映画観賞……それは〈中略〉……めっちゃコスパの良いエンタメ……。
 
 これは……〈中略〉……好きな映画について、いい加減な知識と思い出を元に‥‥‥いい加減な知識と思い出を元に!! ‥‥‥筆者の徒然なるままに書くコーナーである。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
▼『映画を語れてと言われても』
 
 
 
 
 
 

 TODAY'S
 
緊急特別企画!第一〇〇.五回『2020年代の心優しき仮面ライダー第一号! そして二号!“シン・仮面ライダー”』

 

 

 
 タグ:ヒーロー 昭和 オリジン 秘密結社 仮面ライダー 怪人 ヴィラン アクション 殺陣 庵野秀明 AI 幸福 特撮 CG バイク 
 
 
 
『シン・仮面ライダー』
 
2023年公開
 
監督:庵野秀明
 
原作:石ノ森章太郎
 
脚本:庵野秀明
 
アクション監督:田渕景也
 
音楽:岩崎琢
 
デザイン:前田真優 出渕裕 山下いくと
 
出演:池松壮亮 浜辺美波 柄本佑 森山未來 塚本晋也 手塚とおる 西野七瀬 松尾スズキ 他
 
 
 
 
 
 
 
 あらすじ
 
 おそらく現代の日本‥‥‥。
 
 いずこかの山中を、一台のバイクに乗り本郷猛(演:池松壮亮)は後ろに見知らぬ女性を乗せ、追跡してくる何者かから逃走していた。
 
 
 
 何者かに拉致され、肉体に何がしかの施術をされたところを、突然現れたその女性に導かれ、バイクに乗って脱走したのだ。
 
 
 
 しかし、クモの仮面を被った男と、警察に擬装した追手たちに先回りされ、バイクから落とされた本郷は一緒に逃げていた女性を捕縛されてしまう。
 
 だがその時、本郷は突如沸いた闘争本能と恐ろしき膂力のままに女性を捕縛していた追手達を撲殺すると、女性を救出、彼女に案内されたセーフハウスである山小屋へと隠れるのであった。
 
 
 
 
 
 そこで改めて素手で幾人もの人間を撲殺し、異形の姿となった自分の姿に恐怖し震える本郷。
 
 と、そこに現れた学生時代の恩師、緑川博士(塚本高史)により、本郷は自分の肉体がバッタの特性が移植された昆虫合成型オーグメンテーションプロジェクトの最高傑作バッタオーグとして新たな体にアップグレードされたことを聞かされる。
 
 これにより本郷は、大気中に存在する生体エネルギー〈プラーナ〉を吸収し、常人をはるかに超えるパワーを有する存在となったのだ。
 
 
 
 そして本郷を導いた女性にして緑川博士の娘、緑川ルリ子〈演:浜辺美波〉が、本郷を拉致しオーグに改造したショッカーから、本郷に洗脳処置を施す前に脱走させたのだ。
 
 
 
 それらはすべて、緑川博士が裏切り、本郷を拉致改造した秘密組織ショッカーに立ち向かう為であった。
 
 娘ルリ子と共に、人々の生活に仇成すショッカー打倒の為、改めて協力を求められる本郷。
 
 
 
 しかし本郷は、突然肉体を改造され、謎の組織との戦いに協力を求められ、その事態に戸惑う。
 
 
 
 だが悩む間もなく、セーフハウスに突然クモの仮面の男が現れ、緑川博士を絞殺すると、ルリ子を拉致していってしまう。
 
 今わの際に『ルリ子を頼む』と言われた本郷は、彼女を救出すべく、クモ男を追跡し改造された肉体の力を開放、恐るべきパワーでクモ男を撃滅しルリ子を救うのであった。
 
 
 
 
 
 娘を頼むという緑川博士の遺言に答える為に、戦わずにはいられなかった本郷であったが、自らの手で幾人もの命を奪ったことに苦悩する本郷。
 
 そんな彼に、助けられたルリ子は『優し過ぎる』と思わず呟くのであった。
 
 
 
 
 
 ショッカーとの戦いをなし崩し的に決心することになった本郷は、ルリ子と共に彼女の用意していた他のセーフハウスへと向かう。
 
 だがそこに先回りしていた二人組の男がいた。
 
 本郷達は日本政府から来たというその男達に、ショッカー撃滅の為に協力を要請される。
 
 互いの情報交換と条件交渉の末にルリ子はこれを受諾し、隠して本郷とルリ子は日本政府の非公式対ショッカー同盟となるのであった。
 
 
 
 かくしてはじまる本郷達とショッカーのオーグ達との戦いの日々‥‥‥
 
 はたして本郷達はこれに打ち勝ち、人々の暮らしの平穏を守ることができるのであろうか!!?
 
 
 
 

 

 

 
 
 
 
 さて今回は、筆者の自主映画回なんぞでお茶を濁したお詫び‥‥‥というわけでもありませんが、緊急特別編として、本コーナー初の、2023年4月現在に(おそらく)まだ劇場公開中である『シン・仮面ライダー』について語りたいと思います!
 
 え、何故いきなりそんなことをですって? だって筆者が好きだから! そして可及的速やかに語る必要性を感じたからです!
 
 本文章が投稿された時点で、本作公開から、二週間以上が経過し、続々新作映画が公開となり、本作を公開している時間帯と劇場数は減る方向に向かっている事でしょう。
 
 ですからどうか本文章を呼んだ次点で、本作を観賞するか否か迷い中の人がいたら、本作が劇場で観賞可能なうちに是非オススメしておきたいのです!
 
 
 
 
 
 
 
 ‥‥‥とはいえ、多くの映画がそうであるように、本作が100%オススメできるほど完璧な作品とは言い難いのもまた事実です。
 
 むしそ本文章を執筆している最中での、本作の筆者のアンテナ圏内での本作の評価は賛否両論! 横断歩道!
 
 客入りも大ヒットと言える程に絶好調とは言い難いようです。
 
 それは何故なのか?
 
 だって本作の監督はあの庵野秀明!
 
 一筋縄でいくわけがないのです…………。
 
 
 
 
 
 
 
 監督の庵野秀明のこれまでの功績は、本コーナーで紹介した『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズや『シン・ゴジラ』や『トップをねらえ!』を世に出したお方です。
 
 本作は『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』に続く『シン』実写映画の第三段になるわけですが、本作でも庵野監督は脚本も担当しております。
 
 毎度思う事ですが、庵野監督は脚本までかけて凄い!
 
 
 
 
 
 そして原作は『サイボーグ009』『人造人間キカイダー』等の数々の名作マンガを世に送り出した石ノ森章太郎。
 
 本作は彼が1971年に描いたマンガ版『仮面ライダー』からも多くの要素が注ぎこまれております。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 主演は池松壮亮。
 
 あのトム・クルーズ主演の大ヒット映画『ラスト・ザムライ』で真田広之の息子役で出演していや元子役のお人です。
 
 つまりめっちゃ役者歴の長いお人。
 
 
 
 ヒロインの緑川ルリ子を演じるのは浜辺美波。
 
 筆者はホラーミステリー映画『屍人荘の殺人』のヒロインで初めてしりましたが、デラキュートな女優さんですね。
 
 画面に映ってるだけで華やかになります。
 
 
 
 そしてヒロイン緑川ルリ子の兄にして、ショッカーの幹部の緑川イチロー役に森山未來。
 
 『世界の中心で愛を叫ぶ』での主演でブレイクしたお人で、本業はコンテンポラリーダンサー。
 
 本作ではその演技力のみならず、コンテンポラリーダンス技術を存分に披露しております。
 
 
 
 そしてその緑川イチローが送り出すバッタオーグ二号役に柄本佑。
 
 個性派俳優柄本明の息子さんで、2000年代より数え切れない程の映画ドラマに出演しております。
 
 筆者的には『アルキメデスの大戦』で主人公の相棒となる田中正二郎役が印象深いお方。
 
 
 
 その他、『シン・ゴジラ』にも出ていた塚本高史や、『シン・ゴジラ』『ガメラ3』の双方に出ていた手塚とおるや、元乃木坂46の西野七瀬、さらに数々の有名俳優が意外な形で出演しております。
 
 搭乗と同時に気づいて驚いたキャストもいれば、エンドロールを見るまで存在にまったく気づかなかったキャストなど、それは様々ですが……それにしても何やってんの長澤ま〇み……!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ‥‥‥ってな感じのスタッフキャストで送りされる本作なのですが、ぶっちゃけた話、見るまでは本作の期待値はかなり低めでした。
 
 
 
 理由は色々あります。
 
 
 
 一つは筆者が初代仮面ライダー世代ではなく、元からファンでもなければさして興味も魅力も感じていなかったことです。
 
 筆者が子供の頃に見れたのは『仮面ライダーBLACK』等なのですが、放送時間的に最後まで見ておりませんでした。
 
 そして時代は平成となり『仮面ライダー・クウガ』に始まる平成ライダーシリーズがはじまり、『仮面ライダー』シリーズは令和となった今の世でも毎年新作が続けられる程の超人気シリーズとなったわけです‥‥‥が、本作はあくまで1971年の初代『仮面ライダー』のリメイク作品です。
 
 初代『仮面ライダー』は、世界征服を企む悪の秘密結社ショッカーによって、改造人間にされた本郷猛(演:藤岡弘)が、脳改造の前に脱走し、ショッカーと戦う正義のヒーロー〈仮面ライダー〉として戦い続ける物語です。
 
 しかし、この初代『仮面ライダー』は、2020年代の今の目で見ると、映像と内容にいささかの古さは否めません。
 
 また、この初代『仮面ライダー』は2005年に『仮面ライダーTHE FIRST』として既にリメイクもされておりました。
 
 
 
 つまり本作『シン・仮面ライダー』は、すでに一度リメイクが試みられた最も古い『仮面ライダー』の二度目のリメイクなのです。
 
 『仮面ライダーTHE FIRST』はシナリオ面はともかく、映像面ではワイヤーアクションを多用した当時の最新技術のアクションが行われており、必然的に本作の難易度は上がってしまっていたのです。
 
 
 
 需要の問題も無視できません。
 
 2020年代に1971年の初代『仮面ライダー』のリメイクが求められているのか? と問われたならば‥‥‥『いや‥‥‥特には』と筆者ならば答えます。
 
 
 
 
 
 また、庵野監督が手がけた前二作の『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』が巨大怪獣と巨大ヒーローが大暴れするという、実に映画館の大画面で見ることに向いた題材であったのに対し、本作は等身大のヒーローが、元人間であった怪人(作中ではオーグ)と戦うという、前二作に比して大画面で見ることに利が薄い題材であることは否めません。
 
 内容的にも元人間と戦うということは、ある意味人殺しの物語であり、真面目に描いた場合、殺伐とした内容が想像されてしまいます。
 
 
 
 
 
 あとぶっちゃけたことを言えば、ビジュアル的な華やかさがありませんでいした。
 
 予告やポスターで発表されたシン・仮面ライダーの姿が、あまりにも旧作のまんま過ぎたこともありすが、仮面ライダーを演じる主演二人が、いわゆる『平成仮面ライダー』を演じてブレイクしたような高身長イケメンモデル系俳優からは程遠かった‥‥‥という事情も無視できないでしょう。
 
 
 
 
 
 筆者はこれらの観点から、『シン・仮面ライダー』には当初あまり期待していなかったのです。
 
 オリジナルのファンでもなく、大画面で映える題材でもなく、元人間と殺し合うというおっかない話で、ビジュアル的にも華やかさがあったわけではないのですから‥‥‥。
 
 
 
 それでも筆者が本作の観賞に至ったのは、庵野監督のファンであったからに他なりません。
 
 
 
 庵野監督ならなんとかしてくれるだろう! そして庵野監督ならばどう本作を描くのか?と興味がめっちゃわいたのです。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 しかしてその結果は‥‥‥‥‥‥。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 色々と気になる部分が無いとは言えないでしょう。
 
 決して満点の名作とは言えません。
 
 題材の違いを無視して無理矢理『シン・ゴジラ』と比べれば、個人的にも世間の総合評価的にも面白さや完成度は『シン・ゴジラ』に軍配が上がると言って問題無い気がします。
 
 
 
 まず筆者が許容できても、多くの観客の方々が引っかかるであろう幾つかの引っかかるポイントがあります。
 
 今回はまず先にそちらを語りたいと思います。
 
 
 
 ‥‥‥とはいっても、本作の気になるポイントは、前述した題材それ自体が有する特性が主であり、本編観賞後に気になった点はごくわずかです。
 
 
 
 
 
 一つはクライマックスのアクションシーンの問題です。
 
 一番盛り上がるべき最後の戦いで、何やってるか分からないレベルで映像的に暗すぎだったこと。
 
 そしていささかカタルシスに欠ける終わり方をしたことです。
 
 ラストバトルは地下に建設されたと思しきショッカーの施設が舞台なのですが、その中心部に至るまでのトンネル内バトルが、暗くてよく見えないことで少し話題になり、実際筆者も同感でした。
 
 これは公開後に調整されたという噂を聞きますが、確認できているわけではありません。
 
 また最後の言わばラスボスに相当する敵との戦いのオチも、カタルシス溢れる決着のつけ方だったとは言い難いでしょう。
 
 
 
 
 
 また脚本面では、庵野秀明監督作の『エヴァンゲリオン』っぽいショッカーの陰謀というか計画が搭乗し、庵野監督の引き出しはそれしかなんか~い! という意見が散見されております。
 
 エヴァとは別の作品なんだから良いじゃん‥‥‥って筆者は思うのですけどね!
 
 
 
 そして物語として、ルリ子と本郷に待ち受ける過酷極まりない運命もまた、本作が一筋縄では評価されないポイントであると言えるでしょう。
 
 
 
 
 
 
 
 それらの要素が重なった結果なのか、本作は筆者が本文章を執筆している2023年4月のはじめの段階で、ヒットとしてますが大ヒットとは言えない状況なようです。
 
 
 
 これらの気になった点を、筆者がまったくの個人的好き嫌いで減点法で採点したならば、本作100点満点中60点の出来‥‥‥と言ったところでしょうか‥‥‥あくまで減点法で個人的に採点した場合ですが‥‥‥。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ‥‥‥‥‥‥しかし、しかしです。
 
 前述したのはあくまで本作の、減点ポイントに値する部分に過ぎません。
 
 確かに本作を減点方式で採点したならば、確かに厳しい作品と言う人がいることも仕方ないかもしれませんが、加点方式で見れば、本作は実に稀有で素晴らしい作品だと思うのです!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 それはまず冒頭から恐ろしくテンポの良い編集で、見る者の理解力の方を引っ張り上げるかのように進行するかと思えば、ごく僅かな人物の仕草を短いカットで繋ぐことで、キャラとキャラの関係性や過去を恐ろしくスマートに表現するドラマ演出力であり‥‥‥。
 
 
 
 こだわりのアングルとカット割りで繰り出されるアクションシーンの数々‥‥‥特に、間違いなく初代仮面ライダーの繰り出す必殺技〈ライダーキック〉でありながら、現代の映像技術と庵野監督のセンスを駆使することで、超絶大迫力のクァ……ッコいいライダーキックであったりするのですが‥‥‥。
 
 

 

 

 
 
 それらは過去の庵野監督作品でも見受けられたことです。
 
 
 
 ならば本作ならではの魅力はと言いますと‥‥‥、それ庵野監督が捻り出した設定と脚本の素晴らしさなような気が筆者はします。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 設定で素晴らしいアイディアの一つめは、まず本作のキーとなる要素〈プラーナ〉についてです。
 
 〈プラーナ〉とはインド哲学やヨガ用語で言う〈気〉のことです。
 
 本作では仮面ライダーをはじめ、旧作でいう〈○○怪人〉や〈○○男〉に代わるオーグ〈オーグメント(拡張された人)〉と呼ばれる改造人間の一部は、〈プラーナ〉と呼ばれる、大気中に自然に存在する生命のエネルギーを吸収することで、人外のパワーと能力を得ている設定なのです。
 
 これは初代仮面ライダーが、変身ベルトの風車に風を受けることで発電し、変身している設定を現代ナイズした設定なのだと思われますが、この〈プラーナ〉は仮面ライダーの変身の為だけでなく、本作の物語の根幹にかかわる設定として、最後まで重要となってくるのです。
 
 
 
 
 
 
 
 そしてもう一つのナイスなアイディアは、仮面ライダーが倒すべき敵集団ショッカーの設定です。
 
 初代仮面ライダーでは、世界征服を企む悪の秘密結社という設定でしたが、2020年代の現代が舞台となる本作では、まったく別の設定となっております。
 
 とある大富豪が生み出したスーパーコンピュータ〈アイ〉が、『人類を幸福にして』と言い残して自殺した創造主の命令を実現しようとした結果誕生した秘密結社なのです。
 
 
 
 つまり本作のショッカーは、人の幸福をめざす秘密結社なのです!
 
 
 
 ここまで聞くと、何も問題無い話‥‥‥むしろ人類にとって有益な話のように聞こえますが、とんでもない問題が発生します。
 
 〈アイ〉は演算の末に、『人類の幸福』という指示を遂行するにあたり、人類全体を幸せにするのではなく、一部の絶望のどん底にいる人間を幸福にした方が、結果として人類全体の幸福の総量が増すと判断してしまったのです。
 
 そしてスーパーコンピュータ〈アイ〉は、絶望のどん底にいる人間を探し出しては、その能力をもってオーグにアップグレード(改造と言う)し支援するわけですが、そういった絶望の持ち主にとっての幸福が、無関係の人間にとって無害とは限らない‥‥‥という大問題が発生してしまったのです。
 
 
 
 ある者は人を殺すことに、またある者は人口を減らすことに、またまたある者は人を支配するこに幸福を感じ、ショッカーから支援されそれを実行しようとするのです。
 
 
 
 例えば『殺しこそが幸福』というのが本作で最初に仮面ライダーと戦うクモオーグにとっての幸福なわけですが、それで殺される人間の不幸などお構いなしに本作のショッカーは支援するのです。
 
 
 
 『ち、違う‥‥‥私そんなつもりじゃ』と、自殺しちゃった大富豪が後悔してももう遅し。
 
 
 
 
 
 
 
 ‥‥‥なんという捻くれた設定!!
 
 でもとても現代的と感じもします。
 
 今回の仮面ライダーが戦う相手は、人並み外れた絶望を味わった結果、人並みを超えた幸福を求めた人達なのです。
 
 ただ結果として、その人の幸福が実現すると、関係無い市井の人々が死ぬ等のどえらい迷惑がかかる為、仮面ライダーは戦わねばならないのです。
 
 
 
 
 
 この『幸せを求めし人』との戦いこそが、本作の物語を読み解くキーなような気がします。
 
 
 
 
 
 主人公の本郷猛は、警官だった父を亡くしたことが切っ掛けで絶望し、ショッカーに目をつけられた人間です。
 
 彼の場合は力を欲していると思われてバッタオーグ〈仮面ライダー〉となるわけですが、彼自身はまったく戦いを望んでおらず、毎戦ごとに戦わずに済む道を模索する程です。
 
 そんな彼を、知り合った人間達は口々に『優しい‥‥‥だがそれは弱さだ』と表します。
 
 確かに否応も無く戦う度に、本作の本郷猛はとても辛そうにします。
 
 とはいえ、改造され、人に仇成しているとはいえ、素手で元人間を倒す(殺す)立場になってみれば当然のことかもしれません。
 
 
 
『思ったよりよりも‥‥‥辛い』
 
 
 
 思わず本郷はそう吐露する程です。
 
 そんな本郷に対し、ヒロインのルリ子は『辛いという字に横棒一本足せば“幸せ”となる。
 
 辛いと幸せはごく近いところにあり、誰かの幸せを願うならば誰かが辛い思いをしなければならい』と、仮面ライダーとして生きる覚悟を問うのです。
 
 本作の脚本の素晴らしいところはこの『幸せ』と『辛い』の関係を物語全体を通して、ショッカーとの戦いを通して描いたところです。
 
 
 
 
 
 実にめんどくさいテーマであり、カタルシスとの食い合わせはとても悪そうです。
 
 それに、観客的に特に需要があるとも思えません。
 
 ですが、2020年代の今、『仮面ライダー』を語るにあたって、必要性があると庵野監督は感じたのではないでしょうか?
 
 幸福の内容は人の数だけありますが、己の幸福の為に他者に犠牲を強いるのは覇道です。
 
 また、万人が共通して信じる幸福とは何かも難しい問題です。
 
 
 
 ですが、その挑戦を行ったところが庵野監督ならではなのだと思うのです。
 
 
 
 
 
 はたして『優しさ』とは『弱さ』なのか?
 
 『幸せ』と『辛さ』は隣り合わせなのか?
 
 
 
 
 
 本作の物語はその答えを探す為に、本郷はあまりヒーロー映画では見ない動機と目的の為に、最終決戦へとなだれ込みます。
 
 それが前述したカタルシスの無いクライマックスの一因となっていることは否めません。
 
 そして本作のラストは、あまりにも多くのものが失われます。
 
 しかし、何も残らないわけではありません。
 
 
 
 本作はその、数々のデメリットを承知の上でそれでもなお描くことを選んだ庵野監督の描いた物語の結末に、筆者は他の映画では味わったことのない尊さと爽快さを感じた気がするのです。
 
 
 
 確かに本郷とルリ子に待ち受ける運命は、綺麗ごとでは済まされないハードなものですが、『辛い』状況の彼らの元に、新たなる仮面ライダーとなる男が現れるからです。
 
 その男の名は‥‥‥‥‥‥。
 
 
 
 
 
 そこから先、はどうか未見の方はその目でご確認下さい!
 
 
 
 本作は減点方式では確かに60点の作品と言えるかもしれません。
 
 ‥‥‥ですが、加点方式で採点するならば個人的にはプラス21000点は追加したくなるような名作なのです!
 
(※なお加点の内20000点は浜辺美波が可愛かったからとする!)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 さてここでいつものトリビア。
 
 序盤のクモオーグと戦う仮面ライダーのシーンで、クモオーグに全て躱されてしまう仮面ライダーのパンチやキックには、良く見ると衝撃波のエフェクトが足されています
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ってなわけで『シン・仮面ライダー』もし未見でしたら、劇場公開中に見るのがオススメですぜ!!