・ウォードの演じるアールは、本作続編の『トレマーズ2』にも続投主演しております‥‥‥残念ながらケビン・ベーコンは出ませんでしたが。
で、その続編の『トレマーズ2』にてケビン・ベーコンに代わってアールと共に地中の怪物と戦うのが、本作でガンマニアのプレッパーとして登場するバートです。
〈プレッパー〉は“備える人・準備する人”という意味で、例えば第三次世界大戦に備えて、核シェルターをこさえて、食料などを大量に備蓄することに生きがいを感じる人達がアメリカには珍しくないのだそうです。
演じているのはマイケル・グロスという俳優さん。
背の高い口髭の似合うおじさんなのですが、彼は本作以後の『トレマーズ』シリーズ全作で主演・出演することとなります。
本作にでて一番得した俳優さんかもしれません。
つまり筆者が知っている有名と言える俳優はケビン・ベーコンくらいで、監督もあまりネームバリューがあるとは言えないお人でお送りする本作なのですが、それでも、本作は劇場公開時こそ大ヒットしたとは言えなかったものの、後のソフト版のレンタル等で好評価を受け、何作者続編が撮られることとなるのです。
それが何故かと言うならば!
‥‥‥それは多くの名作傑作はそうであるように、ナイスなアイディア、粋な脚本、キャストの好演、見事な映像化などなど‥‥‥全てのパラメータがハイレベルだったからです。
まず、地中から襲いかかる怪物というアイディアが素晴らしい!
海の怪物といえば『ジョーズ』などの巨大人食いサメですが、昨今はともかく、本作公開当時は海に“しか”ジョーズは現れず、その恐怖は、陸上で生活している限りは他人事でいられます。
しかし、それが陸でも現れる巨大サメ相当の怪物となると‥‥‥アカン、もう安心して生活できん‥‥‥と身近な恐怖に変わるわけです。
‥‥‥とはいえ、地中を進む巨大生物なぞ、ホホジロザメのように実在はしておらず、それを無策に登場させても荒唐無稽過ぎて怖くもなんともありません。
が、当然本作はその問題にも配慮しています。
本作に登場する〈陸のジョーズ〉とでも呼ぶべき怪物〈グラボイズ〉は、全長約10mの巨大なツチノコというかナメクジのようなフォルムをしており、体表に無数に生えた爪というかトゲというか太い毛のようなものを高速で動かすことで、土を掻いて地中を移動します。
恐ろしいのはその頭部で、巨大な猛禽類のクチバシのようになっており、その中に三本の巨大なヘビのような舌を有しており、その舌で地表の獲物をひっつかんでは巨大なクチバシで捕食するのです。
その引っ掴む習性から、作中で〈グラボイズ〉と命名されることになります。
本作タイトルの『トレマーズ』とは、複数の微振動という意味で怪物の名前ではなく、地下を掘り進むグラボイズのもたらす振動のことを指しています。
なんじゃそりゃ!? 宇宙生物か!? ‥‥‥と思ってしまうのもやむなしな異形極まる怪物ですが、まだ恐竜どころか脊椎動物もろくにいない時代の超古代生物が、たまたま現代に蘇ったという設定で乗り切っております。
なにしろ脊椎動物ではないので、化石も残らず、どんな生物が存在していたか今もってよく分かっていない時代の生物という設定なので無茶し放題なのです。
そして本作の妙は、このグラボイズという生物が、ただ巨大で獰猛地中から人を襲う恐ろしい生物というだけでなく、そこそこに弱点が設定されていることです。
なにしろ地中に住まう生物ですので、人間のように視覚に頼った位置情報の把握ができるはずもなく、グラボイズは地中に響いてくる音と振動によって獲物を発見し、襲い掛かるわけです。
このグラボイズの生態が主人公勢にすばやく見抜かれたことで、グラボイズVS人間の戦いは一方的にならず、一進一退の駆け引きとなり、盛り上がる展開となるのです。
本作はそのように、〈陸のジョーズ〉というアイディアを、設定面で説得力を与えてるわけですが‥‥‥。
さらにその設定を活かしきった脚本も素晴らしいのです。
まず舞台を荒野にポツンと存在する陸の孤島にすることで、自動的に『ジョーズ』の大海原に浮かぶ小舟のような逃げ場のないシチュエーションしています。
そこで主人公のバルとアールは、被害者に出くわしたことから少しずつグラボイズの存在に気づき、後半は町の住民総出で力をあわせてグラボイズに立ち向かってゆくところが熱いのです。
そしてそのグラボイズVS町民の熱い戦いを、アメリカの雄大な自然をバックに、あの手この手で見事に映像化したところもまた素晴らしいのです。
比較される『ジョーズ』は、海での撮影というだけで難易度が高く、またホホジロザメのアニマトロニクスの製作が当時の技術では難しいというハードルを超える必要がありました。
対する本作では、舞台は海ではなく陸ですし、アニマトロニクスも海中で使うわけでもなければ『ジョーズ』製作時より技術が進歩している為、グラボイズの映像化は『ジョーズ』に比べて容易に思えないこともありません。
ですが、本作は地中にいるグラボイズの脅威を表現する為に、ありとあらゆる術が講じられており、飽きることがありません。
グラボイズが地中を通った地面が、猛烈な勢いで盛り上がっていくところや、地面に引きずり込まれる自動車や、とある事情でコンニャクのようにグネグネと歪む建物の屋上の映像などは、海でジョーズを撮るのと結局どっちが楽だったのか分からなくなります。
なにしろ『グラボイズ』が地面に存在することを示す映は、全部地面に埋めなくてはならないのですからね!
その面倒な撮影を思いつき、実行し、見事に映像化した送り手の人達には拍手を送るしかありません。
そして筆者が本作でもっと気に入っている部分‥‥‥それは、本作の〈雰囲気〉です。
一応モンスター映画であり、人が襲われるホラー映画と言っても良い本作ですが、その作品としてのテイストは、舞台となる雄大な大自然にふさわしい‥‥‥どこかとっても‥‥‥なんだかとっても‥‥‥のんびりした作風なのです。
これがNYだのLAを舞台にしたらどうなっていたのか想像できませんが、本作はアメリカの超々ド田舎の人口10数人の限界集落が舞台ということもあり、またケビン・ベーコン演じるバルと相棒のアールのキャラもあって、なんといいますか、ホラーにしてはとっても緊張感や悲壮感が緩いのです。
物語が基本的に白昼で進行することや、劇伴がハーモニカを多用した舞台の荒野に相応しいカントリー調の劇伴なども、そののんびりした雰囲気を醸し出すことに寄与しているような気がします。
ついでに言えば、おおろしい生態のグラボイズですが、地面に出て見ると、その頭まるごとクチバシみたいな頭部は、なんだかちょっと愛嬌がある気がします。
つまり、本作はホラー映画が苦手な人手も(比較的)安心して見れる、取っつきやすい安心モンスターホラー映画なところが、魅力の一つなのではないでしょうか?
ここでいつものトリビア。
続編で主役となるプレッパーでガンマニアのバートの、恐ろしく息の合った奥さんを演じているリーバ・マッキンタイアの本業は、カントリー歌手。
ケビン・ベーコン主演の新TVシリーズが企画されパイロット版が作られたけど、出来が悪かったのか没になっちゃいましたそうな‥‥‥。
ってなわけで『トレマーズ』もし未見でしたらオススメですぜ!