映画観賞……それは〈中略〉……めっちゃコスパの良いエンタメ……。

 無料配信作品ならばなおさら!

 これは……〈中略〉……自分達で撮った自主映像作品について、いい加減な知識と記憶を元に‥‥‥いい加減な知識と記憶を元に!! ‥‥‥筆者の徒然なるままに書くコーナーである。

 

 

 

 

▼『自主映画を語れてと言われても』

 

※今回は劇場公開映画ではなく、配信映像作品についての回です。

 よろしければ下記の作品を観賞の上で、本文にお進みください(もしくは本文読了後でもかまいません)。


 

 TODAY'S
 
 第一〇〇回特別企画『自主映画製作を止めるな!“座頭の死五六 -怒りの硝煙街道-”』





 タグ:自主映画 座頭市 時代劇 殺陣 チャンバラ 低予算 アクション 森 山 城跡 劇団 アフレコ

 

『座頭の死五六 -怒りの硝煙街道(ガンスモーキンロード)-』

2021年配信開始

製作・著作:劇団歴史新大陸

製作総指揮:後藤勝徳

監督:脚本:撮影:アクション監督:OP/ED作詞作曲:西脇ケンイチ

音響監督:宇野公章

音楽:高木則幸 金銀姫

二胡演奏:中村龍海

メイク:よみ sarasa

編集・VFX:豊島宏史

衣装・安川舞幸

運転他・眞野翼

ロケーション協力:上岡裕介

制作協力:ウエノマサキ‥‥‥他多数

 

 出演:後藤勝徳 豊島宏史 眞野翼 安川舞幸 中村龍海 菅野智志 宮岡俊介

 

 

 

あらすじ

 時に江戸時代末期……。

 当てどなく放浪の旅を続ける盲目の剣士の死五六(演:後藤勝徳)は、とある山中を移動中、猛烈な血の匂いを漂わせた浪人とすれ違った直後、その妹を名乗る娘(演:安川舞幸)が行き倒れていたところを助ける。

 その娘によれば、兄の腕は立つが浪人の侍・権藤源之助(演:眞野翼)が、病弱な自分の薬代を稼ぐ為に、彼が先祖より代々受け継いできた名刀と誉れ高い刀〈星斬りの太刀〉の所有権と大金とをかけ、天才剣士と名高い若侍・有坂義昌(演:豊島宏史)との決闘を、山中の人目から離れた場所ではじめようとしているのだという。

 兄の源之助はこれまでも数々の決闘を勝利し、相手を斬り殺してきた人間ではあるが、そんな勝利がいつまでも続くとは思えず、妹は今度こそ兄の決闘を止めにきたのだ。

 しかし病弱な妹は決闘の地まで行く体力は無く、行き倒れていたところを助けた死五六に、必死に兄の決闘を止めるよう懇願する。

 

 一方、すでに決闘の場所に到着していた源之助と有坂義昌は、互いに殺されても復讐しない、罪に問わないことを宣誓した決闘死御免状を用意したことを確認したうえで、大金と名刀〈星斬りの太刀〉を賭けた死闘を開始していた‥‥‥‥‥‥。

 

 はたしてその決闘の勝敗の行方は? 死五六と妹は間に合うことができるのであろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて今回は一〇〇回記念特別企画です!

 お忘れ……と言うか、そもそもご存知ない方もいらっしゃるかもしれませんが‥‥‥、本コーナーは筆者が属する劇団〈劇団歴史新大陸〉の公式ブログ内のワンコーナーでして、筆者は同劇団で出演俳優としての他、殺陣と小道具担当として数々の舞台公演に携わってきた人間なわけですが…‥‥‥。

 今回はそんな劇団活動の中で筆者が、なんと監督・脚本・撮影(と小道具)を担当し、劇団メンバーオールスターズで撮った自主映画について語らせて頂きたいと思います!

 自主映画といっても30分に満たない短編作品ですけどね!

 

 

 

 

 ‥‥‥とはいえ、本コーナーでダントツ一位でおもしろさが保証されておらず、実際評価もされていない今回の作品を、監督脚本した筆者が、自ら語ったところで自画自賛と思われても仕方がないところ。

 実際、この場を借りて、今回の作品を読者の方々に宣伝して、是非見てもらいたいという目論見も少なからず‥‥‥いえ、大いにたくさんめっちゃあります!

 

 ですが同時に、本文章は自主映画を撮るということがどういうことなのか? その体験記として若干の資料的価値があるかもしれません‥‥‥。

 なにしろ今は、全人類総動画投稿者時代です。

 スマホの性能向上や便利アプリの普及によって、本作レベルの動画を撮る難易度も、本作製作時より各段に下がっているかもしれません。

 将来、なにかしらの自主映画、映像作品、動画編集を行う予定がある人‥‥‥。

 今は撮る予定が無くとも、その可能性がある人達へ、本文がなにがしかの一助になれば幸いだったりなんかしちゃったりするのです‥‥‥。

 

 

 

 

 ‥‥‥毎週丸二年にもわたって100回も映画についての徒然を書いてきたのですから、一回くらいこんな回があったって良いのではないでしょうか?

 ……ね? ……ね?

 

 

 

 というわけで、今一度こちらの動画をご覧いただけると幸いなのです。

https://www.youtube.com/watch?v=CBGmBRLOV4E

 

 

 

 そもそもなんで“劇団”が自主映像作品を撮ったのか? というと、それは劇団とその所属俳優のプロモーションの為でした。

 舞台演劇公演は劇場で見ることを前提に作られるものであり、たとえ後に録画映像で見ても、その真の面白さを伝えることはできません。

(まさか映像配信前提の舞台公演が、珍しくないご時世が訪れることになるとは、当時は露程も思いませんでしたが‥‥‥)

 しかし舞台公演は、当然のことながらいつでもどこでも好きな時にお客様方に見てもらうことは不可能です。

 ‥‥‥故に、いつでも好きな時に見てもらえる劇団プロモ用映像作品を、舞台公演の合間に作ろう! という話になったわけです。

 そして過去に何作かの自主映像作品を撮った筆者の企画が採用され、無事製作開始となったのです。

 

 

 

 撮る作品のジャンルは時代劇!

 だってウチらの劇団は時代劇専門劇団ですから!

 これまで当劇団は、新鮮組や信長や決闘高田馬場などなどの演目をこなしてきました。

 そして今回の映像作品で撮る時代劇の内容は、みんな大好き『座頭市』…………のバッタモ……オマージュ作品を、過去に存在した架空のTVドラマの一話‥‥‥という体裁で、殺陣をたっぷり盛り込んで作ることにしました。

 30分という言い訳にもなりますしね‥‥‥。

 実は脚本はその数年前に、筆者が当時の劇団メンバーの出演を前提に一度執筆済みだったので、サラッと用意はできました。

 そして舞台稽古と同じ様に、毎週のリハと言う名の稽古を重ね、プレヴィズ(※簡易映像による動画コンテのようなもの)までスマホで撮影して作り、衣装と小道具を用意し、撮影可能なロケ地を方々探し回り、2018年の4月、ついに撮影ははじまるのです。

 

 

 

 ちなみに4月に撮影としたのは、公演の合間だったという理由もありますが、冬よりも日照時間が長くなり、その分だけ屋外撮影での撮影可能時間がより長く確保できることと、真夏に撮影するよりは気温的にスタッフキャストに優しいと判断したからです。

 梅雨になる前に撮りたかったですしね。

 

 

 主なロケ地は、埼玉県にある戦国時代の野城の跡地〈杉山城跡〉。

 いわゆる大阪城などの城ではなく、戦国の世に戦闘に用いる為に生み出された簡易要塞としての城の跡でして、平野の住宅街の中にボンとそびえ立つ小高い丘の上に存在する史跡です。

 言ってみればそこは、うっそうとした木々が生えた山なのですが、攻め込んできた敵軍を阻む為の堀の跡が、上下左右に曲がりくねった山道と共にそこら中にあり、普通の森やら山では見ることの出来ないロケ地となっております。

 つまり一ヵ所で幾多のバリエーションの背景での撮影が可能ということです。

 元から山や森の中を舞台にして、場所代をかけずに撮る腹積もりでしたが、ここは理想的なロケ地と言えました。

 21世紀の日本で時代劇を撮ろうとして、ビルや電信柱などが映りこまず、なおかつ適度にコンビニやトイレなどに近いロケ地を探すのは、予算の限られた我々にとってはかなりの難問でして、劇団員の活動圏内でこのロケ地を発見し、協力してもらえたことはまさしく僥倖でした。

 

 

 

 ロケハンの末にここを見出した我々撮影班は、毎週末になると撮影機材もろもろを担ぎ、この野城跡の頂上にまず登り、そこを撮影基地として、撮影を敢行したわけです。

 

 

 撮影期間は、スタッフキャストのスケジュールの都合から、毎週末の土日を利用し、四週間分の8日間を予定、オープニングと回想シーンのみ二週目の週末に別ロケ地で撮った以外は、この杉山城に通って撮影しました。

 元から30分程の短編の予定でしたから、このスケジュールで充分と考えていたのです‥‥‥。

 

 

 ですが筆者達は思い知ることとなるのです。

 予定とは未定であり、思い描いたように撮影がつつがなく進むことなどありはしない‥‥‥ということを。

 

 

 

〈ここが大変だったよ自主映画撮影!〉

・その一『撮影初日、いきなり主役の履くゲタが割れる!』

 座頭市がそうであったように、本作でも主役の死五六にはゲタを履いてもらったのですが、撮影初日のアクションでも殺陣でもなんでもないシーンでゲタのつま先が割れ(縁起ワルゥッ)、その日は誤魔化してなんとか撮影し、翌日の撮影の為に小道具担当の筆者は徹夜でゲタを補修し、翌朝を迎えることとなりました。

 そして撮影二日目でやっぱり補修したゲタは割れ、筆者は次の週末の撮影までに、新品のゲタを今度こそ割れないよう補強する作業に費やしたのです。

(本編を見れば分かりますが、作中のゲタは使い込んで見えるよう汚し塗装をしているだけでなく、ちょっとした改造がしてあるため、新品のままでは使えなかったのです。)

 

 

・その二『二週間ぶりにロケ地に戻ると、茶色かった山が青々とした緑に……』

 撮影のスケジュールの都合上、撮影一周目に杉山城跡で二日間撮影し、次の週末は別ロケ地でOPと回想シーンの撮影をしてから、その次の週末に杉山城に戻って撮影をしよう‥‥‥と思っていたら、季節の変わり目に杉山城跡を覆う森の木々が一斉に芽吹き、先々週に撮影した時よりも明らかに青々としてしまっていたのです。

 これはもう何とかできる問題ではないので、編集時にフィルターを噛ませることで背景の色の違いを誤魔化すことにしましたが、本編を注意深く見れば、それぞれのカットがいつ撮影されたかが分かってしまうレベルで背景の森の木々や地面の草の色が違うことに‥‥‥。

 

 

 その三『殺陣撮影中に衣装の袴、盛大に破ける』

 時代劇に出てくる侍の多くは袴を履いており、本作では死五六以外の二人の決闘する侍が袴を履いているわけですが、袴というものは、森の中の凸凹の多い地面を走るのは大変向いてない履物なのです。

 簡単に言うと、裾を踏みやすい。

 時代劇では袴の裾は脚絆を履くなどして処理してるのですが、本作では二人の袴履きキャラの内、一人に脚絆を履かせているため、キャラ立ちの為にもう一人には脚絆は履かせず、いわゆる椿三十郎的ビジュアルにさせていた結果、袴の前半分が盛大に破けるという悲劇は起きたわけです。

 まぁ、その場で縫って対処するしかありませんでした。

 

 

 その四『出演者チーム、渋滞でロケ地到着が3時間遅れる』

 週末の午前9時から現地入りして撮影するはずが、自動車移動でロケ地に来るはずの出演者組みが、週末の渋滞にはまって待てど暮らせどロケ地に到着しないなんてこともありました。 

 幸い撮影日に余裕があったので撮り漏らしはせずにすみましたけど‥‥‥。

 

 その五『監督、カメラの予備バッテリーを無くす』

 錯綜した撮影の中で、交換したはずのカメラのバッテリーが森の仲で行方不明に‥‥‥安いモンでは無かったのに‥‥‥。

 

 

 その他、小道具のピストルが真っ二つに割れたり‥‥‥一部のロケ場所の地面が草刈り直後だったからなのか、撒きビシを撒かれたかのごとく尖った茎が出演者の足裏に刺さったり等々‥‥‥様々なトラブルが我々を襲ってきました。

 出演者の怪我や、天候不順などで撮影中止になったりしなかったのが奇跡のようです。

 

 

 

 ‥‥‥撮り終わってみれば、もっと出来たことや、次の機会があったら絶対繰り返さないと思うことは掃いて捨てるほどありますが、かくして撮影は完了し、製作はポストプロダクションへと移行します。

 

 

 

 

 自主映画では割と珍しいことだと思うのですが、本作はロケ地が住宅街のど真ん中であり、常になにかしらの騒音が鳴り響き、撮影時のセリフふくむ音素材は一切使用不可能だったので、本作は完全アフレコ作品となっっております。

 幸いには当劇団には優秀極まる劇団専属音効部がおりますので、録音スタジオを使ってのキャストのセリフふくむ全音のアフレコが、編集と同時進行で週一×4の一カ月かけて行われ、しかも本作は件の音効部により完全オリジナル劇伴となっております! この部分だけはそこいらの自主映画に負けていないはずです。

 ‥‥‥どっかで聞いたことがあるようなメロディかもしれませんけどね!

 で、本作は完成と相成ったわけです。

 

 前述の音効班はもちろん、ロケ地で協力して下さった方々や、撮影の助っ人に来てくれた方、メイク等で本作の完成に助力して下さった方々、そして筆者を信じて監督することを許してくれた劇団メンバーその他諸々の皆さまには、感謝しかありません。 

 

 

 

 

 

 それからはや5年が経ち、ネット配信された本作の再生数と評価は‥‥‥残念ながら芳しくはありません。

 ネームバリューも無ければ、何かの需要に答えてるわけでもなく、抜きんでてクオリティが劇的に高いわけでもないのですから、当然といえば当然だったかもしれません。

 ですがその一方で、本作は予算や製作規模の割には見ごたえのある作品なのではないかなぁ? ‥‥‥と今でも思わなくもありません。

 

 

 これまで見てきた数々の映画やらマンガアニメドラマ演劇等で得た感想や知識を活かし、自分なりに面白いと思ったモノを作ろうと挑戦してみたわけですが、やはり見るのと作るのは大違いです。

 たった30分の作品を作るだけでもヘトヘトなのに、90分の映画やワンクールのドラマを作る苦労を考えると、世の送り手の人達にはただただ頭が下がるばかりです。

 本作のような自主映画を撮るということはもちろん、何かしらの作品を作るということは、大変に充実した意義ある行いであるという感覚も抱いております。

 ようするに、めちゃ楽しかった!

 もし、自分でもなにか映像作品を撮ってみようという方がいらっしゃいましたら、オススメですぜ!

 

 

 

 

 

 ここでいつものトリビア。

 本作冒頭で流れるOP歌『誰が呼んだか座頭の死五六』(作詞作曲:筆者)のメロディは、ムーディ勝山の『右から左へ受け流す』の歌と『マジンガーZ』『海のトリトン』を混ぜてできている。

 

 本作ラストバトルで、折れて地面に落下した死五六の仕込み刀の刃は、筆者が切り出したプラ板に塗装して作ったブツ。

 

 本作ラストで、死五六が小石を使って刀を分解するのに使った道具は、百均で勝った足つぼマッサージ用の短い棒状のアイテム。

 

 

 

 ‥‥‥ってなわけで『座頭の死五六 -怒りの硝煙街道(ガンスモーキンロード)-』もし未見でしたら、何卒宜しくお願い致します!!!